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ヴルガルド革命【ゼリルダの選択2】

 ゼリルダを連れたシーナ達は慌ただしい城内を駆ける。


 街に出てフィンを探しにいく。きっとフィン達は拠点である【龍の休み場】にいるはず。


 城の出口に向かう階段を駆け降りて先に、ふと2つの人影が立ちはだかっているのが見えた。


「ダゴン!それにヒュドラも!私は少々出かけてくる!止めてくれるな!」


 いつものように、ゼリルダはそうハツラツと言い残して城を出ようとする。いつもなら「お気をつけて」と妙に礼儀正しい態度で送り出されるはずだった。


 だが、今日の2人は何故か首を縦には振らなかった。

 

「それが……レイオスから貴方様を城から出すなとのお達しが来ておりまして……」


「何ぃっ!?」


 ダゴンの言葉にゼリルダは驚きの声をあげた。


「何故!?これまで一度だってこんなことなかったと言うのに!一体全体どう言うことだ!?」


「さぁ……私もそれ以上のことは聞いておりませぬ故」


「うーむ……」


 そここらは腕を組みながら考え込む。どうしたものかとシーナ達が立ち振る舞いを考えていると……。


「何事だ」


 背後から響く野太い声。もう1人の【破壊者】こと、アイザックが2本の大きなランスを背負ってそこに立っていた。


「アイザック!聞いてくれ!ダゴンとヒュドラがいじわるして城から私を出してくれんのだ!」


「正確には、レイオスからの命令であるが……な」


 ゼリルダの訴えを聞いて、アイザックはダゴン達を睨む。一方のダゴンの方はため息をつきながら両手を上げて見せた。


「ならば、女王として命じればいい。お前は女王なのだから、やりたいようにやれ」


「む……」


 アイザックの指摘を受けてゼリルダはぽかんとする。


 そうだ、冷静に考えればレイオスが城から出るなと言ったところでそこに強制力などない。女王であるゼリルダの方が権力があるのだから、無理に従う必要も無いのだ。


「その手があったか!いやはや、流石はアイザック!」


 満面の笑みを浮かべながらゼリルダはアイザックの腰を叩く。


「よーし、黒龍の女王ゼリルダとして命ずる!そこをあけよ!女王は今から外に出かけるのだ!!」


「………………」


 高らかにゼリルダはそう命じる。


 これで問題なく城の外に出てフィンを探しに行くことができる。そう思った。


 だが、ダゴンから返ってきた言葉は予想外のものだった。


「なりません。レイオスからいかなる理由があろうともゼリルダ様を城から出すな、と命令を受けております故。例え貴方様の命令であったとしても、ここを退くわけには参りません」


 礼儀正しくお辞儀をしながら告げるダゴン。


「なっ!」


「……っ」


 ゼリルダだけではない。その後ろにいたシーナ達もまた唖然とした。女王であるゼリルダの命令を無視するなんて……こんなの、普通じゃない。


「……ようやく、化けの皮を剥がしたか」


 それと同時。ザワリとアイザックの取り巻く空気が張り詰めていく。


「ゼリルダ、行け」


 そして、アイザックは背中に背負った大きなランスを掴むとそれを容赦なくダゴンへと突きつける。


 黒く光沢を放つ巨大なランスはバチバチと小さな火花を散らし、まるでダゴンを威嚇しているように見えた。


「待て待て。ここは紳士的な解決を求むぞ、アイザック。そのような武力行使など、全く紳士的ではないではないか」


「黙れ。貴様らのような卑怯者が何を高尚ぶっている」


 アイザックはダゴンを牽制したまま背中に背負ったもう1本のランスをゼリルダに手渡す。


 黒くて太いランス。それは組み立て式のようで今はその槍が根本から折りたたまれており、持ち運びしやすいような形状になっていた。


「ぬ、しかし……」


「そこの娘達に背を押されて、兄と話をすることを決めたのだろう?」


「んなぁ!?まさか……聞いていたのかぁ!?」


 顔を真っ赤にしながらゼリルダは悲鳴をあげる。


 話の流れ的に、おそらく女子会のことをアイザックは聞いていたのだろう。


「へ、変態め!まさか覗いていたのか!?」


「あれだけ騒げば聞こえる。【破壊者】の聴力を舐めるな」


 【破壊者】は高い身体能力と感覚を備えている。確かにシーナも本気を出せば部屋の外からでも中の会話を聞くことはできる。


 しまった、油断した……とシーナは苦笑いする。


「ここは俺がくいとめる」


「し、しかし……何故アイザックがここまでしてくれるのだ?」


「今のお前にはレイオスの言葉などに惑わされぬ熱い想いがあるのだろう?」


 困惑するゼリルダに、アイザックは告げる。


「俺はお前が信じる道を信じている。レイオスなどではない、お前の思う道を行け。そのために俺はお前の部下になった」

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