ヴルガルド革命【厄災戦2】
ゼリルダはまず、自身の召喚魔法を展開。
「さぁ!私の願いを叶えよ!その強靭な龍鱗を持って敵を薙ぎ倒せ!【雷龍】のマナ!【ヨルムンガンド】!!」
ゼリルダの詠唱とともに放たれるマナが魔法陣を形成。現れたのは金色の鱗を持った蛇のような龍。頭からは2本の湾曲した金色の角が生え、バチバチと電気が弾けさせている。
背中の鱗は逆立つような形状をしており、あれに削られれば肉が抉られそうだった。
「【咆哮】のマナ!【龍の咆哮】!!」
ヨルムンガンドの口から金色に輝く雷の咆哮が放たれる。
バリバリと空気が爆ぜる音が周囲に響き、ファーロールを貫かんと襲い掛かる。
だが、ファーロールはヨルムンガンドの咆哮を大剣1つで弾き飛ばしてみせる。
「そのような単調な攻撃など、効かぬわ!」
「厄介な!ならばこれでどうだ!?【連撃】のマナ!【ドラゴン・ライトニング】!!」
ヨルムンガンドの2本の角が輝きを放つ。そしてその角からいくつもの稲妻が放たれファーロールに襲いかかる。
対するファーロールは回避もせずにまっすぐにヨルムンガンドに向かって走る。
破裂音と共に稲妻がファーロールの身体を直撃するが、ダメージはおろか怯むことすらなく突撃してくる。
「ぬん!」
そして一瞬でヨルムンガンドを肉薄するとその蛇の身体に大剣を叩きつけた。
「【防御】のマナ!【ドラゴン・カウンター】!!」
バチイイイイン!!
だがゼリルダもそれ予測し魔法を発動。大剣がヨルムンガンドに触れる瞬間にヨルムンガンドの龍鱗が破裂し、ファーロールの剣ごと攻撃を弾き返して見せた。
「ほぅ」
「ふはは!どうだ!?私のヨルムンガンドなら貴様の攻撃も無力化できる!」
ヨルムンガンドの龍鱗は硬く強固。更にそこに魔法の力を加えることで相手の攻撃を弾くと共に反撃を加えることができる。
ゼリルダの召喚獣の中でも防御に特化した召喚獣である。
「面白い力だ。だが、その程度で我の攻撃を止めることは敵わんな」
ビシィッ
「な、なにぃ!?」
ところが、ヨルムンガンドの龍鱗が悲鳴を上げる。ファーロールの刃を受けた場所にヒビが入り、ゼリルダの身体にも鋭い痛みが走った。
「何故だ!?私のヨルムンガンドに攻撃は効かないはずだ!」
「我の【保有能力】の力だ」
魔人であるファーロールにもまた、召喚獣と同様の【保有能力】が宿る。
「【魔法貫通】。我の攻撃の前に魔法は意味をなさぬ」
【魔法貫通】
その能力はあらゆる魔法を貫通し、ダメージを与える絶対的な攻撃特化の【保有能力】。
防御魔法だろうが攻撃魔法だろうが、ファーロールの攻撃の前には全て無力。言わばバステオスの【防御破壊】の完全上位互換。
全ての魔法に対する特攻効果である。
そして更にファーロールによって与えられた傷は魔法による干渉を受けない。即ち回復魔法などによる回復をも封じる能力を持つ。
「ふ、ふざけるな!そんなの卑怯ではないか!?」
「卑怯などと言ってくれるな。その代償として我は魔法を使うことはできぬのだからな」
だが、その代償は決して小さくは無い。
ファーロールは魔法を使うことができないという。
「何!?一体なぜだ!?」
「ふ。気にするな、我の体質のようなものだ。そんな事よりもどうした?それで終わりなのか?」
動きを止めるヨルムンガンドにファーロールは再び刃振るう。
「く……!?【尾撃】のマナ!【ドラゴン・テイル】!」
迫るファーロールに対してヨルムンガンドはその巨大な身体を鞭のようにしならせてなぎ払いを放つ。ファーロールはその尾による一振りに3本の大剣を重ねるように構えた。
「【カースド・ベイン】!」
ズガン!
「ぐ……なぁっ!?」
ファーロールの一撃がヨルムンガンドの攻撃ごとその尾を引き裂き、ヨルムンガンドの尾が地面へと落下する。
「次は本体だ」
ヨルムンガンドの尾を切り裂き、道を作ったファーロールがヨルムンガンドの首目掛けて一気に距離を詰めてくる。
あの首を切り落とせばこの召喚獣も消える。仕留めるために一気に畳み掛ける。
「だが……!私のヨルムンガンドだって負けてはいないぞ!?」
その瞬間。ゼリルダがヨルムンガンドに指示を送る。すると、切り裂かれたヨルムンガンドの断面から光が放たれ、そこから新しい身体が再生する。
ヨルムンガンドの【保有能力】、【超再生】。
その力は例えいくら身体が欠損しようとも元の姿へと再生する力。
再生した身体でファーロールの身体に巻き付いてその身を捕らえて見せた。
「この程度で我を止めたつもりか?」
縛り上げられたファーロールはその拘束を解く為に力を込める。その圧倒的な怪力でヨルムンガンドの身体がミシミシと鈍い音を立てた。
「さぁ……!そのまま一気に決めさせてもらうぞ!」
ゼリルダはそんな力くらべに付き合うつもりはない。とにかくこいつを倒す。それだけのために力を振るう。
「【火龍】に【無双】のマナ!【二重召喚】!!」
新たに刻まれる魔法陣。それはファーロールの真上の空に展開。
身動きが取れない隙に、一気に叩き込む。
「さぁ!私の願いを叶えよ!龍の爆炎で敵を焼き焦がせ!!【ファフニール】!!」
「ギャァァァァァア!!」
現れた緑の鱗を持つ飛龍。そいつは重力と共に真下のファーロール目掛けて急降下。
「【加速】のマナ!【ドラゴン・ブースト】!!」
ファフニールの翼から赤い炎が噴出。それによって推進力を得て突進。鼻先の鋭い角でファーロールの身体を抉らんとする。
ファーロールの腕はヨルムンガンドに捕らわれて動かすことはできない。しかもこれだけの勢いをつけた突進をまともに喰らえばいくらファーロールと言えどもただでは済まない。
「その脳天……!叩き潰してやれえええええ!!!」
ゴッ!!!
ヨルムンガンドに拘束されたファーロールの頭にファフニールの突進が突き刺さった。




