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ヴルガルド革命【産業区解放戦2】

 飛び出したモニカとハロルドは魔法を展開。


「【ハブル・ランチャー】!!」


 ハロルドの泡が勢いよく弾き出され、赤髪の男に襲いかかる。


「きかんな」


 だが、ハロルドの魔法はその触手1つに引き裂かれ霧散していく。


『ダメだ。あの魔法……僕の力と相性が悪い』


 泡の魔法は打撃や波状攻撃をいなすのには向いているが、鋭い斬撃や刺すような攻撃には弱く、破裂してしまう。


 あの鋭い触手はハロルドの泡を引き裂き、破壊していく。


「ならば……!手を変えましょう!【分霊】に【弾機(バネ)】のマナ!」


 モニカの鞄を開き、中から現れたのは一体のバネ人形。


『よっしゃ!おじさん頑張るぜモニカちゃん!』


「頼みます!スプリング!」


 長い手足と鋭い爪が特徴的な操り人形を召喚する。


「ふっふっふ。何だ、ドミニカの成れの果てか?随分とまぁ良い姿じゃないか」


『ほー。俺たちのことを知ってんのか』


 スプリングはバネのような腕を振り回して赤髪の男を攻撃。男もまた自身の触手を振り回してそれを弾き返していく。


「だが、その程度の力で私を止められると?舐めるなよ人形風情が」


 不敵な笑みを浮かべる男は続ける。


「私は、ロイガー。あの方に仕える魔人が一角。貴様のような小物ごときにやられるたまではないわ」


「……っ!」


『ほー。魔人か……』


 スプリングの目が鋭く光る。


『だったら……尚更負けらんないね。俺達をこの身に堕とした奴らの仲間ってんだろ?』


 スプリングは右手を後方に限界ギリギリまで伸ばす。



『こちとら……ちょーっと気合いが入っちゃうぜ?』

 


「【スリングショット】!」


 モニカの言葉と共に、伸びた腕が戻ってくる。バネの伸縮によって強大な力を得たスプリングの爪がロイガーに襲いかかる。



「【寄生】に【強撃】のマナ、【ポリポラ】!」



 対するロイガーは触手の歯を剥き出しにしてスプリングに向けて放つ。


 ガキン!!


 そして爪と触手がぶつかり、互いの軌道を逸らす。


 爪は産業区の防壁。触手は建物を砕いて破壊した。


「所詮人形……その程度の力で私に張り合うか?」


『はん。ただの魔人風情がでかい顔すんなよ!』


「【跳躍(リープ)】!」


 モニカはスプリングにマナを込める。すると、スプリングはそのバネの足で跳躍した。


 ここは市街地。壁や建物乱立している。その中であればスプリングの力が最大限に発揮される。


 壁や建物を足場にして、スプリングは超速で飛び跳ねて移動。目にも止まらぬ速さでロイガーを翻弄する。



「な……」


 ここで初めてロイガーの顔から余裕が消えた。


 触手を広げ、スプリングを捉えようとするも、スプリングはスルリとそれを躱し、ロイガーに迫る。


 ドシュッ!


「ち……!」


 スプリングの爪がロイガーの腕を引き裂く。


「容赦はしません!」


 だが、それで攻めの手を緩めるつもりはない。相手は未知の敵、魔人だという。


 ならばこの流れで反撃の隙を与えず倒してしまいたい。


 バネの全身を使って攻め立てるスプリング。ロイガーはただ防戦一方だった。


 触手を引き裂く。すると血のかわりに何か白い粉のようなものが舞う。


 ロイガーの身体をバネの足で踏みつける。ロイガーは触手を盾にして何とか堪えてみせた。


 飛び上がる瞬間に爪を伸ばして触手ごとロイガーを引き裂く。


「ぐお……!」


 見る見るうちにロイガーの触手と身体はボロボロになっていく。


「よし……!」


 いける。このまま一気にロイガーを仕留めて関所を……!


 モニカがそう思った。その時だった。



『うがっ……!?』



 突如、スプリングの動きが鈍る。


「……!?どうしました!?」


『から……だが……!?』


 ギシギシと鈍い音と共にスプリングはうごきをとめる。


 そして、スプリングの身体が空中で制御を失ったかのように落下。ズンっという思い音と共に地面へと落下した。


「スプリング!?」


「ふ……ふっふっふ。かかったな」


 先程まで切羽詰まった顔をしていたロイガーがニヤリと笑う。


 そして、見る見るうちにロイガーの身体が赤く染まっていく。


「な、何ですか!?」


「ふっ、まさか【魔人化】することになるとは。流石は召喚術の元になった一族。油断も隙もありゃしない」


 ロイガーの身体が真っ赤に染まる。そして体表はブヨブヨした物へと変わり、人のそれではなくなる。


「これが私の真の姿。【寄生獣】ロイガー。私の力は対象の物体の身体に寄生して乗っ取る能力」


 見ると、スプリングの首の後ろから何かキノコのような物体が生えているのが見える。


「古びた人形など、私にとっては格好の餌食。寄生しやすいことこの上ない」


「……っ」


 寄生する茸。聞いたことはある。確か上手く使えば薬にもなる冬虫夏草もその1つ。


 つまり、ロイガーの力はそれに近いもの。


 寄生し、支配、コントロールする魔法。先程の触手から放たれた白い粉はキノコの胞子のようなもので知らず知らずのうちにスプリングの身体を蝕んでいたのだろう。


『す…まねぇモニカちゃん……!身体が……!?』


 ミシミシと鈍い音を立てながらスプリングの身体が勝手に動き出す。


「く……!?」


 スプリングを……奪われた!?


 モニカの人形たちは1000年前に生まれた存在。どうしても身体が古い。だから寄生キノコにとってはうってつけの宿り主。


 つまり、このロイガーという魔人はモニカの操る人形達の天敵……!


「さぁ、どんどん出しなよ君の人形達を。全て奪って私の手足にしてくれる」


 そう言ってロイガーと奪われたスプリングが同時にモニカへと襲いかかってきた。

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