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スーパーダンジョンマスター!!!  作者: PMK
超音速の死闘、超龍勇者ドラグブレイバー!
14/35

五里霧中

「…レーダーがおかしいだと?」


「先程からホワイト・アウトしています。…通信も効きません」


「…偵察小隊を止めろ!」


「ですから通信が!」


「だから走って止めるんだろうが!!」


 指揮車両に乗る、調査分隊長ブレイザー中尉の怒鳴り声に、操縦士がアクセルを踏み込む。



 先行する偵察小隊を追い抜き、距離をとってから前方に横付けする。

 偵察小隊長フィッシャー曹長は、跳ねるように走るデミブレイバーゴブリンの腕で小隊の二人に静止合図を送り、自らも機体を静止させた。

 事情を聞こうと通信機を入れるが、酷い雑音が入るばかりでこちらの声も届いている様子がない。




 デミブレイバーゴブリンは三機。2.5メートルほどの全高を持ち暗緑色に塗装された半パワードスーツで、丸々とした印象の機体である。


 猫背の鎧騎士を太い足腰に乗っけたようなその機体は上半身がパワーアシストスーツになっており、下半身の歩行器は完全機械式になっている。

 パイロットは胸部に押し込められて、上半身を固定されしかも足を折りたたんで座っており、非常に窮屈だ。


 乗り心地も最悪で、厳しい訓練を受けしかも適正のあるものしか扱うことの出来ないような非常にピーキーな機体であった。

 だが機械操作と魔力操作の両方で操ることが出来るため、追従性は非常に高い。生身の人間相手でもまともな格闘戦が可能なレベルだ。

 それだけの運動性を持ちながらもその膂力は圧倒的である。


 三機の内の二機は同じ暗緑色仕様になっており、分厚い盾とサブマシンガンを携帯している。フィッシャー曹長に付きしたがう一機は、長尺の狙撃銃を背負っていた。


 最後の一機は頭部に長尺のカメラシリンダーが付いており、装備もサブマシンガン一丁と、他の二機より軽装だ。こちらはカーキ色で、荒野迷彩を意識しているようだ。




 フィッシャーはゴブリンの頭がついた胸部ハッチを開き、胴体と顔を露出させる。いかつい強面の顔。他の二機もそれに従い、機体を寄せてハッチを開けた。


「…通信機が死んでますね」


 部下の一人、狙撃兵のマユタ軍曹。きつい顔立ちの黒髪美女だが腕っぷしも強く、たくさんの兵士たちが返り討ちにあっている。フィッシャーの子飼いで、信頼の置ける部下だ。


「…こんなところで油を売っていう暇はありませんよ、曹長!」


 強行偵察仕様に乗るのはピピン伍長待遇だ。出向で実務経験を積んでいる身だが、『強い志願』により今回抜擢された。年若く、気弱そうだが言葉は少し刺々しい。



 ハッチを開けたまま三機は指揮車両に歩み寄る。後続の輸送車と対空ミサイル車両も横に停止する。

「曹長、レーダーと通信がやられた」


「…人為的なものですかね」


 降りてきたブレイザーとフィッシャーは、深刻げに話しあう。


「…わからんが、そう見たほうが良いようだな。新ダンジョンのユニーク地形かなにかかもしれん」


「…ダンジョンも、発見や発生が遅くなればなるほどエグい感じになってましたからね。奴らも進化しているんでしょう。どうします?」


「…これを理由に撤収するわけにも行くまい。お目付け役がうるさいからな」




 輸送車から帝国特使の男が降りてきた。髪をなでつけヒゲを整えた小男で、落ち着いた物腰を気取っているのが鼻につく。

「んんー?なにか問題ですかな?」



 ブレイザーは嫌そうな顔をしながらも答える。

「通信系がやられた」


「はーん?故障ですか。連合はなかなか年季の入った機械をお使いですからな。わかりますわかります」


「…敵の攻撃だ。新兵器か、新魔術の可能性がある。ダンジョンの仕業かもしれんな。おたくらの自作自演でなければ」


 余計な一言に、特使はあからさまに気分を害したようだ。

「巡洋艦を一隻犠牲にしてまで、なにを自演することがあるのです!これだから田舎連合の連中は」


「おたくのところのアンジールならば、巡洋艦だって墜とせるだろう。だからわざわざ迎撃ミサイルを持ってきている」


「…内紛だとおっしゃるのか?」


「考慮のひとつではある。うちは引き上げて、後はおたくさんで勝手にやってほしいところなんだがな。通信が効かんからアンジール・レコンの要請もできんぞ」


「……」


 特使は憎々しげに沈黙し、苛立ちを込めて言葉を絞り出す。

「…連合が調査を行った後、通信阻害の範囲から出てレコンを要請すればいいでしょう?」


(意味があるのか?それは)


 この答えには流石のブレイザーも辟易した。調査分隊の任務は現地の調査ではない。あくまで偵察である。

 偵察によって安全が確認できれば調査のためのアンジール・レコンを飛ばそう、という段取りだったはずだ。

 はっきり言ってしまえば交戦のつもりはなかった。巡洋艦の残骸、あるいは相手の強力な対空火器の存在が確認できれば一目散に逃げ出す任務である。

 帝国への義理は果たすが献身の気持ちなどこれっぽっちもない。これでは話が違う。


「そんな任務は受けていない」


「高度な現地判断で目的を完遂するのが軍人でありましょう!通信ひとつでガタガタと!…まさか引き上げるとはおっしゃいませんな?」


 特使はせせら笑う。


「少し私の口がすべれば、分隊の族長様ごとき、どうなるか知れたものではありませんぞ?」


「…当初の任務に従い、偵察は行おう。調査は日を改めてそちらが行えばよろしい。…焦る理由でもあるのか?」


「とんでもない。それで結構。万事予定通りにお願いしますよ?」


 特使はニヤニヤ笑いながら、そして何度か振り返りながら補給車に戻っていく。



 ブレイザーは辟易した表情で、フィッシャーに意味ありげな視線を送る。

 そして元気づけるようにゴブリンの腕を軽くバンバンと叩き、指揮車両に戻っていった。


 ずっと黙っていたフィッシャーは、ゴブリンを操り部下二人の方に振り向かせる。

「任務は変わらん。ハンドサインで行くぞ」


 三機はハッチを閉め、また跳ねるように駆け出した。車両たちも続く。




 予測地点はそろそろ見えてくるはずだ。こんなだだっ広い荒野だ。通信もレーダーも使えなかろうが、遠くから巡洋艦の残骸なり何なりを撮影し、即時撤退するだけだ。


 それが遠くに見えてきた時、フィッシャーは思わずつぶやいた。

「…なんじゃあこりゃあ…」



 そこには森があった。見渡す限りの広大な森だ。



 どんどん話がこじれてきている。調査分隊たちは、そこでしばらく立ち尽くしていた

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