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ヴルガルド革命【厄災を超えて】

 ファーロールが崩れ去った後、フィンは背中から地面へと倒れる。


 これで……これで、全てが終わった。


 4年、龍の一族を苦しめた厄災が、今滅んだ。


「兄者!」


 そんなフィンの身体をゼリルダが受け止める。


「よかった……兄者……兄者が勝ったんだな……!?」


「イ…ヒヒヒ。当たり前だロ?オイラは最強だからナ」


 あの頃のように張り裂けんばかりの笑みを浮かべながらフィンは笑う。


 その姿を見てゼリルダの心にいくつもの感情が溢れ出てきた。


「どう…して……?」


 ボロボロと涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらゼリルダは問う。



「どうして……ここまでして!私を助けてくれたのだ!?だって……だって私は兄者を信じれなかった!兄者を突き放して……レイオスにいいようにこき使われて!兄者を悪者だと信じ込まされていたんだ!なのに……なのにどうして」



 ゼリルダがあの時フィンを信じていたのなら、兄にこんな苦しみを背負わせることはなかった。


 もっと自分で考えて行動できていたのなら運命は変わっていた。


 きっと、兄にとってこの4年は辛いものだっただろう。それなのに、兄は私を恨むどころかこうして迎えに来て……助けてくれた。


 レイオスにいいようにされる私を解放し、厄災を見事打ち倒して見せた。


 こんなにボロボロになって。命を賭けて。その理由がゼリルダには分からなかった。


「イッヒッヒ……そんなもん、簡単ダ」


 フィンがゼリルダを守る理由。そんなものはたった1つ。


 

「にーちゃんだかラ。オイラが命を賭ける理由なんてそれだけで十分ダ」


 

「そんな……それだけのために……そんな」


「本当に大切なことってのは、意外と理由とか理屈とかないんだヨ」


 理由をつけようと思えば、いくらでも後付けできるのかもしれない。


 可愛いから。慕ってくれるから。考えればいくらでも湧いてくる。


 でも、それらの理由を全て取っ払ってもきっとフィンの想いは変わらない。


 彼女が、フィンの妹として生まれてきてくれた。


 たったそれだけで、フィンはゼリルダの為に命を賭けられる。


 理由が後が先かなんてどうでもいい。


 大切なのは、どう思うか。どれだけの思いがそこにかけられているかだとフィンは思う。



「だかラ、何も気にするナ。当たり前のことを当たり前にやっただけダ」



「兄者……」


 ゼリルダは兄の体に顔を埋める。


 そんなゼリルダの頭をフィンは優しく撫でた。


「終わったんだな……」


「あァ……これでお前を縛るトラウマも……そしてお前を利用するレイオスもいなくなル……これでお前は自由ダ」


 もう、ゼリルダを縛るものは何も無い。


 ゼリルダを惑わすレイオスの甘言も。


 ゼリルダの心に住まうファーロールのトラウマも。


 そして……。


「これからは……兄者もずっと一緒だ……。一緒に、城に住もう。兄者と私で、ヴルガルド国を守るんだ」


 この国の正しい形。


 黒き龍の鱗を持つ者が王になる。


 黒き龍の兄妹が、この国の王になる。かつて、双子の黒龍が国を分けて争った過去はあるかもしれない。


 けれど、そんなことは私が許さない。例え何があろうとも、2人で国を守る。


 父上が残したこのヴルガルド国を、2人で必ず正しい形に進めてみせる。


「忙しくなるからな?兄者。私の方が王様の期間が長いんだ。色々今度は私が教えるから!」


「…………そーだナ」


 ニコニコと、満面の笑みを浮かべるゼリルダ。


 そこには何にもとらわれぬ輝きがあった。


 それはかつて、あの竜の穴倉で暮らしていた時と全く同じ。いろんなしがらみによって失われていたあの頃の笑顔そのものだった。


 フィンは確信した。


 ゼリルダは、もうきっと全てを乗り越えていける。


 そして、ゼリルダのことを理解し支えてくれる部下もいる。


 この4年の月日の間に、兄の手を離れた後も彼女は彼女の道を歩き、そしてここまで成長してみせた。



「もう……お前は1人でもやっていけるナ」



「…………………………………………兄者?」

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