シーナ、告白大作戦3
ヴルガルド城、男部屋。
そこには意気消沈しながらベッドに沈むソウルの姿があった。
「あぁ……ダメだ。上手くいかなかった」
「あはは。ものの見事に打ちのめされて帰って来たね」
ベッドで打ちひしがれているソウルを見てレイとヴェンは苦笑いする。
「どうせ……どうせ俺なんかシーナに嫌われてるんだ。戦いの最中で告白なんかする非常識な男なんて好きになるわけないんだ。くそお……なんて馬鹿なことをしたんだ俺はぁ……」
普段ネガティブな姿を見せないソウルのアラレも無い姿は珍しいなぁ、なんて思いながらヴェンは思案する。
シーナがソウルのことを嫌いになる訳ないだろうし……きっとびっくりして逃げ出しちゃったんだろうなぁ。
ただでさえここ最近碌に話もできてなかったみたいだし。
「で、ソウルはこの後どうするの?」
「それが……オデットとエリオットに時間になったら待ち合わせ場所に来いって言われた」
「と言うことは、今エリオット達がシーナを全力で説得しようとしてるってことだ」
エリオットがちゃんとシーナについてくれているなら、きっとシーナを宥めて連れて来てくれるはず。
「大丈夫だよ、ソウル。エリオットがついてるならちゃんとシーナは来るから」
「……相変わらずお前らカップルは仲がいいなぁ」
変わらず恋人のことを微塵も疑っていないヴェンを見てどこか羨ましさを覚えた。
「あはは。そうだね。こればっかりはヴェンには敵わないなぁ」
ヴェンを見てケラケラと笑うレイを見て、ソウルはふと思う。
「レイ……そういやお前に聞いてみたいことがあったんだけど……」
「僕に?」
「お前、好きな奴とかいるのか?」
「……それは確かに僕も気になる」
爽やかイケメンで気の利くレイ。当然こんないい奴女の子も放っておかないだろう。
実際、新人騎士の中に変なファンもいたしラブレターみたいなのをもらっているのを見たこともある。
きっとレイならどんな女性にもモテるだろう。
そんなレイに、果たして好きな人はいるのだろうか。
「好きな人かぁ……」
少し考えるような素振りを見せるレイ。まぁ、どうせ謎多き男レイだ。何だかんだでまたのらりくらりと躱されるのだろう。
ところが、ソウルとヴェンの予想は裏切られる。
「好き……と言うのかは分からないけど、放っておけない人ならいるかもね」
「「………………っ!!」」
思わずソウルとヴェンは目を合わせる。
てっきり、「あはは、いないよそんな人」とかサラッと受け流されると思っていたが、予想外にもレイにはちゃんと想いを寄せる……と言うよりは気になる女の子がいるらしい。
「そ、それってどんな奴!?」
「詳しく詳しく!」
「えらく食いつきがいいね」
「「そりゃそうだ!!」」
このレイが気になる人!?そんなの気になるに決まってるじゃないか!
餌を待つ雛鳥のように目をキラキラと輝かせるソウルとヴェンにレイはまたケラケラと笑ってみせる。
「そうだなぁ……危なっかしくて放っておけないと言うか。手がかかるんだけど見捨てられないと言うか。そんな感じ?」
「そ、それって……まさか、シーナ……?」
危なっかしくて放っておけないと言われて、真っ先に思い浮かぶのはシーナ。
たまらずソウルは心臓が跳ね上がるかと思った。
そんなソウルに対してレイは涼しい顔で首を横に振った。
「あはは、違う違う。似たようなタイプな気はするけどシーナじゃ無いよ」
「そ、そうなのか」
ほっとする反面、本当に?何て疑問がよぎる。
「ないない、ほんとのほんと」
そう告げるレイの顔に偽りはないように見える。ソウルを気遣っての答えではないようだ。
「じゃあ、一体どこの誰?」
ならいっそう気になる。一体この爽やかイケメンのハートを射抜いたのはどこの誰なのだろう。
「それは内緒にしておこうかな」
「ええー!?」
「肝心なところを……気になるじゃ無いか!」
「秘密は秘密のままの方が面白いもんだからね」
そう言いながらレイはまたいつものように笑うのだった。