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スーパーダンジョンマスター!!!  作者: PMK
超音速の死闘、超龍勇者ドラグブレイバー!
9/35

蠢動

「サウスマウントが消息不明だと…!?」


 神授帝国軍軍令部に入った第一報は、場を震撼させた。

「どこだ!」


「航路からして連合国国境、絶望の荒野付近です!いまだ通信途絶!」


「連合軍の攻撃ではないのか!?大使館へは!?」


「もう向かってます!」


「…ダメールの無能め、どこまで祟る…ひと艦たりとも無駄な艦など無いのだぞ…」


「乗員の数は?」


「総員550名です…」


「ダメール退役大将にはまだ話を伏せておけよ!クソ、遺族年金枠がまた膨れる…!今のうちに弔問マニュアルを熟読させておけ!!」


「そんな言いかた…」


「余計な茶々を入れるひまがあるなら、さっさとやらんか!!」


「は、はい!」


「ぬるま湯につかれる立場か、まったく…参謀本部に向かうぞ!」



 ◇



「神託が下りました。『完全なる死者の復活』の術式が、世界の何処かで行われた模様」


 神託の巫女の言葉に、おお…、と、どよめきが溢れた。

「詳細、極大規模ダブル、200人以上のサクリファイス(生贄)を感知」


「でかいな…」


「ついに人の手は、神に至ろうというのか…」


「合唱魔術でどうにか出来るレベルではない。使いどころが難しいぞ」


「大きな魔力変動を感知できた場所はあるのか?」


「小諸国ならいい、帝国内だと厄介だぞ…」


「探索チームの編成、即日始めろ!ブレイバーを使ってもいい!」


「サクリファイスの量が量だ!痕跡はあるはずだ!」


 神託の巫女は続ける。

「人は着実に、真理への道を進んでおります」


「日々、精進に邁進することを、神は人に望んでおります」


「真理と共にあらんことを」


『真理と共にあらんことを』


 皆が一斉に口を閉ざし、唱和する。彼らは巫女に向かい深々とお辞儀をした。



 ◇



 突然降ってわいた神授帝国側からの釈明要求に、寝耳に水の連合国側は驚いた。

 自分たちの不備で失った空中巡洋艦を押し立てた『連合の攻撃ではないか』などと言ういいがかりには、憤懣(ふんまん)やるかたなしといったところであった。


 だが、現時点では無実の確かな証拠を提示することもできず、強行な態度を取ろうにも万が一開戦、総力戦になりでもしたら、国力に劣る連合国側の不利は明らかである。




「と、まあこのように、帝国としては連合軍に協力を求めることになった次第ですな」


「協力ね」


 帝国特使に説明を受ける西部国境方面軍防衛大隊長、アミール大佐は不機嫌そうな声を出す。



 豊満な肉体と美貌を持つ、ウェーブの掛かった金髪の女性士官だ。女の武器を使って成り上がったなどと陰で揶揄するものもいたが、褐色の顔には戦傷とおぼしき大きな傷が、額から頬にかけて伸びている。ハッタリの効く強面になり、言いよる男も少なくなる。アミールにとってはなかなか便利な傷であった。



「この落下予測地点、こちらの国境内なのでは?」


「なに、調査のためです。相互に乗り入れ、両国が協調、協力して事態に取り組もうではありませんか」


「いけしゃあしゃあとよく言う」


 あけすけなアミールの言葉に、特使は顔をひきつらせた。


「…連合ご自慢のデミブレイバー隊である程度の状況をつかんでいただければ、こちらもアンジール・レコンを飛ばすことが出来ます。なにせデミブレイバーと違って、運用に気を使う機体ですからな」


「われわれに露払いをしろ、と貴君は言っているのだな?」


「…滅相もない」


「ふん」


 アミールはひらひらと、特使に出ていくようにうながす。

 特使は顔をひきつらせながら一礼して、執務室を出ていった。ドアの向こうで壁か何かを蹴り飛ばす音がした。




(事故であればそれで良い)


(だがそうでないとしたら、まともに攻撃などしようもない高高度に位置している、帝国空中巡洋艦を墜とした()()()がそこにいることになるな…)


 アミールは胸の内ポケットからシガレットケースを取り出し、思案を巡らす。


(魔術院から、大規模魔術の痕跡探査と大量失踪・殺害事案の調査依頼が来ていたな。…どうにも嫌な予感がする)



「…勇者殿はどうしている?」


 起立して同席していた、眼鏡を掛けた副官の男に尋ねる。

「部屋でゴロゴロしていますな。どうもしておりません」


「ナシをつけておけ。この案件、こじれるかもしれん」


「…あの獅子身中の虫を、お使いになるのですか?制御が効くかどうか…」


「…やる気はなくとも退屈している奴にとっては、魅力のある話だろうよ。餌でうまく釣り出せば良い」



 大きなオイルライターで紙巻き煙草に火をつけながら、アミールは、国境軍預かりとなっている少年のことを思い出す。

(馬鹿なのか、馬鹿のふりをしているのか)


(馬鹿のふりをしている馬鹿のようにも見えるが)


 『勇者』扱いされている少年。アミールはまわりのものほど、彼のことを低く見てはいなかった。


 思案げに煙を天井に向けて大きく吹き出した。



「…兵は決して突出させるな。デミブレイバーゴブリンは重装盾装備、最悪でも偵察小隊の犠牲のみで留めねばならん。…強行偵察型ゴブリンを先行させろ。外様連中から志願者を募り、先にボーナスを出しておけ」


「はっ!」


 副官が退出する。



「最近の西部方面はどことも小競り合いもなく退屈していたところだ。空中巡洋艦を墜とす魔術使い…攻略不能級を狙えるほどの、強力な新規ダンジョンかもしれんな」


 煙草の煙で、ポカリと輪を作った。アミールはひとり、凶悪な笑みを浮かべる。


「血が騒ぐじゃないか。悪くない」

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