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間章【獣と龍の戦い2】

 まず仕掛けたのはゼリルダ。


「さぁ!私の願いを叶えよ!龍の爆炎で敵を焼き焦がせ!!【火龍】のマナ!【ファフニール】!!」


 当然のように召喚魔法を発動。現れたのは加速能力に特化した緑色の火龍、ファフニールだ。


「【加速】のマナ!【ドラゴン・ブースト】!!」


 ファフニールは咆哮を上げ、翼のコブから炎を噴射。一気に加速してシェリーに襲いかかる。


「【水獣】を【武装召喚】、【ロムルス】」


 対するシェリーは武装召喚を展開。彼女の黄金の太刀が変形し槍の形へと姿を変える。


「武装召喚如きで私のファフニールを止められると思うなよ!?」


 ゼリルダの威嚇に対しても、シェリーは冷静だった。


「【幻】のマナ【水月鏡花】」


 ファフニールがシェリーの体を穿つ。しかし、その姿は溶けるようにして霧散し消える。



「【一角】に【突撃】のマナ。【明鏡止水】」



 ズンッ!


 そして、ファフニールの上から槍を持ったシェリーが出現。ファフニールの背中にその槍突き刺した。


 ファフニールは悲鳴をあげながらその加速のまま倒れ込み、ゼリルダはフィードバックに眉を顰める。


「ぐ……おのれ……!」


「まず、当たり前の様に召喚魔法から始める癖をやめなさい。いくら強力な召喚獣であろうと真っ向から攻めるだけではいくらでも対処は可能です」


 武装召喚1本でゼリルダの強力な召喚獣を捩じ伏せるシェリーを見てソウルは苦笑いする。


 それをそう易々とできるのはシェリーさんだけだ。


「上等……!ならばこれでどうだ!?【二重召喚】!現れよ!【地龍】のマナ!【ジャバウォック】!!」


 ねじ伏せられたファフニールを見てゼリルダは新たな魔法陣を展開。現れたのは赤く刺々しい鱗を持つ4足の龍。


「まさか!本当に召喚獣を2体同時に……!?」


 ソウルの隣でエヴァは驚きの声を漏らす。当然だ。シュタールに行くまではソウルだってそんなことが可能だなんて考えたこともなかったのだから。


 2体目の召喚獣を展開したゼリルダは高笑いしながらジャバウォックに指示を飛ばす。


「フハハハハ!2体の召喚獣相手ならば武装召喚だけでいなし切れまい!?このまま八つ裂きにしてくれる!!」


 一応俺達味方なんですけど、ゼリルダさん?


 悪役そのもののセリフを吐きながらゼリルダはジャバウォックをシェリーに差し向ける。


「えぇ。確かに2体の召喚獣の相手は骨が折れる。なので私も出しましょう」


「相手できないとは言わないんですね」


 シェリーの言葉にエヴァが苦笑いしている。でも、確かにシェリーならあの2体の召喚獣ぐらい赤子を撫でるようにいなしてしまいそうな気もしてくる。


 だが、多分あえて召喚獣を出してゼリルダに彼女の課題を叩きつける意図もあるんだろうと思った。


「来なさい。【風獣】、【フェンリル】」


 ジャバウォックに相対するのは巨大な白狼。シェリーの風の召喚獣。


「【強撃】のマナ!【雲煙飛動】!」


「ええい、ちょこざいな!」


 フェンリルの体が火の玉ような形へ変化し、ジャバウォックへと体当たり。


 ジャバウォックはフェンリルを叩きつけようと腕を振り下ろすがスルリと抜けるようにして回避。


 ズンッ!


 そのままジャバウォックの体を打ち上げた。


 だが、強力な鱗で身を包んだドラゴンだ。簡単にはダメージを与えられない。


 打ち上げられたジャバウォックは怯むこともなく反撃に転じる。


「【連撃】のマナ!【ドラゴン・レイン】!!」


 ジャバウォックの赤い棘の鱗が弾丸となってフェンリルへと降り注ぐ。


「【渦】のマナ、【風雲】」


 だがフェンリルは風の渦を生み出しジャバウォックの鱗を弾き返していく。


「んなぁ!?ジャバウォックの攻撃を防いでいるだとぉ!?なんて力なんだ!」


「違います。力は貴方に武がありますが、貴方の地属性では私の風属性と相性が悪い」


 シンセレスでは5歳の子どもでも知っている魔法の相性。


 ヴルガルド国は相性不利な相手でも突っ込んでくるような血気盛んな奴らがたくさんいた。


 ゼリルダもあまりそういった事を考えてはいないのだろう。


「ぬぬぬ……!おのれ卑怯な!」


「卑怯だろうが何だろうが。相手はどんな手を使ってでも貴方を殺しにくると考えなさい。戦いとは非情なのですから」


「当然だ!ならば私がお前の召喚獣を潰せばいい!」


 シェリーの足元で暴れていたファフニールがマナとなって霧散して消える。


「【火龍】を【武装召喚】!【竜槍・ファフニール】!!」


 ゼリルダの握る黒い槍の先がバカリと上下に開く。そこから赤い炎か放たれ風の渦を生み出すフェンリルを狙う。


「【盾】のマナ、【水鏡】」


 ゼリルダの炎の砲撃はシェリーの生み出した水の壁の前に散る。


「なななぁ!?これもまた相性かぁ!?ズルいぞ!何で私の苦手な属性ばっかり……」


 地団駄を踏みながら文句を零すゼリルダは、そこまで叫んでハッとしたような顔をした。


「そういう事です。私達召喚士にとって召喚魔法は切り札。一度展開すればもうその後は使えない」


 水の壁の向こうから、シェリーは風のように一気に距離を詰める。


 対するゼリルダは明らかに反応が遅れ、不格好な体勢のままシェリーを迎え撃つ。


「こ、この……!【球】のマナ、【ドラゴン・バレット】!」


 迫るシェリーに砲台となった槍で炎の砲弾を連打するが素早いシェリーには届かない。


 ギィィン!!


 そして一気にゼリルダの懐に飛び込んでアブソリュートを斬りあげて弾き飛ばす。


「え、ええい!ならば【風龍】のマナ……」


 ゼリルダは強靭なその脚力でその場を飛び退きマナを溜める。フェンリルと撃ち合っていたジャバウォックは消えゼリルダの元へ。



「現れよ!【バハムート】!!」



 そして、超強大な黒き龍王バハムートを召喚した。



「フハハハハ!バハムートならばいくら化け物じみたお前の力でも及ぶまい!さぁこの私を倒して見るがいい!!」



 ゼリルダは巨大なバハムートの肩に乗り、ふんぞり返ってシェリーを挑発する。


「【変更(チェンジ)】。現れなさい、【炎獣】【ヴァナラ】」


 対するシェリーは淡々と炎を纏いしゴリラの召喚獣を展開。


「ええい、また苦手な属性を……!だが、そんなものこのバハムートの前では通用せん!全て吹き飛ばしてくれる!【渦】のマナ!【ドラゴン・ツヴァン】!!」


 ゼリルダが魔法を発動。バハムートが翼を広げ辺りを吹き飛ばす風を巻き起こした。


「えぇ。確かに貴方のバハムートは力だけなら私のケリュネイアよりも強いかもしれません」


 地形を変えてしまいそうなほどの力を前にしてもシェリーは動じない。冷静に迫る風の渦に向けて意識を集中。


「【強撃】のマナ。【金剛不壊】!」


 ヴァナラの爪に炎が収束。それをバハムートの風撃へ振り下ろす。


 ザンッ!!


 振り下ろしたそこから風は引き裂かれ、割れるようにして後ろへと流れていく。


「ならばひれ伏せ!素直に負けを認め……」


「ですが、弱点がないわけでもありません。【雷獣】を【無双】、【二重召喚】【サンダーバード】」


 すると、シェリーは新たな魔法陣を展開。現れたのは雷の体を持った大きな鷹の召喚獣サンダーバード。


「【加速】のマナ、【電光石火】」


 シュパパパパァン!!


「んなぁ!?」


 バハムートの周囲をサンダーバードは飛び抜ける。


 稲妻のような速さを持つサンダーバードの姿がバハムートの巨大な身体に阻まれ正確な位置を見失ってしまう。


「く、クソ……!ならばとっととシェリーを吹き飛ばしてしまえば……」


 シュンッ


 ゼリルダの背後に響く、風を切る音。それを耳にしてゼリルダは察した。


 あ……、これはいかん奴だ。


「…………お、お手柔らかに頼むぞ?」


「問答無用」


 ゼリルダの慈悲を求める声も虚しくサンダーバードから放たれる無数の羽。そしてシェリーは無情にも魔法を発動させた。

 

「【分散】のマナ、【羽団扇楓】」


 バリバリバリィッ!!!!


「のわぁぁぁぁぁあ!?!?!?」


 雷が鳴り響く音とともに、ゼリルダの悲鳴が荒野に響き渡ることになるのだった。

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