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ヴルガルド革命【反撃2】

 モニカを下したファーロールは自身の大剣に目をやる。


「……刃こぼれしている訳ではない」


 確実にあの娘を真っ二つに斬り刻む為の一撃だった。だと言うのにあのモニカの右腕はファーロールの大剣を受け止めて見せたのだ。


「何者だ……?」


 あの右腕……あれには一体何が宿っておる?それに……何か似たような波動を前に感じたことがあるような……。


「……まぁいい」


 ギラリとファーロールは周囲に目をやる。


「ひ、ひいい……!」


 恐れ知らずの解放軍の兵士たちはその圧倒的な力の前に立ちすくむ。


 次元が違う。魔法を使え、この産業区解放に貢献した3人の戦士が一瞬のうちに倒された。


 彼らは魔法が使えたとしても自分達よりも強い戦士だと言うことは見れば分かった。そんな3人を倒した化け物を魔法も使わずに倒せるはずがない。


「さぁ、後はゴミ掃除だけだな」


 そんな恐怖に震える解放軍を見てファーロールはため息をつく。


 商業区へと逃げ出す兵士の前に立ち塞がって、大剣を振るう。


 ザンッ!!


 それだけで解放軍の兵士の首が5つ飛んだ。


 人が敵う相手じゃない。


 恐れを知らないはずの屈強な解放軍の兵士達は一同がそう感じた。


 まさに歩く天災。厄災だ。殺される……もう命乞いも通じる相手じゃないだろう。


「ほーんと……やってくれるよ」


 カミラは歯を食いしばりながらファーロールの背中を睨みつける。


 レイオスのやつ、最後の最後にとんでもない隠し玉を残してくれやがって。


 だが、同時に理解した。ソウル君の考えが間違ってないと言うことに。


 こんな化け物が、他に9体もいる。その手下も含めればもっと。


 1つの国だけでこんな奴、まともにやりあえるはずがない。


 世界が一丸となって立ち向かう必要がある。


「上等だ……」


 だからこそ、カミラは戦う。ここで負ければ全部が終わる。


 シュタールも、ヴルガルドも。そしてゼリルダ様も。全て蹂躙されて終わる。


 あんなメガネのクズ野郎に全ていいようにされて、負ける。


 そんなことだけは許されない。認めるわけにはいかない。だが、今のカミラではあんな化け物と渡り合えるはずもない。


 勝利条件は産業区の内情をゼリルダ様に伝えること。フィンの言葉をゼリルダ様に届けて目を覚まさせること。


 見失うな、目的を。恐怖に苛まれて戦いを止めるな。


 恐れ知らずのヴルガルド。武装国家ヴルガルドの名に恥じぬ戦いをしろ!!



「おーい!こんなとこで負けるんじゃないよー!!」



 総崩れする解放軍に向けて、カミラは声を張り上げる。


「こんなことで、あのイカれメガネの好きにさせていいの!?」


「で、でもよ……!」


 カミラの激励に対して返ってきたのは戸惑いと恐怖の声。


 分かってる。僕だって正直怖い。あんな化け物と真っ向からやり合うなんて避けたいよ。


 それでも、負けられない。ゼリルダ様の為に。そして、優しい世界を作る為に。僕だって命を賭ける意味がある。



「僕が全力で時間を稼ぐ!その間に1人でいい!1人でも城にたどり着いてゼリルダ様に産業区のことを伝えるんだ!」



「あ、あの【鬼火のカミラ】が……?」


 カミラの言葉に解放軍の兵士たちは困惑した。


 鬼火のカミラは危険な奴だった。確かに実力は折り紙付きだが、反面その粗暴な態度は目に余って畏怖の象徴だった。


 そんなカミラが……俺たちの為に時間を稼ぐ……?


「ど、どういう風の吹き回しだ……?」


「べーつに?僕だってこのままが嫌だなって思っただけだよ」


 金棒を振り回しながらカミラは告げる。


「こんな……力だけで全てが決まる世界が……嫌になっただけ。こんな国、変えてやりたいって思うようになっただけだよ」


「「「………………」」」


 カミラの言葉に解放軍の兵士達は言葉を失った。


 セオドアとの日々を経て、解放軍達もまたそんな日々を心地よく思っていた。


 互いに協力し、1つの目標を達成することの喜びと達成感。


 他者の力を借りなければ戦えないセオドアだから気が付かせてくれたそのこと。一体どう言う理由でそうなったのか分からないが、国のトップを担うカミラも解放軍達と同じことを感じて、戦っている。


「……はは」


 力が全てを支配する世界が、変わるかもしれない。


 誰もが心をとがらせて、寝首をかかれないような殺伐とした世界。


 この戦いの向こうに……そんな世界が待っているのかもしれない。


「行け!解放軍!こんな国変えるよ!誰でもいい!ゼリルダ様の元に……!」



「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」



 消沈していた解放軍の兵達が再び立ち上がる。


 カミラの叱咤を受けて、再びこの国を変えるために駆け出す。


「ふん。だが……そう易々とはいかんぞ」


 だが、そこに立ちはだかるのは厄災ファーロール。気持ちだけでどうにかなるものじゃない。


「そーだね。だから僕も全てを賭ける意味があるんだよ」


 カミラは立ちはだかるファーロールに向けて駆ける。このまま突っ込んでもすぐにあの大剣で斬り裂かれて肉塊に堕とされるだけ。


 上等だよ。だったら全部ベットしてやる。僕が僕であること全てを賭けて……お前を止める時間を稼いでみせる。

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