第6章「青い惑星の上で」第5話
ミーユたちがジルベスターにすっかりなじむまでに、彼らにもそれなりの出来事があったことは想像に難くない。
ふたつの種族が交わるまでの紆余曲折はすべての世界で繰り広げられるものだからだ。
地球時間西暦12511年、125世紀のとある日。地球より500億光年離れたとある場所にその太陽系はひっそりと存在していた。まるで、故郷の太陽系のようなそんな懐かしさを感じる太陽系だ。その太陽系のとある惑星が、重力、質量、大気の濃さ、大陸と海との比率、何もかもがかつての故郷である地球とそっくりだったのだ。
「さすがに陸地の地形は地球とは違っているけれどね」
そう言ったのはノブオだった。
「感激だなあ。本当に地球と同じような星が見つかるなんて」
興奮した声を上げているのはカズオだ。
だが、そんな彼を見てアキオが顔をしかめた。
「しかし、そうも感激していられないぜ。あくまでもここは未開の惑星だ。手放しで喜んでばかりもいられない。慎重にならなければ」
「そうね、気をつけなければね」
ミーユがアキオに賛同する。
その言葉にカズオはしゅんとしたが、その微妙な空気を破ったのがシンゾウだ。
「原住民がいるのかなあ。揉めてしまうのもイヤだよね。戦闘とかになったらどうしよう。そうなったら何とか和解できればいいんだけど」
「バッカねえ。原住民と会わないうちからそんなこと心配してどうするのよ」
ケイコが鼻で笑うと、シンゾウは別にむっとするでもなく、ぱあっと表情を輝かせて言った。
「まあ、でも、そんな時にはきっとノンが何とかしてくれるだろうしね」
「それはともかく……」
のんびりとしたシンゾウの態度を無視してノンが続ける。
「ざっと地上を精査してみても人類型の生命体は見つからないけれど、もしかしたら地下都市というものが存在するかもしれないから、まずは地上に下りる前に惑星に人が存在しているのか、あらゆる通信網を開いて呼びかけてみましょう」
と、ノンがそう言ったとたん、船内に何らかの通信が受信されたようだ。
「キャプテン・ノン、どうやらこの惑星のトップからの通信のようです。回線を開きますか」
ジュークの言葉にノンは頷いて見せた。
「ええ、お願い」
「了解しました」
そして、希望号内に聞いた事のない言語が響き渡る。
だが、それでも彼らはその言語が理解できた。
それは、彼らの身体に埋められたチップにより、難解な言語に遭遇しても理解できるようになっていたからだ。そのチップも実はジュークの開発したもので、彼らがカプセルで眠っている間に施されたものだったのだ。
話す場合もそのチップにより、直接言語中枢に働きかけて喋れるようになっている。
もっとも、彼らは皆優秀であるから、しばらくすればすぐにチップの助けなしで言語を理解したり話せたりするようになると思うのだが。
「こちらの惑星はジルベスター。私はこの星の総統ダートン・キラーだ。そちらは何の目的でこの星にやってきたのかお聞かせ願いたい」
意外と若い声が響いた。
もしかしたらノンたちとそんなに年齢差はないのかもしれない。
とはいえ、ノンたちもコールドスリープにより、実際の年齢よりはとんでもなく年を取ってはいるのだが。
「こちらはここより500億光年離れた太陽系の地球という惑星からきた旅行者です。私はこの宇宙船のキャプテンでノンと言います。私たちは地球と同じ環境の惑星に移住する為にやってきました。できれは私たちを受け入れてもらいたいのですが、如何なものでしょう」
ノンは単刀直入にそう言った。
向こうの通信機からは即答はない。
「わかりました。移住を受け入れるかはまだ即答はできませんが、とりあえずはこちらまで来ていただけますか。直接お会いして話し合いましょう」
「もちろんです。ありがとうございます」
そして、希望号の乗組員たちはジルベスター星に降り立ったのだった。
希望号は湖の中に沈めることとし、ノンや仲間たちはジルベスターの地下都市へと転送された。
「ジューク、それでは行ってきます。このままこの星に移住できることを祈ってて下さい」
「はい、希望号の小さなリーダー、ノン。いってらっしゃい。そして、ごきげんよう、希望号の小さな乗組員の方々。ご健闘を祈ります」
彼のその言葉はチラチラと転送されていく彼らの耳には届かなかっただろう。
そして彼らは地下都市の転送室へと転送されたのだった。
それからノンたちは早速ダートンの元へと連れて行かれ、彼の執務室で会見えることとなった。
「ようこそジルベスターへ。私がこの星の総統ダートン・キラーです」
「招いてくださってありがとうございます。私が宇宙船希望号のキャプテンのノンです」
二人のトップは握手をした。
不思議なことに、住む世界が違っていたとしても挨拶は同じなのだ。
もっとも、その理由を他の者は気づかぬとしてもノンとトミーは知ってはいるのだが。それはここで語られることではない。
「さっそくですが、私はこの星の指導者として、あなた方を受け入れるかどうかについて一つ返事で承諾するというわけにはいきません。それは御理解いただけると思います」
「ええ、それはもちろんです。仲間にしてくれと言われて、どんな相手かもわからないのに受け入れるのも馬鹿な考えですからね」
ノンはにっこりしながらそう言い、続けた。
「それでは聞きますが、どうすれば我々を受け入れてくださいますか」
「正直、私個人としてはあなた方を受け入れたいと思っています」
ダートンはそう言うと、チラリとミーユに視線を向けた。
その様子にノンは気づいていたが、素知らぬ顔で黙っていた。
「ですが、やはりここは都民にも聞いてみなければなりません。とりあえず、あなた方の存在とその容貌は全都民にこれから伝えます。我々の人口は本当に少なくて200名程しかいないのです。ですから、彼らの考えもそれほど待たずにわかると思います。なので、一週間後にあなた方の都民権獲得異議会を開催しますので、そこで都民の考え、そして、あなた方の考えを披露するということにしましょう。それでよろしいでしょうか」
「望むところです」
「では一週間後ということで。それまでは、あなた方は私の私邸に滞在してください」




