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生命の理を破壊する者2

破壊者(ジャガーノート)を生み出すための……研究所だと……!?」


 セオドアとシェリーの脳裏にシーナとアイザックの顔がよぎる。


「どういう事だ……?」


 確かに、【破壊者】はかつて覇王によって生み出されし戦闘種族だと聞いている。


 だが、その事実が……その実態がこんな形で目の前に現れるとは思ってもみなかった。


「どうやら、【破壊者】とは新たな生命の形を生み出すことを目的に造られたようです」


 パラパラとページを捲りながらシェリーは告げる。


「【魚】の生命力、【獣】の鋭い感覚器官、【妖精】の器用さ、【人】の魔法適正、【龍】の強靭な肉体、【悪魔】の頭脳に【天使】の強力な魔法能力……。それぞれの種族が持つ能力を1つの身体に集約し、最強の生命体を作り上げる」


「種族の強みを全て持たせたまさにとんでもない生命体を……とんでもないことを考えるものだ」


 言われてみれば【破壊者(ジャガーノート)】の特性は高い身体能力に魔法適正、獣人並に鋭い五感。それらは各種族が持つ特性そのものだ。


 もっとも、器用さという点に関してはセオドア達の知る【破壊者】達には欠けているようにも見えるが……。


 そんなことを思うセオドアを残してシェリーは続ける。


「まさに生命の理を破壊せし者。破壊者である。我はこの造られし生命に【破壊者(ブレイカー)】と名をつける」


「……っ、ちょっと待て。それはおかしいぞ」


 本を読みあげるシェリーにセオドアは待ったをかける。


「【破壊者(ブレイカー)】……?【破壊者(ジャガーノート)】じゃないのか!?」


「えぇ。ですが、ここに記されている【破壊者(ブレイカー)】の特徴は銀髪に紅い目……シーナとアイザックの特徴そのものだ。恐らく【破壊者(ジャガーノート)】と同じものとして考える他無いでしょう」


「何かの理由があって呼び方を変えることになったのか……?」


 その理由は分からないが何かそうせざるを得ない理由があったのだろうか。


「他には?」


「……後は、細かい臨床結果が記されているのみですね」


 一通り本に目を通したシェリーは本を閉じながらそう言う。


「こんな禍々しい物を……一体何故覇王はこんなふざけた実験を……?」


 それぞれの種族の名が記された装置と、そこに付けられた拘束具のついた椅子。それだけでおおよそその実験の惨さが理解できた。


 だが、改めて思う。一体覇王は何のためにこんな人道に外れたことをしたのだろうか。


 戦力にするためか?いや、それにしてもここまでやるか?こんな地下に専用の設備まで作って何故?


「それは分かりません。しかし、この事実をどうしますか?」


「……公表なんてできるものか」


 確かにここはレイオスがあの黒い人型の化け物を作っていたと思わさき施設。だが、その調査はあくまで秘密裏に行うべきだ。


 何せ、この国には今2人の【破壊者(ジャガーノート)】がいる。


 そんな2人にこんな残酷な事実を突きつけることなど、はばかられた。


「えぇ、私も同意見です。あのハスターのことだ。ここに覇王に繋がる手がかりなども残されてはいないでしょうし」


 あの周到なハスターが覇王に繋がる手がかりを残して消えるとは思えない。


 わざわざここを残したのは恐らくこちらに不和を与えるためだろう。【破壊者(ジャガーノート)】の起源を見せ、こちらの心を折るつもりなのだ。


「調査をするにしても秘密裏に……表に出さない形が良いでしょう」


「だが……それをするとなるとうちにそんな頭のいい連中はいないぞ」


 シュタール……ひいてはヴルガルド国は基本的に力が全ての国。


 そんな国には知識人なんてものは稀少人物である。


「あのゼリルダ様の従者……おのれ、その席この僕に代われ!アベルとかいう竜人なら頼めるか?」


「心の声が漏れていますよ。それにあの者は今はそれどころではないでしょう。一刻も早くこの国を建て直す責務がある」


「あぁ、そのことか」


 シェリーの懸念をセオドアは軽く流す。


「ゼリルダ様なら大丈夫だ。そのために僕らが……【北斗七帝】がいるのだから」

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