シーナとモニカ
ソウルから逃げ出したシーナはとある一室に逃げ込んでいた。
「ご、ごめんね……モニカ」
「いえ。全然気にしないでください。もっとも、私もお構いできそうにないんですが」
ここはモニカの使用している部屋。シーナはここにとりあえず避難していた。
モニカは黙々と彼女の人形達を修理しているようだった。
『ごめんね。モニカちゃん。あれだけカッコつけて戦ったのにロクに活躍できなくて……』
「何を言っているです、ロベルト。貴方がいなければ私はロイガーに殺されていましたよ。貴方は私達の恩人です」
木彫りの人形ことロベルト。彼はファーロールに真っ二つに刻まれてしまっていた。
「ちゃんと元に戻りそうでよかったね」
「えぇ。人形達には核のパーツがあるんです。そこが無事なら体のパーツを入れ替えて修理することができるんですよ」
今のロベルトは首だけ吊るされている状態。つまりロベルトの核はあの頭のパーツにあるらしい。
モニカは黙々と丸太を削り元のロベルトの身体を作っている真っ最中という事だ。
そんなモニカの作業を眺めているとシーナは手持ち無沙汰になる。
「な、なにか手伝う?」
「あ、でしたらそこの彫刻刀を取ってください」
モニカの指さす彫刻刀を手渡しながらシーナはどこか上の空だった。
「……そう言えば、ソウルさんから告白されたって聞きましたよ」
「ももモニカも知ってるの!?」
「えぇ。ロベルトから聞きました」
シーナから受け取った彫刻刀でコンコンと丸太を削りながらモニカは言う。
そう言えば、シーナが戦っていた戦場にロベルトは転がっていた。その時に見られたのだろう。
「そ、そっか……ビックリした?」
「いえ。私知ってましたからビックリはしませんでしたけど……ちゃんと告白したのは少し意外でした」
「えぇ!?モニカ知ってたの!?」
「はい。というか、見てたら分かりますよ」
あれだけシーナに甘えていれば分かりそうなものだけれど……。実際何人かは気がついていたんじゃないかな?とも思う。
「おめでとうございます。結局うまくやっているんですか?」
「……そ、それが」
シーナは今のソウルとの関係を簡単にモニカに伝える。それを聞いたモニカは……。
「はぁぁぁあ〜……2人揃いも揃って面倒なことしてますねぇ……」
「ご、ごめんなさい……」
大きなため息をついて渋い顔をされた。
「でも、直接話すしかありませんよ。そうしないと思いは伝わらないんですから」
「そ、そうだよね……分かってる。分かってるけど……」
シーナにだって分かってる。ちゃんと話さないといけないことぐらい。
でも、そう思えば思うほど何を話せばいいのか分からなくなる。
「……ねぇ、モニカならなんて話す?」
「何をです?」
「モニカがロッソに告白されたら」
ゴォン
『あぁ!?僕の身体がァ!?』
モニカの手が盛大に滑り、ロベルトの腕を抉りとってしまう。
「ロロロロロッソ?何故ここでロッソの名前が出てくるんです?」
「え?だってモニカってロッソのことが好きでしょ?」
ゴォン
『左腕までぇぇぇぇ!?』
続け様に手元が狂うモニカにロベルトの悲鳴が響く。
「すっ、すす好きなわけないじゃないですか。あんな臆病者……」
「でも、ロッソといる時のモニカはいつも生き生きしてるし。ずっと好きなんだろうなーって思ってた」
「〜〜〜〜〜っ」
モニカの顔が熱くなる。
全く、どうしてこの人は自分の恋愛には鈍感な癖に他の人の恋愛には鋭いのだろうと思う。
逃げるようにモニカはロベルトの身体作りに戻る。
「でも、もう関係ありませんし。ロッソはイーリストに残ったんですから!」
「でも、このままヴルガルド国との同盟が上手くいけば帰れる。そうすればまたロッソに会えるよ?」
「そ、それは……そうですが」
「頑張れモニカ。私は応援してる」
「あなたは人のことよりも自分のことを何とかしたらどうなんですか」
「……返す言葉もない」
そう言ってシーナはどこか肩の力が抜けた様子で微笑んだ。
そんなシーナを見てふと思う。
「何だか、シーナまた少し……」
「また少し?」
「………………いえ」
シーナが何だか表情豊かになったと言うか。大人びたような印象を受けた気がしたが。
「あ、ソウルさん」
「ええええ!?どこどこ!?かか隠れないと……」
「冗談です。ちょっと仕返ししました」
「モニカぁ!」
やっぱり、まだまだ子どもっぽい。シーナはシーナだなぁと思うモニカであった。




