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北東通りの戦い2

 シーナとケイラは4人の獣人を拘束すると大通りへと飛び出した。


「皆さん、投降してください!」


 ケイラは獣人達に呼びかける。


「あぁ!?何だあの女どもは!?」


「ぶち殺せぇ!」


 そんなケイラに2人の獣人が飛びかかってきた。


「っ!」


 シーナもケイラに負けていられない、と迫ってくる左の猫のようなしっぽをした獣人に蹴りを放つ。


「はっ!」


 しかし獣人は身軽にシーナの蹴りを回避し、回避際にサーベルを振る。


「っ!」


 シーナは即座に身をのけぞらせて躱すが、サーベルがシーナの目前を掠めた。


 速い。相手は恐らくビーストレイジでも平均レベルの強さだろう。それでも速さはシーナとほぼ互角だった。それに加えて人間では有り得ないような身のこなしでシーナを翻弄する。


「確かに、強い」


 シーナは呟く。魔法なしでは少し分が悪いように感じた。


「.......我が魂に応え.......」


 シーナが詠唱を始めようとする。


「させねぇよ!」


「.......!?」


 それを見た獣人は一気に距離を詰めサーベルをめちゃくちゃに振り回す。回避は間に合うが、詠唱する隙がない。


「どんな魔法使いだろうが、魔法さえ撃たせなきゃ、ただの人間だぁ!」


 シーナは距離をとろうと後ろに下がるが、獣人は距離を保つことを許さずに常に距離を詰めてくる。


「.......くっ」


 シーナはブンブンと蹴りを放つが相手は身軽にかわしていき、彼女の心にじわじわと焦りを与えていった。


「このっ!」


 そしてついにシーナは痺れを切らして大振りの蹴りを放ってしまう。


「待ってたぜ!」


 獣人はシーナの隙を逃さなかった。いや、それを待ち望んでいた。


 蹴りをかわしつつ、シーナの懐に入り込む。


「.......しまっ!?」


「死ねぇ!!」


 獣人がシーナの腹にサーベルを突き立てようとする。シーナの回避が追いつかない。


 シーナがやられる、と思った瞬間。


 スパァン!


 獣人のこめかみに風の燕が衝突する。


「あがっ!?」


 獣人はそのまま脳しんとうを起こし、その場に倒れ込んだ。


「お怪我はありませんか?」


 ケイラの援護射撃だった。彼女はまるで指揮をするかのように指を振りながら風の燕を操作している。


「.......ご、ごめんなさい」


「いえ、無事で何よりです」


 俯くシーナにケイラは優しく微笑む。


 シーナが辺りを見渡すと、すでにほとんどの獣人達が地に伏している。それもどうやらケイラの働きのようだった。


「なるほど、ここのボスはてめえだな?」


 すると、リーダーと思われるふさふさしたしっぽの獣人がケイラの前に立つ。


「えーと、そうですね。そんな立派なものでは無いですけれど、ここの防衛は任されていますよ」


 そんな獣人にケイラはいつもの口調で答える。


「ははっ、おもしれぇ。おれはジーク。この1団の(かしら)はってるもんだ。さぁ、タイマンといこうじゃねぇか!」


 そう言ってジークと名乗る獣人は兜を外した。


 中から狼の耳が生えた目つきの悪い青年が現れる。髪は灰色でボサボサとした毛並みだった。


 獣人と一言で言っても顔が完全に獣の者もいれば、ジークのように顔は一般人と大差ないが、耳や尻尾だけが獣である者など、この場にいる獣人だけでも様々のようだ。


「分かりました。それではジークさん、あなたが勝てば皆さんを連れてここから逃げても私を好きにしても構いません。ただし、私が勝てば皆さん武器を下ろして皆さん全員で投降してください」


 するとケイラはにっこりと告げる。


「はぁ!?正気かよてめぇ!?」


 ジークはあんぐりと口を開けながら叫ぶ。


「はい、正気です。一騎打ちとはそういうものでしょう?」


 態度を変えないケイラの姿にジークは困惑している。


 それもそのはずだ。この戦場はケイラが敵をほぼ壊滅させた事でサルヴァン側の方が圧倒的に有利だった。全員を連れての退却は絶望的だろう。


 しかし、ケイラを倒せばそれを受け入れるというのだ。


「.......いいぜ、やってやるよ。後で吠え面かくんじゃねぇぞ?」


「えぇ、もちろんです」

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