ヴルガルド革命【反撃4】
シェリーは瞬時に辺りを見渡し、状況を理解する。
産業区の壁は破壊した。だが、それを見越したレイオスによって逆に追い詰められる結果となったわけか。
この産業区の関所に来るまでの道が不自然に閉鎖されていた。つまり道を塞いで反乱因子を全てここに集め、一気に殲滅する狙いがあったわけか。
「相変わらず……人を弄ぶようだな」
「ふん。知略に富んでいると言え」
レイオスは新たに現れた刺客を睨みつけながらそう告げる。
「今更貴様1人がここに来たところで何になる?」
ここにはレイオスと厄災ファーロール。他の戦士は皆やられ、地に伏している。
フィンとソウルは地の迷宮で身動きが取れない。
そんな状況でこんな小娘1人で状況は変えられはしないだろう、
「シェリー……。こいつが……ファーロールだよ……」
鬼の炎が解け、倒れるカミラが告げる。
あの大樹の化け物……あれがファーロールか。なるほど、確かにこれまで見たことのないほどの圧倒的なオーラを感じる。
「どうした?復讐に囚われしハーフエルフ。私を殺しに来たか?」
「……目的を果たすついでにな」
黄金の太刀、神斬りを構えながらシェリーは言う。レイオスの揺さぶりはシェリーには通じない。
そんなシェリーの態度はレイオスにとってあまり面白くなかった。
「ふ、ファーロール。やれ」
それにむざむざシェリーに付き合う義理などない。この女は危険だ。
悔しいがあのヒコノ・シナツの一人娘。数多の騎士を惨殺してきた殺人鬼。そんな奴とむざむざ戦うのは無駄だ。
こいつもファーロールに始末させればいい。ファーロールの力があればこの娘も殺せるだろう。その為にファーロールを召喚したのだ。
「……ふん」
ところが、ファーロールは鼻を鳴らすと首を横に振った。
「断る。その娘は貴様の客だろう?何故我がわざわざ相手をせねばならぬ」
「何ぃ……?」
ファーロールの言葉にレイオスは怒りをぶつける。
「それに……」
レイオスの言葉を無視してファーロールはグルリと向こうをむく。
「我にも客が来たようだからな」
「おい……これは一体、どういう事だ……?」
「……っ!?」
その声を聞いて、レイオスは背筋を凍らせる。
まさか……!?
あの人造魔人を見れば……お前は街を守るために動くだろう!?いや、そもそもダゴンに外出を止めるように指示を出したはず……。
何故……何故お前がそこにいる……!?
どうやってここまで辿り着いたというのだ!?
「おい……レイオス。これは一体どういうことだ……?何故、この化け物が……父上とみんなを殺したこいつがここにいるのだ!?」
このヴルガルド革命成功の鍵を持つ者。
ヴルガルド国の女王。黒き龍鱗の継承者。始祖龍アルファディウスの娘。
ヴルガルディア・フォン・ゼリルダがそこにいた。




