ヴルガルド革命【厄災戦14】
再び襲いくるファーロールの大剣。
幸い、奴が1つ投擲してくれたおかげで大剣は1つだけ。
魔法は使えないが、さっきよりはまだ余裕を持って攻撃を見ることができる。
とにかくフィンは時間を稼ぐことに全力を注ぐ。無駄な撃ち合いは避け、回避。回避しきれぬ攻撃は最小限の力でいなす。
横薙ぎの大剣は潜る様にして回避。すると空いた腕で拳が振り下ろされるので翼を広げて距離を取る。
だが、そんなものは瞬時に詰められてまた大剣がくる。
ギィン!
「……っ」
腕の龍鱗で受けるがビシリと鱗にヒビが入り血が噴き出す。そしてその怪力でフィンの身体もまた簡単に吹っ飛ばされて瓦礫の山を破壊する。
立て……!立てなきゃ死ぬぞ!!
瓦礫を無理矢理押し除けてフィンは飛ぶ。するとフィンが沈んでいた瓦礫の山が真っ二つに斬り裂かれ崩れ落ちる。
あと一瞬遅ければフィンの身体もあの瓦礫と同じことになっていただろう。
「ファハハハハ!!!逃さんぞ!!」
必死に逃げるフィンをファーロールは追いかけてくる。
だが、まだ何とかいなせる。
大剣1本ならまだなんとかやれ……。
「やはりここに落ちていたか。いやはや、ここに置いておいてよかった」
「……は?」
吹き飛ばされた産業区の地面の上。
そこにはファーロールの大剣がもう一つ落ちていた。
魔人化する時に、落とした腕に握られていた3本目の大剣。バハムートとファーロールの戦いを間近で見ていなかったフィンには予測できない事態だった。
「やべ……!?」
「さぁ!そろそろ幕引きと行こうか竜王よ!!殺られる前に殺ってみせるがいいわ!!」
ファーロールがフィンに向けて再び2本の大剣を振り回す。
魔法を使わずに……回避なんてできるはずがない……!
「ぐ……がぁぁぁぁぁぁあ!?!?」
それでも、フィンは魔法を使わなかった。
拳の龍鱗が砕ける。
足が刻まれて骨が露出する。
身体中がファーロールの攻撃で抉られ、一息の間にフィンの全身が血で染まる。
やばい……!受けきれね……!?
それでも、フィンは倒れない。もうすぐマナのチャージが終わる。
そこまで何とか保たせろ……!
「死ねぇっ!竜王よ!!」
「…………っ!」
横薙ぎの一撃がフィンの身体を捉える。
腕の防御は間に合わん。身体の龍鱗で受けるか?いや、龍鱗ごと斬られる……!
避けるしか……ない……!
フィンは自身の翼を広げ、体勢を変える。横向きに宙返りして回避を狙う。だが、やはり避けきれない。
かくなる上は……!
「いーだロ、翼の1本ぐらイ」
ドシュッ!!
フィンの左翼がファーロールに刻まれ、鈍い音を立てながら地に落ちる。
そのフィンの姿を見てファーロールはニタリと笑う。
「ぬぅん!!」
あいた左腕で今度は上からの一撃。翼を失ったフィンに空中で回避する術などない。
その一撃は見事にフィンの頭に落とされる。
だが、フィンはまだ負けていない。
ファーロールの大剣に頭の角をぶつける。
バキリ、と嫌な音を立てながらフィンの角が砕け散り、ファーロールの大剣の軌道も変わる。
ズバァン!
フィンの右顔が刻まれ、その右目も一緒に斬り捨てられた。
「これも躱すか……!」
完全に殺すための一撃だった。それなのにフィンはそれすらもいなしてみせる。
「さァーテ……!!」
痛みで吐きそうになりながらもフィンは口角を吊り上げながら笑う。
溜まった。
フィンの最後の一撃を撃ち込むためのエネルギーが。
そして、それはこのヴルガルド革命をかけた2人の戦士の戦いの決着の時を意味していた。




