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スーパーダンジョンマスター!!!  作者: PMK
超音速の死闘、超龍勇者ドラグブレイバー!
22/35

決戦、ライオブレイカー vs 超龍勇者ドラグブレイバー!

 フィッシャー曹長のゴブリンがピピン伍長を慎重に、ゆっくりと大破機から引きずり出す。

 デミブレイバーゴブリンの膂力で強引に引き抜いたら、ピピンの引っかかった部分が大変なことになることだろう。

 子供を抱き上げるように両脇に手を差し込み、彼をだらんと持ち上げた。



「…気づいたか?」


 ピピンは呆けた顔で、何度か目をしばたかせる。

 そして焦点の合わない瞳をフィッシャーに向けると、ボソリと呟いた。


「…見捨てないで…」



 フィッシャーは答えずに、そっとピピンを地面に置いた。

 ピピンはその場にへたり込む。



 ハッチを開け放ったままの機体に膝をつかせ、彼の肩をゴブリンの手でドンと叩いた。ハッチを開けたままのゴブリンの操縦席から、放心したピピンをじっと見つめる。

「頑張ったな」


 ピピンは情けないような、泣き出したいような、そんな顔をした。


 フィッシャーは気に留めずに、背を向けゴブリンのハッチを閉める。

『立てるな?』


「…はい」




 突如、天から降り注いだ光の筋が、森の中を通過する。

 巻き起こった熱波と爆発に森の木々が揺れた。


『なんだ!?』


「熱っつ!!」



 熱波に煽られ、ピピンがよろめいた。高熱がピピンの皮膚を焼く。



『ははは!踏んだり蹴ったりだな!ピピン伍長!』


 ピピンは赤く腫れた顔を抑えたが、からかうフィッシャーに向かって絞り出すように叫んだ。

「まだやれます!!」


『その意気だ。脱出するぞ!』


 一喝したフィッシャーは、ピピンに聞こえないように、操縦席でぼやく。

「…なんでもありだなここは…」


 ここは危険だ。知らぬこととは言え彼らはマルチプルの、ダンジョンの怒りを買った。二人は急いで森を抜けようと、その場から駆け出した。




 彼らは意気揚々と、ピピンは息を切らせて森を抜けた。

 乾いた空気と風が出迎える。

 フィッシャー機はなにかを探すようにあたりを見回した。


 なにかが地面に落ちている。フィッシャーは探した何かとは違うものが、そこにあることに気づく。



 そこにあったのは、無残に破壊されたマユタ軍曹のゴブリンだった。


 二人はその場で、呆然と立ちすくんだ。




 我に返ったフィッシャーは、叫んだ。

『…マユタ!!』



 ◇



 荒野を駆けるライオブレイカーの頭上を光の束が通過した。

 振り返ると、光線は森の中央を薙ぎ、火柱を上げている。…ダンジョンのある方角だ。


 苛立たしげにライオブレイカーは怒鳴る。

「くそっ!!被害は!?」


『至近弾ですがダンジョンからは逸れました。損害ありません』


「…そうか」


 安堵し、そしてつぶやく。


「…良し、敵はあそこか」


 透明なままのライオブレイカーは土煙を上げて止まる。そして頭上を見上げた。



 モニターアイを通して、センサーと電脳が敵との距離を割り出す。

 敵の位置は巡洋艦の時と同じ、高度2000メートル付近のようだ。…ただ、目標があまりに小さい。


(人型サイズなのか?)


 ライオシューターの射程内ではあるが、これは流石に当たるとは思えない。

 だが、このまま放って置くわけにはいかない。第二撃がダンジョンに直撃したら二人が危ない。

 自分が奴の目を引き、相手をせねばならない。



 この距離では当たらないのなら、当たる距離まで行くまでだ。



「ダンジョン、透明化は解除できるか?」


『可能です。【ディスペル・マジック(魔法解除)】を使用しますか?』


「…待て。準備がある」



 ライオブレイカーは透明のまま変身ポーズを取った。

「チェンジ!ファイナルフォーム!!」




「イグニッション!!」

ディスペル・マジック(魔法解除)】によって姿を表したライオブレイカー・ファイナルフォームは、背部の宇宙用メインスラスターを点火(イグニッション)する。


 轟音とともに燃える推進剤の白煙が、周囲にモウモウと立ち込める。


 生み出された推力によって、ライオブレイカーは徐々に浮き上がっていく。

 ライオブレイカーはスラスターを偏向調整し、上を見上げた。

 両手をゆっくりと天に向け、砲口の向きを揃える。


 各部スラスターを吹かして姿勢を保つ。白煙を引きながら、ライオブレイカーは徐々に加速しつつ地上を飛び立った。



 ◇



 白煙に気づいたドラグブレイバーは、その光景に流石に目を疑う。

『…なんだ?ロケット発射?ダンジョンが?』


 赤い龍眼が細まり、地上の様子を確認する。



 そこには黒いロボット兵器がいた。

 立ち込める白煙を背負い、こちらに向かってきている。

 ステルス爆撃機を思わせる角ばった上半身、そこに輝く赤い光。

 そして腕を模したような連装砲が機体の両側2基。それがじっとドラグブレイバーを狙っているのが見えた。


『…ダンジョンがブレイバーを持っているのかよ!?』


 ドラグブレイバーは慌てて、上空への加速を開始した。




 ドラグブレイバーは十分な加速を得ると、空中に弧を描いて反転し、落下加速しながら飛来する黒いブレイバーを正面に見据える。


『うはは!物理法則で飛んでる人がさ!インチキ(チート)機動に勝てるわけ無いだろ!』


 ドラグブレイバーの頭部が開くと、胸部よりも小型の砲口が現れる。

『喰らえよ!【ドラゴン・ロア(龍の咆哮)!】』


 頭部砲口が眩しく発光し、一条の光線が正面の黒いブレイバーめがけて発射された。



 ◇



 ライオブレイカーは脚部の姿勢制御スラスターを急激に吹かした。

 迫り来る破壊の光線を体を捻ってなんとか躱し、両手の腕部五連装ビーム砲を突っ込んでくる正面の相手に向ける。


「ディストラッシャー・リミテッド!」


 決戦兵器ディストラッシャーは、あまりの出力に冷却と砲身劣化が追いつかない欠陥兵器…使い捨て武器だ。フル出力で撃てはすぐに使い物にならなくなってしまう。

 そしてライオシューターのときのような威力強化が適用されているのだとしたら、一発で溶け落ちても不思議ではない。

 ライオブレイカーは出力をギリギリまで下げ、ライオシューター程度の威力を維持するよう電脳で調整することに成功していた。

 これでも十分な威力だろう。


「一番から十番!一斉発射!」


 両手から放たれた十の光弾は、散弾やスマート弾のように広がって、正面の蒼い敵機を完全にとらえたかに見えた。


 


 が、相手は空中に明らかにおかしい軌道を描いた。



 敵は、加速しながら空中で()()に曲がったのだ。



「なにっ!?」



 こちらのはなった光弾群は、その機動を捕らえることができず空を切る。

 そのまま相手は弧を描いて横切る防御機動、ビーム機動に入った。背後に回り込むつもりだ。


「どうなってる!?」


 ライオブレイカーはスラスターを吹かし追うが、相手の運動性は高い。このままでは背後に付かれるだろう。

 速度は音速を超えている。距離があり横切る機動をしている相手に、この鈍重な五連装ビーム砲が当たるとは思えなかった。焦燥が胸を突く。



 女性の声が、おずおずと話しかけてきた。体内からの声はこんな状況でもよく聞こえる。

『…デッドエンド様、あれは飛行魔法のたぐいかと思われます』


「…魔法か!!」


 インチキ(チート)だ、とライオブレイカーは一瞬思う。そして苦笑いした。

「こっちも同じことが出来るか?」


『【フライ(飛行)】である程度、空の動きを補助することは出来ます。それと』


「なんだ?」


『極大魔法【リバース・グラビティ(反重力)】を改変すれば、あれ以上の動きが可能です…しかし』


「それを使え!!」


『DP消費が!』


「かまわん!!合図で行くぞ!!」


『りょ…了解!』



 ◇



 ドラグブレイバーは驚異の運動性を発揮し、黒いブレイバーの後背に回り込んだ。

 チェックメイトだ。

 後ろに付かれた黒いブレイバーは真っ直ぐな機動で、逃げ出すように加速を開始する。


『うは、空戦を知らないのかよ?良い(まと)なんだよ』


 後を追って加速しつつ、【ドラゴン・ロア(龍の咆哮)】の照準を合わせた。


『うわっぷ!』


 そして黒いブレイバーの噴煙に突っ込み、一瞬視界を失った。


『小細工を!!』


 軸をずらして、噴煙から逃れる。どっちにしろ相手はもう逃げられないのだ。



 だが、そこに黒いブレイバーはいなかった。


 ドラグブレイバーは目を疑った。


『えっ』



 ◇



「今だ!!」


『【リバース・グラビティ(反重力)】!』


 相手が噴煙に紛れたのを見計らい、極大魔法を発動する。



 その魔法の効果は、重力を反転させて対象を宙に巻き上げる、というものだった。

 巻き上げられた対象は超高空まで()()し、やがて地上に向けて再度落下する。

 効果時間は1ターン、()()は成層圏まで達する。

 空を飛ぶ方法を持たない限りはどんな生物でも即死だろう。

 そして女性の声が行った魔法改変により、重力の強さと向きがコントロール可能になる。


 ()()()()()()の完成だった。



 ライオブレイカーはそのままの速度でごくごく小さく旋回し、背後にいた相手機体の横を通り過ぎ、そのまま相手のすぐ背後、腕を伸ばせば届くほどの至近距離に張り付いた。



 ◇



 その異常を越えた狂気の機動に、ドラグブレイバーは一瞬呆然とする。


 凶悪な作りの五連装砲がふたつ、音速を超えた世界の至近距離で突きつけられたのがわかった。

 ドラグブレイバーの脳裏に、はっきりと”死”がよぎった。

『うあ、あああああああ!!【ドラゴニック・マニュー(龍性機動)バ】!!』


 慣性を無視して真横にブレイクする。

 だが、黒いブレイバーは正確に追従し、ピッタリと背中に張り付いたままだった。


『ああ、あああああああ…』


 ドラグブレイバーは悲痛な叫びを上げた。



 ◇



「ファイナルフォーム、『格納』」


 その声は、音速の世界で相手に届くことはなかった。だが、それによって相手がうろたえたのがわかる。

 瞬時に基本フォームに戻ったライオブレイカーは、ディオーブエンジンを臨界まで回し、モーションパワーを集約した。

「…ライオキック」


 重力制御に支えられ、空中で繰り出された蹴り上げるようなハイキックが、相手の蒼い翼をもぎ取り、砕いた。

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