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警戒2

 夜。オデットは中々寝付けなくて宿屋の中を歩いていた。


「はぁ……」


 明日から、ソウル兄と完全に別行動。少し前まではそれが当たり前だったのに、今はそれが心苦しい。


 でも、それこそ本当の意味で一緒にいるために今は戦わなければならないし、オデットの役目がこの戦況を変えうる可能性がある。


 いつまでも甘えてはいられない。ゼリルダだって頑張っている。同じ妹仲間としてここで頑張らなくてどうするのかと自分に言い聞かせる。


「…………ん?」


 そんなことを思って歩いていると、ふとバルコニーへと続くガラス戸が開いていることに気がついた。


 誰かいるんだろうか?


 何の気なしにバルコニーを覗いてみると、そこには髪を逆立てた赤い髪。見慣れた1人の人影があった。


「ライくん?」


 ライも眠れないのだろうか。だったら少し声をかけて話聞いてもらおう。


 そう思って声をかけようとした時。


「…………………………」


 ボソボソとライが何かを呟いている様な声が聞こえた。


 こんな夜中に1人で何をやっているんだろう。じっと目を凝らしてみると、ライの視線の先には小さな黒い影が見えた。


 丁度ボールぐらいの大きさ。けれどそこには何やら2つの目玉のような物が浮かんでいるのが見えた。


「……、ソウ……奴……とか……に……………………てき……。次……ェラル……」


 何……?何の話?


 ソウル兄の名前が出てるような気がするけど……。


「そ……り……。……く、こっ………………れって……ぜ」


 風もあってよく聞き取れない。誰かと話をしているようだけど、その声はオデットの耳には届かない。


 何故か嫌な胸騒ぎがして、気がついたらそっとガラス戸に手をかけていた。


「それ……、お……ソウル……いてい…………?」


「そう……。…う……は……せねぇ。必ず……るように……なる…………たからな」


 まだライはオデットに気がついていない。音を立てないように、そっとライの側まで歩みを進める。

 

「あぁ。任せとけ」


 そして、オデットは確かに聞いた。



「ソウルの事は、俺が見張っておく。動きがあればすぐに知らせる」



「………………え?」



「……っ、誰だ?」


 しまった。思わず声が漏れてしまった。


 慌ててオデットはバルコニーの植木の裏へと身を隠し、口を抑えて息を殺した。


「…………」


 しばらくライは黙ったまま、1つ息を吐く音が聞こえた。


「それじゃ」


 ライがそう呟く、バサバサと何か鳥のようなものが飛び立つような音が聞こえる。


 そしてそのままライはオデットに気がつく事なくバルコニーを後にした。


「ゲホッゲホッ。はぁ……はぁ……」


 息をすることも忘れていたオデットは激しく咳き込んだ。


「何……?見張るって……一体何を……?」


 そんな事、1つしかない。ソウル兄の動きのことだ。誰に……一体何のために?


 迷いの石窟の中で起こった異常事態がオデットの頭をよぎる。


 魔法達が引き寄せられるようにシェリーの召喚獣の首を穿ったあの時。


 引き寄せる魔法……当然、この世にはありとあらゆる魔法があるから一概には言えないが、そんな性質を持つのは一般的に重力を操る【地属性】の力。



 もしくは磁力を操る【雷属性】の力……。



「…………嘘……だよね?ライくん……」


 足元が崩れ落ちるような錯覚を覚える。


 まさか……いや、でもライくんに限ってそんなことあるはずが……。


 でも……じゃあさっきの会話は何?誰と話をしてたの?


 ソウル兄を見張るって、何のために?


 嫌な予測が悪いところで繋がっていく。でも、こんなこと誰に言えばいいの?ライくんがまさか、裏切ってる?そんなこと信じられない。信じたくなんてない。


「どう……しよう……」


 1人、暗いバルコニーでオデットは座り込むことしか出来なかった。

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