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スーパーダンジョンマスター!!!  作者: PMK
超音速の死闘、超龍勇者ドラグブレイバー!
19/35

大惨事

 先行で1台のバイクが離脱していく。

 残った黒服の幾人かはチラリとそれを眺めつつも、自分の調査を進めていた。



 突如、遠くで銃声が聞こえた。黒服たちはピクリと反応する。



 連続発射音。彼らの使うアサルトライフルの銃声だ。

 すばやく物陰に身を隠した黒服たちのひとりが片腕を上げ、すいすいと手を振って撤収のハンドサインを出した。

 4人は物陰をつたいながら、バイクへと向かう。



 遥か遠くで絶叫が聞こえる。

 断末魔だ。



 軽く舌打ちした黒服は、固めて止めたバイクの群れにたどりつく。

 他の3人も順次バイクに乗り込んだ。


 一斉にエンジンを始動する。エンジン駆動音の合唱。


 空のバイクをチラリと見て、黒服はもう一度撤収のハンドサインを出した。


 ()()、横から何か大きなものが、音もなく突っ込んできた。


 金属がひしゃげるボコン、ドコンという音とともに、彼らとバイクはボウリングのピンのように吹っ飛んだ。




 バイクの群れに突っ込んだ牽引トラックらしき大型車は、そのまま森の木をへし折って乗り上げる。


 ハンドサインを出した黒服は先頭にいたために、後輪を引っ掛けられただけで済んだ。

 バイクからは投げ出されたものの、もんどり打って受け身を取りゴロゴロと転がる。

 跳ねられたバイクと人が宙をクルクル舞うのが見えた。


 クルクル、クルクル。



 大惨事だ。



 牽引トラックだったものは即座に()()()()()し、背を向けたまま宙を一回転する。

 そして呆然とする黒服のすぐ後ろに着地。地響きと土煙を立てた。


 全身が総毛立ち、その寒気で黒服は我に返る。

「新型の、大型ブレイバーか!!」


 横に転がって仰向けになる。


 大型ブレイバーの手が伸びてくる。


 即座に構えたアサルトライフルの引き金を引いた。爆音、爆炎。


 弾丸は手のひらや胸部に当たり、手のひらや胸部のモニターらしきものに弾痕を穿(うが)つ。

 しかし大型ブレイバーの手は、そのままの勢いで黒服の下半身を押しつぶした。肉が潰れ骨の砕ける音が響く。


「がぁっ!!」


 たまらず悲鳴を上げた黒服に、ブレイバーの操縦士がスピーカーで何かを呟く。

『…スパークジャマー…』


 衝撃が走った。


 黒服の意識は即座に暗転した。



 ◇



 せめてひとりは捕虜にほしい。ダンジョン付近まで駆けて来たブロッケイドは思っていた。

 ちょうど森を縫って、黒服たちがバイクに集まろうとするのが見えた。

『…千載、一遇だ…』



 偽装エンジン音を鳴らさない時のブロッケイドのトレーラーモードは、電気駆動とノイズキャンセラーで驚くべき静音性を発揮する。

 地球潜伏とリドル博士の護衛のための機能ではあったが、地球では全く使う機会がなかった。電気駆動の車両が少なすぎて逆に目立ってしまうのだ。

 それと中等学校に大型牽引車両で乗り付けるのは、どうもおかしなことだったらしい。



 ブロッケイドは木の切れ目に車線を確保すると、そのままトレーラーモードと化してバイクの集まりに突っ込んだ。


 ちょうど撤収のために集まったところだったようだ。軽い衝撃。


 バイクと黒服たちはボウリングのピンのように飛んでいく。ストライクだ。


 木にぶつかって制動し、引っ掛けただけの一名に狙いをつけ、跳ぶ。

 肝の座った黒服は、それでもアサルトライフルを連射してきた。あわてて足を押しつぶし、気をそらす。



 ブロッケイドは地球潜伏時に、様々な動画で地球のことを学んだ。

 その中のひとつに、相手を捕らえるには電撃攻撃が有効、というものがあった。

 さまざまな動画でそれは行われていた。多くは捕獲目的で、あとは相手をいたぶるためのものであるようだったが…。

 地上戦闘では地面に電流が抜けるため、たしかに有効な攻撃なのだろう。

 ライオブレイカーは頑丈で気絶さえしなかったが、この男ならばちょうどよかろう。鍛えた軍人だ、心臓麻痺も起こすまい。

 ブロッケイドはそう考え、そしてスパークジャマーを放った。



 黒服の体表を紫電が走り、その電光が一瞬眩しく発光する。

 バチンという音とともに黒服は反り返って硬直した。

 そして即座に炎を上げて燃え始めた。



『…あっ…』



 炎を上げた黒服は、光になって消えていく。

 ブロッケイドはあたりを見回す。

 跳ね飛ばされた残りの三人も、捩れた奇妙な体勢のまま、光になって消えていくところだった。


『…うーむ…』


 ブロッケイドは腕を組み片手を顎に当てる。

 そして気を取り直したかのようにドスドスと走り出し、リドル博士の安否を確認しに向かった。



 ◇



『…申し訳ありません…デッドエンド様…』


「気にせずとも良いさ。こうしたことの責任は、採用した責任者が負うものだ」


インビジビリティ(透明化)】と共に【サイレンス(沈黙)】が解けたとたん、女性の声は心底悲しそうな声で謝ってきた。案の定だ。


 操縦士は意識を失ったままだ。仲間が助けに来るのなら彼を盾に交渉を始めるつもりだったが。

 どうやら彼は見捨てられたらしい。


(…捨て駒か)


 ライオブレイカーは少しクサクサした気分になる。


 女性の声がおずおずと続ける。

『…それと、ブロッケイド様がおかしな動きを見せています。魔力を持たない(かた)なので反響定位でおぼろげに分かる程度なのですが…』


 ライオブレイカーは嫌な予感がした。

(帝国軍が動いたか?)


『マナプラントの森外縁部から、急速に初期コアルーム方面へ移動しています。…敵影はありません』


「…待て」


「魔力を持たない敵は、探知できないのか?」


『探知しにくくはなりますが、わからなくはありません』


(ファイナルフォームはステルス仕様だ。同じように魔力を吸収し、あるいは魔力反響定位をそらす仕様のものが入り込んでいるのだとしたら…?)


「急いで戻るぞ」


『は、はい。この男はいかがなさいますか?』


「機体は重しになりすぎる。男だけ抱えていくか」


 押し付けたクローアームに力を込める。



 なにか強烈な、嫌な予感がした。


(…殺気!?)


 そのまま操縦席からクローアームを引き抜き、殺気の方向に盾にする。




 頭部めがけて飛来した狙撃の砲弾が、頭部をかばった左クローアームを砕いた。

 砲弾は跳ねて逸れたが、ライオブレイカーは衝撃に大きくよろめく。


『デッドエンド様!?』


「外からか!?」


 相手の攻撃は、強固なパワードフォームの装甲を抜けてきた。まずい。

 ろくな遮蔽物のない場所だ。壊れた左クローアームを、壊れたパワードスーツの操縦席とハッチに引っ掛けて持ち上げ、中の操縦士ごと盾にする。


 人質を取って盾にしている。

 堕ちるところまで堕ちた気がしてライオブレイカーは笑い出したい気分になった。

(はは、恨むなよ…!)

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