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迷走。ゼリルダ6

 シーナとソウルのことについてかいつまんで説明する。


「何と!ではシーナとソウルは恋人になったのか!」


「こっ、恋!?なってない!まだ……なってない……のかな……?」


 ゼリルダの言葉を聞いて、シーナはまた唸る。


 正直、今の状況がシーナにもよく分からない。それに、あの好きと言う言葉にもどれ程の意味があるのかも分からない気がした。


 あの好きは人としてなのか、それとも男女のそれなのか。


「何だ?ではシーナはソウルのことが嫌いなのか?」


「きっ、嫌いじゃないよ!?もももちろん……その……すき……だし……」


 言葉にしてみるとまた顔が熱くなるのが分かる。


 頭から湯気が出ているのではないかと思うほどに顔が熱くなった。


「ふむ……ならば、シーナはソウルのことが好きで?ソウルはシーナのことが好きなのだな?」


「うん。ま、そういう事になるわね」


 状況をちゃんと整理した上で、ゼリルダはシーナに問う。

 


「………………何が問題なんだ?」



 ゼリルダもちゃんと恋愛偏差値落第点であった。


「その……あれから私ソウルとろくに話もできてなくて……」


「何と!そーいう事か!全て理解したぞ!!」


 すると、ゼリルダが満面の笑みで頷く。


 その様子を見て、3人は嫌な予感がした。



「簡単じゃないか!今すぐソウルに会いに行けばいいのだ!」



「ぶーーーっ!?!?ダメダメダメ!?だから無理なんだってーーー!!!」


 嫌がるシーナの手を掴むと、ゼリルダは元気に部屋を飛び出す。


「ソウルはどこだ!?きっと男部屋だな!よーし!行くぞ!!」


「やだやだやだ!髪もグチャグチャなのに!!ソウルに会わせる顔がないってええええ!!!」


「ちょっ、待ちなさいバカ!!せめて身支度ぐらい整えて……」


「こーいうのは思い切りが大事なんだ!では行くぞ!!」


 こうしてシーナはゼリルダに手を引かれて女子部屋を引っ張り出されるのだった。


ーーーーーーー


 ゼリルダに城を引きずり回されてしばし。


 男性の宿泊部屋や王の間などを巡るがソウルの姿は見えなかった。


「ふむ、一体ソウルはどこへ行ったのだ?」


「だ、だからゼリルダ……!今はソウルと話なんて無理……!!」


「では、修練場の方に向かうか!」


「ゼリルダぁぁあ!!」


 相変わらず人の話を聞かないゼリルダに振り回されながらシーナは悲鳴をあげる。


 そんな2人の後をオデットとエリオットも追いかけていた。


「あ、あはは……どうしよっか」


「もー!知んないわよ!むしろこのままほっといていい気もしてきた!!」


 確かに荒療治のような気もするが、ここまで煮え切らない2人を何とかするためにはゼリルダが今やっているような強引な手を取らざるを得ないような気もしてくる。


 どうせ、両思いなんだし。悪いようにはならないでしょ。


 そんな風に思いながら風のように駆け抜けていくゼリルダを追って修練場へ。そこには……。


「お、いたぞ」


「○✕□¥≦〒&¶?!?」


 シーナが言葉にならない悲鳴をあげる。


 ゼリルダが指を指す先には、レイと共に木剣を振り回すソウルの姿があった。


「あ、ヴェン!」


 そしてその2人の撃ち合いを座って眺めるヴェンを見てエリオットが嬉しそうな声をあげた。


「あれ、エリオット!それに……みんなもどうしたの?」


 すると、こちらに気がついたヴェンがにこやかに笑いながら手を振る。それを見てレイもシーナ達がここにやって来たことに気がついた。


「ソウル、ソウル」


「ん……?」


 そして、レイに促されてソウルがシーナの方に顔を向けた。


「…………あ」


「……………………っ!?!?」


 ソウルと目が合う。


 その瞬間にシーナの顔が真っ赤に染め上がる。


 あ、ダメ。かっこいい。ずっと見てられるし抱きしめたい。いやでも待って今の私髪の毛ぐちゃぐちゃで服もオシャレしてないし……なんならゼリルダに引っ張られてきたせいで色々服が着崩れたりしてて……。



「あ…あぁぁぁあ……!!」



 一度思考がそっちに流れてしまえば、堕ちるのは一瞬だ。


「ご…!ごめんなさぁぁあい!!!」


「シーナぁ!?」


 万力のような力で手を掴まれているはずなのに、それすらも振り解いてシーナは踵を返して走り出す。


 ゼリルダはそんなシーナに手を伸ばすが届かず、シーナは風のようにどこかへと消えてしまった。


「…………………………」


「あ、あはは。シーナはなかなか大変そうだね」


 顔を見て、逃げ出されたソウルはただ茫然とシーナの背中を見送ることしかできないのだった。

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