此処は何処?私は誰?
魔王歴201年アレフアスタロトの地を中心とする
世界に大魔王が現れた。
突如として世界には魔王軍率いるモンスターが
溢れ、元来住むモンスターをも迫害、
そして支配下に収めていった……
人間と知能の高いモンスターや異種族が異例の
結託、連合軍として応戦するも敗戦、
多くの犠牲を払った……
巨大なる抵抗勢力の連合軍を失った命ある者達は
城を築き国を立ち上げ、精霊の加護の元、
辛うじて生活を営んでいた。
大魔王はその無限なる力を使い、この現代で言う
異世界に留まらずあらゆる世界私達の住む宇宙を
含む世界全てを統治下に収めるべく動き出していた
その無尽蔵な力は空間や隔たりという力の
エネルギーの均衡をも裂き、この世界で言う
次元の壁に亀裂を入れあらゆる知識生命体を
引き込む事に成功、こうして次元に落とされた
人はこの世界では『落ち人』と呼ばれ多くは
魔王軍に引き入れられる事となる。
あらゆる文化、思考、力を手に入れようとする
魔王に相反する者、それは勇者と呼ばれ魔王が
肉体を持つこの世界アレフアスタロトに
集結しつつあった。
均衡を保つべく精霊の計らいもあり動く
『均衡を保つ存在』もこれを世界の危機を
脱するべく魔王配下になる存在を抑える為、
次元の狭間をこれ以上広げないよう力を尽くす。
アスタロトの世界は現代で言う中世の趣きが強く
化学と言うよりは精神世界の色が強く、
魔力なる超能力に近いものが存在する剣と
魔法の世界である。
地球の中にも超能力を持つモノも少なくない、
代表的な生き物といえば、虫である、人間は科学と
いう魔術を使いこなすのに長けた種族だとも言える
この世界は昆虫的な何かが大きく左右している
文化なのかも知れない、なにせ人間も元は
単細胞から始まったモノと言えるからだ。
そして物語は始まる……
僕の名はハク、この世界に来て2年が経った、
今こうして本を書いている、未だ魔王は討伐は
出来てはいない、しかし悠長な事を言っている
場合でも無く……
聞いた話では僕の住んでいる世界の地球からも
人間が落ち人として未だ来ていると言う事を知った
僕はこの世界の概要を説明する為に本を
書いていると言うわけだ。
題名は地球から来たあなたへのバイブル、
『無能力者の戦い方』である。
この世界はおそらく魔法が使えるということは、
この世界においては我々の住む文化とは大きく
未来は違うであろう、火を起こすために便利な
ものを開発する必要もない。
そんな便利グッズ開発の暇があるのなら、
小学生の頃に火を起こす魔法でも覚えなさい!
と親に叱られるであろうと想像も容易い、
なんせ苦労せず火も何処でも起こせるのだから
ある意味、意味のない事である。
乗り物に至っても馬らしい、町の周りには
モンスターがうようよ危なっかしくて道を
作るのも、ままならないのであろう、サバンナの
真ん中で道を作る様なモノだ。
馬の需要が高まるのも理解出来る。
そこいらに草は生えてるし、ガソリンも要らない、
イザって時は食用にもなるからであろう、
車検も無い。
僕はいわゆる普通の人、そしてかなりの
ビビリな人間だ。
趣味は妄想とゲーム、特技は昔、かじった武道と
いった所か、しかしこの世界では特技に
武道なんて言えない……言えるわけは無い、
それは後々わかるであろう。
しかし、降り立った時、僕は異世界に行ったと
しても活躍できる普通の人だと思っていた、
その時が来るまでは……
では語ろう、僕の体験した物語を……
眩しい日差しの夏、ある日、僕はいつもの時間に、
いつもの電車に乗り、いつもの仕事に行く毎日の
日々の中にいた、安定のルーティーンってやつだ。
僕の職業は美容師だ……
仕事が終わり僕は日課のゲームをオンラインで
仲間と共に冒険に出ていた、ゲーム名は
ドラゴンチョイスファンタジー
もうアクションやらロープレやら、謎解きやら
ゴッチャになったゲームであり、大会も多く
開催される程の人気ゲームである。
僕達の仲間はそれの上位組、風の旅団という
チーム名だ、リーダーは乱丸、そりゃもう
格闘ゲームに置いては右に出る者はいないと
噂される人物だ、彼を中心に構成された
ゲーム仲間と言うやつだ。
だがその日は何時もの日常とは違った……
その日はゲーム内でも最強と言われる魔王を倒す
クエストに参加した時だった、魔王が画面に
現れた瞬間、 目の前に大きな空間に亀裂が
入ったのだ、それを見たのが僕が現代にいた最後の
記憶……目が覚めた時から僕の冒険が始まった。
ーー目覚めーー
頭がボーとする……
僕は虚ろな意識の中、ホッペに冷たい感触を
感じ目が覚めた。
「……」
(何だろう頬に冷たい感触がするけど……
救急車の中?確かゲームをしていて……
そう意識が飛んだんだ……)
少し覗く様に目を開け辺りの様子をチラ見する、
そこに映ったのは、まさにゲームで言うゴブリンが
僕のホッペに石斧を当てている。
(ゴブリン?)
(?)
特撮?僕は思った。
何だろう……でも……臭い……
生々しい匂い現代では嗅いだ事がない様だが
本能的に危険な香りを肌で感じる。
そして石斧についている赤く染まった血痕から
明らかに感じる血の匂い。
ギョッとした僕は静かに刺激せず上半身を
起こすも、いまいち危険に慣れていないせいも有り
思わず顔を近づけ石斧を凝視した。
生々しいその石斧は切ると言うより、殴り殺す
という表現がピッタリのような仰々しい武器だった
……僕はゴブリンの顔を恐る恐る見る、その僕を
まるで嘲笑うかのような性格の悪そうな顔、
瞬時にこれは特撮では無い殺気を感じる僕。
怖いながらもまさかな?なんて思った
僕は声を掛けてみた、
「……えっと僕に何かご用ですか?」
ゴブリンは僕を無視して仲間に話しかけていた。
ゴブリンA「コイツ異世界の落ち人だよな?確か、
見つけたら魔王様の元に連れて行けと
言われてたよな」
ゴブリンB「しかし色も白くて美味そうだど?
食っちまうか?」
「ギョギョギョ!」恐らく生きて来た中で、
いや、これから生きたとしても自分の口から
「ギョギョギョ」何て言葉を発する事が
ありますか?いや僕には今あった!ありましたよ!
僕は思わず語りかけた「えーー!食べても
美味くないし!た、た、た、食べるなら、
そこに飛び跳ねてるウサギ、
つ……つ、つ、捕まえて調理してあげますよ!」
ゴブリンと目が合うが向こうは至って冷静だ……
真顔で喋るゴブリンの顔で僕は一瞬にして悟った、
いや悟らざるを得なかったのだった。
取り敢えず本気だし!この人達?ゴブリン?
あぁもうどっちでもいいや
飛びかかるゴブリン慌てて避ける僕、
意を決し立ち向かう決心をした僕は石斧を避けた、
身を華麗とは程遠い挙動で避け隙を見のがさない
「隙あり!」
その瞬間、渾身の力を込めた蹴りをゴブリンの
豊満なメタボの腹に叩き込んだ!
「ふっ……踠き苦しむがいい」
(あゝ部活やってて良かった……先生ありがとう
部活の仲間よ、ありがとう僕、役にたてたよ……
がむばったよ)
だが……よく見ると渾身虚しく、これっぽっちも
効いた様子が……ななな……い!
蹴りで付いた腹の土を軽く手で払うゴブリン、
口がアングリと開きっぱなしの僕
「えーっ!」というか僕自身の足が痛い!
ジンジンと足が痛む、まるで棍棒でも
蹴ったような痛みが走る。
よく見るとゴブリンてゲームの中でもかなり
弱い部類にはいる種族ですら外人の筋トレ
やりすぎだろー!て位、
ムキマッチョですねええええ(笑)
これは効かない……わな
……これは人間がゴリラに勝とうと
言うものではないか。
呆然とする僕に野生の雄叫びをあげながら
襲いかかるゴブリン!
「はわわわ……」
華麗とは程遠い無様に逃げる僕に対し二手、三手と
その力に任せた野蛮な斧が轟音を上げながら僕を
ジワり、ジワり……追い詰める。
足が腕が恐怖で上手く動かない!最早、芋虫を
連想させる逃げ方に追い詰められる僕
(駄目だ!もう駄目!化けて出たる!復讐じゃ!
ゴブリンがナンボのもんじゃい!)
目をつぶり、諦めかけた正にその瞬間!
「ゴフっ」「プギャ!」
ドタドタと倒れるゴブリン達、何が起こったのか
見るのが怖い……
まさか出来過ぎのドラマの展開を心の何処かで
期待しながら、そっと目を開けた、そして見た!
ゴブリンの後ろに颯爽と現れたるは精悍な顔に
王者が持つに相応わしい威厳に満ち輝く
剣を携えた若者、
そして黒い出で立ちの見るからに
魔法使いらしい女の子
※怖そうな。
反対に白い服の魔法使い、回復役といった
ところかの女の子。
※黒とは逆な優しそうな女の子。
さらにゴリラにも劣らない筋力をもっている……
鎧で身を固めた大きな男、剣士以外にないでしょう
これは!……王道の勇者様御一行やん!
まごう事なき御一行様やん!
ゲームのキャラがそのまんま出てきた現実にも
困惑した。夢で見た……いや嘘です夢には
見てないが妄想はした、いや誰もが見たい!
と思わずにはいられない勇者一行である。
僕は勇者様御一行に救われたのであった。
ーーこの出会いが僕の行先を大きく決める事になる