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ヴルガルド革命【反流の夫婦との戦い1】

 ソウルは目の前に立つダゴンとヒュドラを睨む。


「……どういう、状況なんだ?」


 そして、ソウルはダゴンに問いかけた。


 どうか、勘違いであってくれと、心のどこかでそう祈りながら。


「ソウル少年。君の思う通りの状況だ。吾輩はこれからその少女と……ここに倒れる全ての者の命を狩らねばならぬ」


 だが、それはやはり脆く砕け散ってしまう。


 ダゴンはここにいる者を殺すと言った。つまり、やはり彼はソウル達とは敵の立場だということ。


「どうして……!」


 歯痒さを感じながらソウルはダゴンになお問う。



「何であんたがそんなことをするんだ!?俺を……カミラ達を見逃してくれたあんたが!?あの夜、俺の話を聞いてくれたあんたがどうしてシーナを!?」



 ソウルには分からない。ここで敵になるぐらいなら、どうしてこれまで俺達を助けてくれたんだ。


 それに、宿屋の酒場で言葉を交わしたダゴンは正直悪い奴だとは思えなかった。なのにどうして今ここで彼はソウル達の前に立ちはだかるのか。


「簡単な話だ、少年。これは戦争だぞ?状況が変わったのだ」


 嘆くソウルにそれでもダゴンは冷たく言い放つ。


「甘いのではないか?君はシンセレスの人間……そして吾輩は覇王の陣営。それが分からぬほど君もバカではないだろう?」


「分かってる……!分かってるよ!!だけど……!!」


 ソウルにだって、本当は分かっている。


 彼は敵なんだ。


 例え、ソウルの心の悩みを聞いて背中を押してくれたとしても。


 例え、ソウルの危地を救ってくれたとしても。


 例え、このダゴンに対して……ソウルが敵意を持てない状況だとしても。


 彼は敵。立場が違うのだと。



「本当に……戦うしかないのか……?」



 ギリリ……と、ソウルは歯を噛み締める。


 本当は……戦いたくなんかない。どうか別の道はないのかとダゴンに問う。



「あぁ。戦うしかないのだよ。吾輩がこちら側に来てしまった以上……な。それは1000年も前から変わらぬ宿命なのだ」



「………………そうか」


 ダゴンの言葉を聞いて、ソウルは空を仰ぐ。


 何をやっている。


 分かっていただろう?覚悟していただろう?


 ここにきて今更、俺が甘えるなんてこと、許されるわけがない。


 これは、俺が始めたことなんだから……こんなところで俺が迷っていてどうする。



「分かった。戦うよ……ダゴン」



 ソウルは覚悟を決める。


 ここで戦わなければ、ダゴンは止まらない。


「ふむ。それでこそ男だソウル少年。それでは早速拳を交えるとしようか」


 ヴルガルド革命を成すために……大切な友を……仲間を。そして……愛しいと思える女性を守るために、ソウルは戦わなければならないのだ。

 

「ソウル……!気をつけて」


 剣を構えるソウルにシーナは告げる。


「ダゴンは……その男は!10の邪神の1人だよ……!」


「はぁ!?」


 ソウルはたまらずシーナの方を振り返る。


 10の邪神!?何を言ってる!?まさか……まさかそんなことがあるか!?


「ふ、では改めて自己紹介としようか」


 シーナの言葉を受けて、ダゴンがローブを掴みお辞儀をする。


 その所作はまるで格式高い貴族の様で、磨き上げられたような礼儀を感じさせた。


「吾輩……10の邪神が末席【反流(はんる)のダゴン】なり。さぁ、戦おうか。己の矜持を賭けて。君が望む未来を掴むために吾輩を超えてみせるがいい」


 そう言ってダゴンはそっと拳を構える。


 その様相はまるで武術の達人の様な構えだと思った。ジェイガンやフィンともまた違う、1つの完成された、流れる様な動きだった。


 いつか相対することは覚悟してきたさ。


 だが……まさかここで?しかもファーロールじゃない。このダゴンが……覇王陣営最強の存在の一角、10の邪神だという。


 黒剣を握る手に嫌な汗が滲む。


 ただでさえ危険な敵だというのに、敵はダゴンだけじゃない。


「ふふふ……私も混ぜていただきますわよ、黒のお方。私はヒュドラ。ダゴンの妻であり、そして側近です」


 ダゴンの傍に控えるヒュドラも、そう戦いに名乗りを上げる。


 ヒュドラもまた、ソウル達の敵。


 マナを感知する術を持つソウルにすら悟らせぬほどの闇討ちを行える彼女をダゴンと同時に相手にしなければならないのだ。

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