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ノナビアス・サーガ  作者: 谷兼天慈
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第5章「コンピューター・ジューク」第5話

 アメーシスの都市内で見たことのない人物が目撃された。

「小さい子供だった」という者もあり「金髪でひどく美しい子供だった」という者もあり、そして、目撃者たちのすべてが「何だか不思議な子供だったな」と言う。

 とはいえ、移民者は多く、すべての人々がすべての者を把握しているわけではない。当然、互いに知らない相手というのは出てくるものだ。実際、その不思議な子供にしても目撃していない者もいるからだ。

 そういうこともあり、それほどその子供をは要視されることもなかった。

 ただ、目撃した人々は、ひどく気になって仕方ないと口々に言っていたのだ。

 何か言いようのない胸騒ぎのようなものを感じて、何となく不快感を抱いたという、そんな感じで。

 すると、ある時、都市に異変が起きだした。

 それは突然起きた。

 先程まで談笑していた相手がいきなり倒れたのだ。

 そして、それは瞬く間に多くの人々に広まっていった。

「いったい何が起きているのだ」

 ドルゴは、息子であるモーゼスを前に質問を投げかける。

 ドルゴは医師の一人だ。

 医師団のトップである彼は、人々に蔓延している病について徹底的に調べたのだが、どうしても原因が判明しない。

 どんなに検査をしても、原因となるものが見つからないのだ。

 しかもこの感染力は恐ろしいほどの早さで広がりつつあった。

「お父さん、これはもう私達の力ではどうしようもありません。他のコンピューター達と連絡を取って、彼らの頭脳全てを繋いででも原因究明に取り掛からないと、本当に取り返しのつかない事態になりかねないでしょう」

「わかった。他の船への連絡を頼む」

 モーゼスは亜空間チャネルを使ってSOSを飛ばした。

 だが、そのSOSに応えた仲間は一人しかいなかった。

 それがジュークだったのである。

 ジュークはモーゼスたちの置かれた状況をジューケイダーに伝えた。

 ジューケイダーたちは都市建設を始めたばかりで、まだ落ち着いたところまでいっていなかった。

 だが、仲間たちの危機を放っておけるはずもなく、都市建設はそのまま続けるということで、宇宙船でドルゴ達を助けに行くことにした。

 もちろん、ほとんどの人々は地上に残し、ジューケイダーと少人数で向うことにし、彼らは取るものも取り敢えず問題の場所へと飛んだのだ。

 ソフィーアは地上に残った。

 きっと問題を早期に解決して戻ってくると信じて、彼女は愛する人を送り出したのだ。


 希望号がアメーシスに向っているその時、次々と人々が病に倒れ、とうとうモーゼスの父も倒れた。

 モーゼスはそれを心中穏やかではいられない思いで見ているしかなかった。

 己の不甲斐なさをまざまざと突きつけられ、自分に肉体があったのなら、歯噛みしたことだろう。

「くやしいか」

「!!」

 突然、モーゼスの前に一人の少女が立っていた。

 その気配を彼は感じることもできなかった。

 モーゼスの機械の目は幼い姿をした金髪で青い瞳の少女を映していた。

「あなたは誰ですか」

 モーゼスはゆっくりとそう問いかけた。

 この少女だ。

 人々が噂をしていた少女はこの少女に間違いない。

 どうやら普通の人間ではないらしい。

 彼女は突然、何もない空間から現れたからだ。

 モーゼスはもう一度問う。

「あなたは、誰、ですか」

 少女はひどく美しい顔をしていた。

 幼い姿をしているが、どうにかすると、妖艶で大人な女性にも見える。

 そんな少女の口がアルカイックスマイルに変化する。

 美しいが酷く歪に見える。

「この都市の生きとし生ける者共は皆死ぬ」

 そんな少女の口から恐ろしい言葉が紡がれる。

「ここに駆け付けようとしている者たちも同じ運命だ」

「なぜ、そんなことを!」

「我は人間が嫌いだからだ。奴らは生きる価値のないものだ」

「なっ…!!」

 コンピューターであるモーゼスは滅多なことで感情を爆発させることは今までになかった。

 だが、今この時、彼は激しい憤りを感じていた。

 そんなモーゼスの心中など知らぬとばかり、少女は言葉を続けた。

「たまたまこの宙域に差し掛かったところ、以前このあたりにきた時とは違い、人間どもがたむろしているではないか。ここは我の気に入りの場所だったのだ。それを人間どもが汚した。掃討するのは当たり前のことだ」

 なんと!

 そんな身勝手な理由で父たちは死ななければならなかったのか。

 モーゼスは怒った。

「お前のことも消そうと思ったのだが、気が変わった。このままたった一人、この星で生きていくがいい。我はもうこの星には来ぬ。好きなようにすればいい」

 そして、少女はその金色の髪をなびかせ、清冽な輝きをした青い瞳をモーゼスに向けると、もう一度ニッコリと微笑んでから唐突にその場から消え去った。

 しばらくモーゼスは呆然としていた。

 すると、少女が言っていた言葉を思い出し、我に返った。

 そうだ。

 今、こちらに向かっている船がある。

 自分が助けを求めたせいで、彼らまでこの得体のしれない病に罹ることを阻止せねば。

 だが、なぜか亜空間チャンネルは開かず、ジュークに繋がることができなかった。

 打つ手がなかった。

 モーゼスは絶望した。

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