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ノナビアス・サーガ  作者: 谷兼天慈
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第6章「青い惑星の上で」第6話

 そして、ついにやってきた、都民権獲得異議会の日。

 ノンたちはダートンに連れられて、ホープ・シティのほぼ中央に位置する場所にある中央議事堂へと向かった。

「意外とデカイなあ」

 ヤスオがため息をついた。

 どうやら彼にしては珍しく緊張しているらしかった。

 それは彼だけじゃない。みんな大なり小なり緊張しているようだった。

 そんな中、ノンだけは平然とした顔で議事堂に入って行った。

 議事堂内には都民全員が座っているようだった。

 ダートンは200人程度の人口だと言っていたが、ざっと数えてみて、それくらいの人数が議事堂内にいるようだ。

 議事堂は円形のすり鉢式の広間になっており、中央に演説のための壇上がある。その近くに特別席が設えてあり、周りの席に都民が座っているという状況だった。ノンたちはダートンにその中央の壇上に案内された。

 すると、中央に立ったダートンが発言する。

「都民の皆さん、先触れによりご周知のことと思いますが、この14名の方々はここより500億光年も離れた銀河系という星雲の中の太陽系に属している地球という惑星から来られたのです。目的は第2の地球を探し出してそこの住人になること。そこで本日、我々はこの方々をこの都市の都民になることを許すかどうかを決定したいと思います。発言は自由です。ですが、議長チェアマンであるこの私に従って発言をしてください」

「はい、チェアマン、発言を要求します」

 すると、あたりの静けさを破って、一人の青年が立ち上がった。

「どうぞ」

 青年は立ち上がると静かに言い始めた。

「正直言うと、僕は認めたくないのです。あなた方がどういった人達かがわからないので、はい、いいですよとはなかなか言えないのです。これは僕だけじゃなく、ほとんどの都民がそう思っていると思います。不安なんですよ」

 彼の言葉に議事堂の都民たちが控えめだが「そうだ、そうだ」と言い始めた。

 それを静かに見つめるノン。そして、多少、不安げになっているノンとトミー以外の仲間たち。

 するとダートンが提案する。

「では、この方々がどういった人達かを、彼らの意見を聞いて判断してください」

 そして、彼はノンを振り返る。

「リーダー・ノン、お話を」

 ダートンはノンを中央の壇上に案内する。

 ノンはダートンに頷いて見せると壇上にあがる。

 彼女はゆっくりと議事堂内を眺め渡すと静かに語り始めた。

「我々は希望号という宇宙船に乗り、第2の故郷バースプレイスを探しに旅立ちました。家族を捨て、バースプレイスを捨て、新しい夢と希望を求めて旅立ったのです。気の遠くなるような時間、我々はどれほど地球を飛び出してきたことを後悔したことか。もう、地球のような星はないのか、人間が住む星は地球以外存在しないのかと絶望しかけたその時、ついに見つけたのです、このジルベスター星を。その時の我々の喜びをどうやったらあなた方にわかってもらえるのでしょう。我々はもう疲れました。安住の地が欲しいのです」

 ノンはそこでいったん言葉を切った。

 彼女の良心に訴えるような話し方がよかったのか、人々の表情が同情の色に変化していくのがわかった。

 涙さえ流している者もいた。

 恐らく、ノンの声音には人々を洗脳するような力があるのだろう。

 それだけの力が彼女にはあるのだ。

「それに、私たちの新しい血が入ることはあなた方にも価値あるものだと思います。混血は優秀になるとも言いますしね。ですから、積極的に新しい人種を受け入れることもこの星の未来の為にも良いことだと思いますよ」

 それが決定打となったのだろう。

 もはや完全にノンの思惑通りに都民の心は変わっていったようだった。

 ノンたちを受け入れるという彼らのコールが議事堂に響いていった。

 それを見てダートンは感心したようにうなずいていた。

 こうして希望号の乗組員たちはジルベスター星の住人となったのだった。


 その後、間もなくしてノンはスプリンガーと結婚することとなった。

 ノンとしては結婚などするつもりはなかったのだが、スプリンガーがとにかく結婚式を挙げたいと強く望んだせいである。

 ジルベスターでは婚姻制度というものが存在していなかったので、結婚式というものがどういったものか理解はできないようだった。

 スプリンガーの母星は地球とそう変わらない生活様式だったので、スブリンガーとしてはどうしても愛する者同士は結婚で互いが他の者と関わらないという関係性を誇示したいと思っているようだった。

 だが、この結婚式が思いのほか、ジルベスター星人の中で特別な儀式となっていったようで、特に女性たちが我も我もと結婚式を挙げたがるようになったのだ。

 とはいえ、人々の倫理観はなかなか変えられるものでもなく、式は式として挙げることは挙げるのだが、複数と関係を結ぶという彼らの今までの常識はなかなか覆されることはなかった。ただ、地球人と違うところは、それで揉め事が起きるということはなかったようだが。

 人々はこれからも子を成す為に多くの相手と関係をもっていくことは捨てられない要項であるようだった。

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