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サルヴァンの過去2【不穏】

 ケインとハルが結ばれて1年ほどが経った頃、ジェインの訃報がビーストレイジへと入った。


 レグルスは父のレオとハルの父カール、そしてハルと共にサルヴァン城の王の部屋へと走る。


「父さん!父さん!!」


 そこには病床にふけるジェインに必死に呼びかけるケインの姿があった。


「ジェインよ!」


 レオはまっすぐにジェインの元へ向かおうとする。



「ここまででごさいます、レオ殿」


 だが突然部屋の守衛に止められてしまった。


「ばかな!友のこのような時に、何をするつもりだ!!」


「私の指示でございます。ビーストレイジの長、レオ様」


「お前は!?」


 そこには茶髪でくるくる髪の医者が立っている。


「今回のジェイン様の病気の原因は、あなたがた獣人にあります」


「藪から棒に何を言うか!?」


 突然の物言いにレオは怒りの声をあげた。


「ジェイン様の病気の原因は、あなた達獣人が運ぶウィルスによるものでございます。これ以上ジェイン様に病原菌を近づかせる訳にはいきませんな」


「貴様.......我々が病原菌だとでもいうつもりか!?」


 レグルスも医者に掴みかかろうとするがまた守衛に止められてしまう。


「さぁ、獣たちよ。今すぐにこの城から出ていきなさい!これ以上病気をばらまかせる訳にはいきません!」


「上等だ!だったら今すぐにでも貴様を.......!」


「よせ、レグルス」


 レオは怒りに我を忘れるレグルスを止める。


「.......くそっ。おい、何とか言え!ケイン!ケインー!!」


 レグルスの呼びかけに親友は何も答えなかった。


ーーーーーーー


「.......どう見る。レグルス?」


 ビーストレイジの里に追い返されたレオとカールはそのまま相談を始める。


「.......危ういかもしれんな」


 レオの深い眉間のシワが更に深くなった。


「カール、例のあの遺跡を使えるようにしておいてくれ」


「あの、流砂の中のやつか?」


「これから先、町との関係が崩れるやもしれん。万が一の為に避難できる場は必要だろう」


「ちょっと、待ってくれ父さん!」


 レグルスは父に告げる。


「これまで、上手くやってきたじゃないか!それにケインだっている。そんなこと必要は.......」


「レグルス」


 するとレオはレグルスの肩に手を置く。


「長となるものは常に最悪の事態を視野に入れて動かねばならない。なぜなら、判断を間違えれば一族全てが滅ぶからだ」


 レオの目は真剣だった。ここで判断を間違えれば一族の存続に関わると、レオはそう判断したのだ。


「あの医者、きな臭いな。何か嫌な匂いがした」


 カールはレオに告げる。


「あぁ。あの医者何かがおかしい。我々はもう何十年も人間と共存してきたのだ。それが我々が運ぶウイルスで病気になる?しかもそれが領主だぞ?まず有り得ん」


「ということは?」


「今回の騒動の原因はあの医者である可能性が高い」


「っ!?」


「だとすると、厄介だな。もうおれ達から手を回す余裕は無いかもしれない」


 そう言ってカールは立ち上がる。


「すぐに準備に取り掛かる。レオも急いでくれよ?」


「あぁ」


 そう言ってレオとカールは家を出た。


「.......」


「ハル.......」


 ハルは部屋の隅で俯いたままだ。


「これから、私たちどうなってしまいますの?」


 ハルは涙を溜めた目でレグルスを見た。


「.......分からん。だが、ケインがきっと何とかしてくれるはずだ。あいつはちょっと抜けてるがバカ真面目なやつだからな」


 気休めかもしれないが、レグルスはそう言ってハルを慰める。


「.......ねぇ、レグルス」


「なんだ?」



「実は私.......お腹に子どもがいますの」



 ハルは消え入りそうな声でとんでもないことを告げた。


「はぁ!?!?」


 レグルスは空いた口が塞がらない。


「もし、このままケインと私が離ればなれになってしまったら.......この子は父のいない子になってしまいますわ」


 ハルは不安に堪えきれずに涙を零す。


「.......大丈夫、きっと上手くいく。だから安心しろ」


 そう言ってレグルスはハルの頭を撫でるのだった。

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