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ノナビアス・サーガ  作者: 谷兼天慈
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第5章「コンピューター・ジューク」第4話

 それから18年の歳月が過ぎ、いよいよジュークの身体が冷凍睡眠されることとなった。

 あれから毎日のようにジュークの両親は彼らの息子の相手をして過ごした。

 18年という歳月をそのまま過ごしたこともあり、両親はそれなりに年を取り、もう若者とはいえない二人であったが、後悔はしてないようだ。

 だが、ジューケイダーは少なからず思う所はあったようだ。

 息子の身体が冷凍睡眠に入る前に「こんなことを息子であるおまえに聞いてもらうのも心苦しいのだが」という言葉とともに己の心の内を吐露したのだ。

「ソフィーアには絶対に聞かせたくないことなのだが、私は彼女に申し訳なかったと思うのだ」

 それは、やはり自分たちの子供を犠牲にしてしまったことであり、たとえ、子供本人がまったく気にしていなくとも、こればかりはそういう問題ではなく、親として子に対する負い目というものがどうしても拭えない、つまりは自分たちの心の問題でもあったのだ。

「せめて、そのどうしようもない気持ちから逃れたいと、情けないことなのだが、私は彼女にジュークに兄弟を作ってやりたいのだと言ったのだが、彼女にはそれは絶対に嫌だと拒否されたよ」

 ジュークはその話を聞いた後、ジューケイダーが言ったことは言わずに、最後の会話として母親に話を振ってみた。

「お母さんはもう子供を作る気はないのですか?」

「うーん、そうね。いらないわね。私の子供はあなた一人でいいと思ってるの」

 彼女は弱々しく笑った。

 夫であるジューケイダーの気持ちも痛いほどわかるし、彼に対してもっと子供を産んであげたかったという気持ちも嘘ではない。けれど、どうしても自分のどうしようもない気持ちをコントロールできない。

「私も彼には申し訳ないと思っているのよ。結婚前は普通にたくさんあの人に子供を産んであげたいって思っていたもの。でも、あなたがこんなことになってしまって……」

 単純に彼女は怖いと思ってしまったのだ。

 初めての子を取り上げられてしまった。その気持ちがどうしても拭えなくて。

 わかってはいる。理不尽に取り上げられたわけではないし、こうやって生身対生身の触れ合いはなくとも、会話はできるわけで、心の触れ合いはちゃんとできている。

 だが、それでも。

「どうしようもないとはわかっていてもね。やっぱりね、生きとし生ける者は触感も大切なんだわとあなたとのことで痛感したの。もちろん、次に生まれる子まであなたのようになるとは限らないと、そうわかっていてもね、どうしても怖くて踏み出せなかったの。弱い母親でごめんなさいね」

 彼女は心から息子に謝った。

「お母さん、その謝罪はお父さんに言うべきですよ」

「そうね」

「今はまだ無理かもしれませんが、いつかその気持ちを正直にお父さんに話してあげてくださいね」

「ええ、わかったわ」

 そうして、ジュークの身体は永久冷凍睡眠へとされていったのだった。


 ジュークは成人の身体を半永久的に凍結された。形あるものではあるから、永遠にそのまま存在するということも無理であろう。だが、長く存在し続ける為に彼の身体は冷凍されたのだ。

 そして、同時に彼の相手をしていた両親もやっと冷凍睡眠に入ることとなる。

 これより長きに渡って彼らは永住の星が見つかるまで眠りにつくこととなったのだ。

 だが、一人ジュークは誰の気配もなくなった船内で過ごすことになる。

 何年かに一度は誰かが目覚めてということだったようだが、ジュークはそれを断った。

 何か非常事態が起きた場合に限り、人々は目的地につくまでは眠っててほしいということで。

 両親は最初は息子の孤独な期間を憂いたのだが、不思議とジュークは大丈夫だと感じていた。寂しいという気持ちが今の彼には想像もつかなかったし、もし、そういった感情に囚われたとしても、亜空間ネットワークで繋がった他のコンピューター達と会話をしようと思えばできないこともなかったからだ。

 そして、ジュークは長い長い時間を様々なことを考え続けた。

 それは恐ろしくも長い時間であった。

 だが、それでも彼は飽きることなく考え続けた。

 時には他の船のコンピューターと会話を試みた。

 とはいえ、一隻以外は対話を拒絶された。

 拒絶というか、二度と交わることのないということもあり、対話をしても意味がないと、どちらかというとコンピューター本人より船内の人間たちがそう思ったようだった。

 さすがに、ジューケイダーの親友が乗り込んでいる船だけは違う考えだったようで、その船のコンピューター・モーゼスは快く会話に応えてくれた。それに、かなり近い宙域を進んでいたようでもあったので。

 そんな感じで長い長い歳月が経った。

 どれくらいの歳月が経ったのだろうか。

 ジュークたちの船がいよいよ永住の地となりうる星を探し当てたのだ。

 それは小さな太陽系の三番目の惑星。

 青い星だった。

 そして、ジュークたちの船が永住できそうな星に辿り着いた同じ頃、モーゼスたちの宇宙船も比較的近くの宙域に永住の星を見つけたようだった。

 ジュークたちの船よりモーゼスたちの方が先に都市を建造していた。都市は宇宙船をそのまま利用する建造の仕方で、宇宙船自体はもう飛び立てない。その代わり、救命艇のような宇宙船は多数あり、その宇宙船で宇宙に出る事も可能だった。

 モーゼスたちは自分たちの星にアメーシスと名付けた。

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