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ヴルガルド革命【厄災戦3】

 隕石のように直下したファフニールの衝撃でシュタールの大地が大きくひび割れ、落下点を中心として巨大なクレーターを形成した。


 あまりの衝撃波に突風が吹き荒れ、産業区と商業区の建物を破壊していく。


「だ、大丈夫……!?」


 その光景のすさまじさにシーナは堪らず苦笑いするしかない。周りで倒れているシュタールの街の人が巻き添えにならないだろうか。


「あははー……大丈夫ー。うちの国の奴らはこの程度で死んだりしないからー」


 すると、そばに倒れていた金髪と褐色の肌をした少女……確かカミラといったか。彼女が弱々しく笑いながらそんなことを言う。


「あなた達は……何をしてたの?」


「んー……ソウル君達と一緒に産業区の解放を頑張ってただけだよー」


「……っ」


 カミラの口から出たソウルと言う言葉にシーナはドキリとした。


「やっぱり君らもソウル君と噛んでたみたいだね。ダメだなー、そんなに素直だったら簡単に騙されちゃうよ?」


 そんなシーナの反応を予測していたようにカミラは告げる。


「だって、レイオスに反抗するなんてゼリルダ様らしくないって思ったし。君らもゼリルダ様に何かしてくれたんしょ?」


「……うん」


 でも、少し罪悪感も募る。


 まるで、私達もゼリルダを利用しているような形になっている気がした。本当はフィンと繋がりもあるのにそれを黙って今こうしている。


「いーんじゃない?それでゼリルダ様が救われるなら」


 そんなシーナの心情を分かってか、カミラは告げる。


「それに、うちのゼリルダ様を甘く見ないでくれる?あの人……レイオス以外の人を見る目だけは確かだから。ゼリルダ様が影響を受けたってんなら、きっとあんたらも信用できる奴だと思うしね」


「……ありがと。いい人だね」


 シーナの言葉を聞いて、カミラは面食らったように目を丸くする。


「…………やっぱり、ソウル君達の仲間って変わってるね」


「何の話?」


「こっちの話だよ。それより……」


 カミラが重い体を起こしながら告げる。


「まだ……終わってないよ。むしろこれからだ。早くゼリルダ様を助けてあげて」


ーーーーーーー


 ファフニールが巻き起こした破壊の一撃。


 それによって生まれた砂埃が晴れる。


「な……!?」


「ふむ……中々面白い一撃だった。召喚獣を使ったよい連携だ」


 ファフニールがファーロールを貫くために放った角。


 それはファーロールの口に噛みつかれ、止められてしまっていた。


 腕を封じられたファーロールは、ファフニールの突進を歯で止めたのだ。


「だが……やはり攻撃が単調だな。経験が足らぬ。そのような愚直な攻撃では我は倒せんな」


 ミシミシと鈍い音ともにヨルムンガンドの身体が押しのけられる。


 このままではファーロールの拘束が解かれてしまう。


「こ、この……!」


 ファフニールは暴れ回るがファーロールから逃れることが出来ない。これでは下手な追撃も不可能だった。


「……っ!任せて、ゼリルダ!!」


 それを見たシーナは慌ててそこに飛び込む。名刀・銀鬼を振り上げて自由を失ったファーロールの頭目掛けてたたき落とした。


 【大車輪】


 身体を一回転させて叩き込むシーナの剣技。


 ゴッ!!!


 破裂音にも似た音を立てながら、ファーロールの顔を叩き飛ばす。


 しかし、それでもファーロールは怯まない。ファフニールの身体は解放されなかった。


「さぁ……我の番だな」


 不敵に笑うファーロール。そしてその直後。


 ザンッ!!


 ファーロールの身体が解放され、瞬きの間にその大剣を振り回す。


 ヨルムンガンドの身体はバラバラに切り刻まれ、ファフニールの首が飛ぶ。


「くぁぁぁあ!?」


 シーナに向けられた大剣は名刀・銀鬼で受け止めたが、その勢いは殺せない。まるでボールのように吹き飛ばされて瓦礫の山の上に叩きつけられた。


「かはっ……」


 血の塊を吐き出しながらシーナはそこに倒れ込む。


 同時に、オデットが作ってくれた名刀・銀鬼もまたビシリと大きな亀裂を生む。


「ぐっ!?」


 切り刻まれた召喚獣のフィードバックがゼリルダを襲う。


 それも2体分。余りのダメージに直接攻撃を受けた訳では無いゼリルダの身体から鮮血が舞った。


 召喚獣のフィードバックでゼリルダは動けない。ファーロールはその隙を逃しはしない。


 一気に踏み込んでゼリルダに終焉を与えんと大剣を構える。


「……るな」


「……?」


 だが、まだ負けてはいない。


 痛みに眉を歪めながらも、ヴルガルド国の女王は負けを認めてなどいない。


「舐めるな……この程度の痛みなど……屁でもない」


 そうだ……これぐらい、痛くも痒くもない。


 あの時に比べれば。家族が切り刻まれて、兄が自分の元を去ったあの時の痛みに比べれば、こんなもの無いのと同じだ。


「私は……黒龍の女王、ゼリルダだ!!こんな所で死ぬわけにはいかん!兄者ともう一度話をするその時まで……生きなければならんのだ!!」


「想いだけで勝てるほど戦いは甘くないぞ娘!全ては力……勝者足る証を示せ!」


「無論!そのつもりだぁ!!」


 力が全てのこのヴルガルド。弱き者は何も語る資格などない。だからこそ、ゼリルダは示す。自身の強さと決意の証。


 力が全てのヴルガルド国の頂点に立つものとして。確固たる強さをここに示す。


「さぁ!私の願いを叶えるために現れろ!剛健たるその身で敵をなぎ倒せ!!【地龍】のマナ、【ジャバウォック】!!」

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