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ソウル、告白大作戦5

 産業区にたどり着いたソウルは辺りを見回す。


 あれほど散乱していた瓦礫は随分と綺麗に片付けられており、すっきりとした様相を見せていた。


 ゼリルダとファーロールとの戦いで破壊された産業区の復興作業を買って出たのはカミラだった。


 ソウル達も何か手伝えることはないかと聞いてはみたが「ここは僕達の街だから。これ以上ソウル君達の力を借りられないよ」と断られた。


 セオドア率いる解放軍の人々中心に結束し、復興は順風満帆と言ったところらしい。


「ほらーそこそこー。サボってないでちゃんと働けー。おーい、あんたらは喧嘩ばっかしてんじゃないよー」


 そんな元産業区の中で声を張るのはカミラだった。


 何やら小さな木の棒を指揮棒のようにしてあちらこちらへと指示を飛ばしている。


「おーい、カミラー!」


「んー?あぁ、ソウル君じゃん。どったの?」


 ソウルに気がついたカミラはパタパタと手を振り返してくれる。


「進捗はどうだ?」


「んー。ま、ボチボチって感じかな。少しでも目を離したらいざこざばっかで疲れるよ、ホント」


 そう言ってやれやれと頭を抱えるカミラ。けれど、ソウルからはそんなことを言いながらもまんざら嫌そうでもないように見えた。


「カミラって、何だかんだで面倒見いいよな」


「そーかな?褒めても何も出ないよ?」


「そんなつもりでは言ってないけどさ」


「あはは。ソウル君って人たらしだねぇ」


 そんな事を言い合いながらソウルは本題を切り出す。


「いっこ、カミラに聞きたいことがあってさ」


「んー。何々?ソウル君が聞きたいなら何でも答えたげるけど」


 おぉ、そう言ってもらえるならとてもありがたい。大船に乗ったつもりでソウルは切り出す。


「実はシーナと出かけようと思うんだけど、ちょっといい感じの服を買いたくて……」



 ミシィッ!!



 カミラの握っていた木の棒が握りつぶされパラパラと地面に吸い込まれていった。



「……………………えーと?」



「あははー。ごめんごめん。で、何だっけ?」


 何事もなかったかのように話し始めるカミラを見てソウルの背筋が凍る。


 周りの屈強な作業員達は皆ソウル達から視線を逸らし何も気がついていないような態度を取っていた。


「え……えーと……ちょっとおしゃれな服を買いたいなー……なんて」


 どこでカミラの地雷を踏んだのか分からないソウルは恐怖に震えそうな身体を抑えながらそう答えてみる。


「そっかー。シーナと出かけるんだもんねー。デートかー、ふーん」


 ニコニコと笑っているカミラが逆に怖い。というか目が笑ってない。


 異様な迫力を放つカミラを前にソウルはダラダラと冷や汗を垂らす。


「そーだねー……どーしよっかなぁー……」


 そ、そうか。カミラとしてはこんなに働いているのに遊びに出かけるみたいな話は無遠慮だったか……。


「わ、悪い!忙しいのにカミラにする話じゃなかったよな、ごめん他を当た……」


「なぁーに言ってんの?教えてあげるってー。何で逃げんのさー」


 カミラは踵を返して逃げ出そうとするソウルの肩をガシリと捕まえる。


「でもさーデートだしさぁー、こーただで教えるってのもつまんないしさー」


「い、痛いよ?ねぇ、肩砕けちゃう……ねぇ、カミラさん……カミラさぁん!」


 ミシミシと悲鳴をあげる右肩を堪えながらソウルは慈悲を求める。


「そーだねー……とりま、そのデートできるぐらい元気な身体……貸してもらおっかなぁー」


 どす黒いオーラを出しながらカミラは語る。


「この瓦礫の山……ぜーんぶ片してもらおっかなぁ……」


「こ、この山……?」


 カミラが指さすそこには産業区からかき集められたであろう瓦礫の山が見上げるほどに積み上げられている。


「これを片したら教えてあげるよー」


「はぁ!?これぇ!?」


「そ。崩れた南門から崖下に捨ててくれたらいーから」


「あ、はは……手伝う、手伝うよ?けど、コレを1人では流石に……」


 ガチャン


 苦笑いするソウルの手首に冷たい感覚が走る。そこに目を落とすとそこには黒くて冷たい手錠が嵌められている。


 その手錠の反対側はカミラの手首に繋がっていた。


「大丈夫。ソウル君ならやれるって〜。これで僕達運命共同体だね♡」


「は、はぁ!?おまっ……」


「終わるまで逃がさんかんね」


 この鎖……どうやら魔封石で作られた手錠だ。これを付けられている限り魔法は使えないし覇王の剣も置いてきてしまった。


 つまり、ソウルの退路は完全に絶たれたわけだ。


「お、鬼か……!?鬼なのかお前ええ!?」


「え、ソウルくん何言ってんの?」


 にっこにこの笑みでカミラは言う。

 


「僕……鬼ですけど?」



 そう。カミラは確かに鬼だった。

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