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主人公なんて大嫌いだ  作者: 地蔵
3/8

この世界の中心で 3

……明らかに。

明らかにいたずらだと断じるべき内容だ。だが……

そう断じるなら最初の神だのなんだのという件で破り捨てている。

この手紙には……何か最後まで読ませる「力」と、謎の説得力があった。まだ使っていない上に朱以外には能力スキルの名前すら明かしていない物を何故知っている?もし……もし明日俺がこの能力スキルを使ったときにこれが当たっていれば……

信じる価値はあるかもしれない。

この世界のことにしてもそうだ。今まで持ったこともなかった違和感が読んだ瞬間に押し寄せた。

国の名前や王家や貴族のほとんどが片仮名なのになんで漢字の名前が国民には多い?そもそも片仮名や漢字や平仮名、アルファベットの由来は?そもそもどこの言語だ?会ったことのある外国人も基本的に言語は同じだった……明らかに「適当」だ。おかしすぎる

人種にしても……同じ環境で進化したとは思えない。目や髪の色、体格差。三百年では確かに混ざりきらないはず……確証はないが。

朝自分語りを急に考えたのもそういう理由か……?いやそこまでは考えすぎか。

だが……この手紙を信じる理由は……九割方そこではない。

朱が……死ぬ?

それだけで俺には十分に警戒して一考する価値がある。他に情報が無いかと便箋の裏を見ると……何か殴り書きしてある。




「キミハ エラバレタ フサワシイ ヒロインヲ オクル

ユリカゴ ヨリ」




……まずいな……

手紙の方に信憑性があるだけにこっちも無視できない。それに……怒りがこみ上げた。

傲慢かもしれないが……もし、もしもだ。俺が俺の嫌悪する主人公と呼ばれる存在だったとしてだ。

ヒロインは朱がいい……なぁと。

気持ちすら無視される世界などこっちから願い下げだ。

まあでも今は……

「昼飯食って晩飯の支度するか」

妙に落ち着いていた。






晩飯の用意を終えて昼寝をし、目が覚めたらもう五時半だった。朱が帰ってくる頃だ。

特にすることもなくボーッとしていると、玄関が開く。

「ただいまー!お腹減ったー!」

朱だ。声を聞くだけで安心する。

「おかえり。すぐ食べるか?」

「うん!聞いて聞いて!私の能力スキル、すっごかったのよ!」

「食いながら聞くよ。ハンバーグ焼いちまうから皿並べといてくれ。米は炊けてる」

「はいは~い」

いいんだ。この幸せさえ消えなければ。

「スープは?」

「よそっとくから座ってな」

「は~い。いただきまーす!ん~、おいし~!」

「先に食べるんじゃない!はぁ……まぁいいか」

「そうそう私の能力スキル、すごかったんだ~!こうね、手のひらから炎がぼわぁ~って!それでみんなもキャー!っていっちゃって!これなら四炎にでも入れそうじゃない?やったわ~!」

「へぇ、いいじゃん」

「なによ反応薄いわね。あんたのは明日使うんでしょ?教えなさいよねちゃんと」

「おう……」

「じゃあお風呂入るね!ごちそーさま!」

「おう。お粗末さま」

皿を洗って、シャワーを浴びて、自室のベッドに入る。色々ぐるぐる考えていたけど、いつの間にか寝てしまった。







第三章 お試し期間は仰せのままに






朝飯だけ作って家を出た。緊張しているのか不思議と食欲は無い。

近くの公園……いや、外にしようか。

パスさえあれば城壁の外に出るのは容易い。付近なら魔物も大したことはないし、高三にもなれば出してもらえる。

さて……使うか。能力スキル

「『主人公補正ヒーローズ・オリジン』」

瞬間。押し寄せる万能感。今なら……世界から朱以外の全てを消し去れると確信する。

「何がチート主人公させたいわけじゃないだよ……しっかりチートじゃねぇか」

近くに落ちている石を拾い上げる。

「よい……しょッ!」

空に投げた瞬間に見えなくなった。どれだけ待っても落ちてこない……

近くの岩にデコピンをしたら砕けた。

ランニングをしたら五秒で城壁一周した。

「よし、もう二度と使わん」

能力スキルを解除しようとして違和感に気づいた。なんだ……?

視界がモノクロに染まる。風は止み、音が消えた。

俺と……背後の4つの気配を除いた全てが置き去りにされる。

「……何物だ」

「有り体に言えば……君だよ。四人ともね」

「……は?」

振り向くと、確かに四人俺がいた。

「やぁ。僕達は『主人公補正ヒーローズ・オリジン』だよ。僕は『コア』」

「俺様は『残虐クルーエル』」

「私は『冷静カーム』」

「ワシは『快活リブリー』」

「君を認めなかった四人だよ。よろしくね」

「認めなかったってのはどういうことだ?神とやらの手紙にあった試練ってやつか?」

「詳しくは話すせないんだけどね、少しだけ伝えることにするよ。三人は……外してくれるかな?」

コア』とやら以外の三人は頷くと同時に消えた。

「さて……試練かどうか、だったね。……その通り。これは『主人公補正ヒーローズ・オリジン』から君への試練だ。君を主人公として認めなかった四人の人格を認めさせればこの能力はすべて君のものになる。今は……僕ら四人以外の君を認めた感情の副能力サブスキルしか使えないよ。」

「じゃあなぜ今は使えてるんだ?」

「そこばっかりは神に介入されてしまってね。明後日の……戦闘訓練まではこの力は君のものだ。お試し期間ってとこだね。存分に使うといい。まぁその期間を過ぎたら、君の自由にできるのはせいぜい一度に副能力サブスキル一つくらいだろうね。納得してもらえたかな?」

「納得はしてないけど理解はした」

「同じことだよ。ああ、それとね」

「ん?」

「上に気を付けなよ。世界はもう動き出してるしそれに……」

「それになんだよ」

「女の子くらいは受け止めないとね?」

パッと、世界に色が戻った。ほぼ反射的に上を向くと、首から上の無い人が降ってくるのが見える。

「なんだそりゃ!」

どうにか受け止めたが……女の子だ。首から上が無いように見えたのはこの子の髪が空をそのまま切り取ったかのような水色だからだ。なんだろう。この子を見ていると心がざわつく……?

[フサワシイ ヒロインヲ オクル]

ふと手紙の裏にあった文言が頭に浮かんだ。とりあえずは……思ったことを口に出そう。

「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

多忙につき更新頻度落ちます。申し訳ありません

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