作戦会議3
「後は……お前らか」
次に視線が止まるのはヴェン、エリオット。
「そうだなぁ。僕もシェリーさんに鍛えてもらいたい気もあるけど、フェラルドは島国なんだよね?」
「そっか。だったらヴェンの力が必要になるかもしれないし、私もヴェンについて行くね」
エリオットはヴェンの腕にしがみつきながら満面の笑みで告げる。
「いいのか?」
確かにヴェンの船乗りとしての能力が何かの助けになるかもしれない。ならばヴェンがついてきてくれるのはソウルとしてはとても心強い。
だが同時にソウルの都合でヴェンの修行の機会を奪ってしまうのも悪いと思ってしまう。
「大丈夫。それに僕は今はシーナの方についてた方がいいと思うでが折れるよエリオット」
ヴェンの言葉を聞いてエリオットが笑顔のままヴェンの腕をキメている。
シーナといる方がいいとは一体どう言うことなのだろう。
「聖剣の力のこと。僕にも教えて欲しいんだ」
聖剣のことと言われて思いつくのはシーナが覚醒させた【解放】の力。
ジャンヌ様すら知らなかった隠された聖剣の奥義。確かにそれは今のところシーナにしか分からないはず。
「分かった。でも、私にもどこまで教えてあげられるか分からないかも」
ヴェンの言葉を聞いてシーナは難しい顔をする。
「私自身……何がきっかけでそうなったのか分からない。なるべく教えられるようには頑張る」
「それでも構わないよ。今はとっかかりすらもないからね」
エリオットにほっぺたを引っ張られるヴェンはそう言って頷く。
ふむ。なるほど……ヴェンとワンツーマンで教えて貰うってことか……。
正直、少し思わないところがない訳では無いが……仕方ない。みんなのためだ我慢我慢。
そんな風に思いながら残された最後のライとオデットに目をやる。
オデットはヴルガルド国に残ることを事前に伝えているからゼリルダと共にヴルガルドに帰るだろう。そうなればライもついて行くだろうか。
いや、血気盛んなライのことだ。ギドと同じく戦場で戦いの道を選ぶだろう。
「ソウル」
だがソウルの予想は大きく外れた。
「俺はお前についていく」
「……え?俺についてくるのか?」
「そうだ。何か問題あるか?」
「いや……別にないけど。お前のことだからてっきり戦いの方を選ぶかと思ったぞ」
「フェラルドの方だって何が起こるか分からんだろ。そうなった時に戦力が足りなくなるのが嫌なだけだ」
ライの言うことにも一理ある……か。
だが、ソウルとしてはどこか腑に落ちなさを感じたがついてきてくれることがありがたいので特に気にしないことにした。
「マコとオリビアはどうする?」
「私はシンセレスに残るよ。戦いで傷ついた人たちを癒せる私の力は貴重だから」
オリビアはシンセレスに残るらしい。実際にソウル達が戻るまでもディアナの塔の医務室で怪我人を癒していたそうだし、出張で各戦場に赴いて味方を助けていると言う話だった。
彼女がいれば、救える命が増えることが間違いない。
「マコはどうする?ついてくるか?」
今回は戦闘の機会は少ないし、着いてきて貰えば助かるだろうかと思い尋ねてみる。
「あぁ、着いていきたい……着いていきたいです。でも今は難しいのです」
「そうなのか?」
意外だ。マコのことだからてっきり「地の果てまでソウル様にお供します!」とか言いそうなのに。
「はい。実はイーリスト関連で少し動いておりまして……ソウル様の側にお支えできないのは非常に心苦しいのですが、このマコの働きは、必ずソウル様の助けになると確信しておりますので……」
「そっか」
「申し訳ありません」
「いいや。何をやってるかは分からんけど、託したぞ」
頭のいいマコのことだ。何を動いているかは分からないがマコがここまで言うのならきっと何かすごいことをやってるんだろう。
そんなマコのことを信じてみることにした。
「各々の選択は決まったね」
こうしてソウル一団の身の振り方は決まった。
「では、出立は3日後にしましょう。それまでは皆さん身体を休めたり準備をして過ごしてください」
作戦会議をエヴァがこうして締めくくる。
ヴルガルドから今度はフェラルドへ。目まぐるしい程の状況の変化に目が回りそうになるが、やるしかない。
覚悟を決めるように、ソウル達は頷き会議を終えるのだった。