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主人公なんて大嫌いだ  作者: 地蔵
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この世界の中心で

 プロローグ


 別に、全部が嫌いって訳じゃない。キザったらしい文言も、歯が浮くような台詞も。すごい力なんて憧れもするくらいだ。でも……

 ただ一点だけ。そこだけが本気で許せないなら全部を否定してしまう。男ってそういうもんだろ?だから俺は……主人公なんて大嫌いだ。




 一章 主人公補正ヒーローズ・オリジン


 誰にも起こされなくても目が覚める。午前五時。今日が高校三年生初日だろうが関係ない。二人分の朝食と弁当を……俺と彼女の(ここでの彼女は一般的に女性を指す言葉であって断じて付き合ってはいない)分を作り、一人で台所で朝食をとる。もう片方の弁当と朝食をテーブルへ。自分の弁当を鞄にいれる。ああそうだ、鞄の名札が外れていたんだった。鞄の隣に用意しておいた主 公人(あるじ きみひと)と書かれた名札を付けて、家を出る。

 肌に当たる静かな風が心地よい。家を出てまず目に入るのは小高い丘の上に建てられた大きな城。俺たちの住むこの国を統治するシャニル王家の城だ。このシャニル王国は、四方を高い壁に囲まれた城塞国家だ。別に、大きな戦争をしてる訳じゃない。でもまぁ、魔物に喰われるのは嫌だろ?

 この国では18歳になる春、高校三年生になったタイミングで、それぞれ一人一人に固有の力、能力スキルを判定される。口から火を吹いたり怪力になったりなんでもござれだ。高校三年生で与える理由は将来が能力スキルに左右されること。それと子供の時分に与えると危ないからだとかなんとか、授業で習った。無難なものだと良いんだがなぁ……

 両親は死んだ。軍人だった。二人とも国を守るためだか俺を守るためだかで壁の外に出て、他のやつらと例に漏れず魔物の栄養になった。彼女も同じだ。彼女というのは、幼馴染の「炎寺えんじ あか」だ。まだ身長が1メートルにも満たない頃からの付き合いだ。2年前の……俺と朱の両親が死んだ大進攻から以降、共同生活をしている。そんなことをぼんやり考えているうちに学校に着いた。ホームルームまでは寝ていよう。進路なんて能力スキルが決まるまでなんのあてにもならない。勉強なんてするもんか。



 チャイムの音で目が覚めた。二年生から三年生は持ち上がりで、見知った面子がワイワイ騒いでいるのが聞こえる。まぁ、居心地は悪くはない。

「おい公人!お前、能力スキルどんなのがいいよ?」

 寝ぼけ眼でぼーっと窓の外を眺めていると、中一からの腐れ縁、

 ひいらぎ 鉄斗てつとが話しかけてきた。

「俺は……正直どうでもいいな。無差別破壊系とガチで使えないのでなければなんでも。」

「お前らしいの一言しか出ねーよ。」

 少しムッとした。

「そういうテツはどうなんだよ」

「俺は稼げれば何でもいい」

「二度と俺のスタンスをバカにすることを禁ずる」

「お互い変わらないってことで、な?ほら、ホームルーム始まるぞ」

 鉄斗が言い終わると同時、チャイムが鳴った。普段は遅れて入ってくる担任も、さすがに今日ばかりはすぐに来た。

「おはよう。みなさん進級おめでとうございます。本日は、みなさんお待ちかね、能力スキル及びステータス検定日です。えー、始める前にすこしばかり能力スキルについておさらいをします。まず能力スキルには特殊品ユニーク汎用品ノーマルの二種類あり、その名の通りの意味です。スキルは基本一人にひとつです。遺伝とかなんやらかんやら考察は飛び交っていますが、いまのところ完全ランダムとしか言えません。同じ能力スキルでも人によって副能力サブスキルというものがあり、使用感は異なると思います……少し実演しますか」

 何度目かわからない担任の実演が始まった。

「『火炎球フレイムボール副能力サブスキル操作マニピュレート』」

 教室の天井付近にごく小さな炎の球が現れる。担任が指を振ると、自由自在に動き始めた。そうして少し動いたあと、いつのまにかくわえた担任の煙草に着火して、消えた。

「フゥ―――ッ、えー、こんな風にもとの能力になにかしら付与できます。以上」

 どうせ口寂しかっただけだろ。所構わず吸いやがって……

「次にステータスについてです。基本は5つ。パワー、スピード、ガード、スキルパワー、スキルガードですね。ネーミングはそのままです。SS,S,A,B,C,Dと段階的に別れていて、まぁその順で単純に強い弱いです。パワーとガードは威力で相殺されます。スピードは速さ、スキルパワーは能力スキルの出力ですね。スキルガードは耐性です。そしてパワーに関しては、ゴホゴホッ!失礼。えー、手に持った武器……持ち手が武器と認識したものですね。それにまで伝播します。まぁこんなもんでしょう。では、用紙を配ります」

 普段はゆるいクラスの雰囲気が少し引き締まる。それもそうだ。人生が決まるんだから。俺だって少しは緊張してる

 茶色っぽいガサガサした紙が配られる。

「スキルチェックシートです。特殊な木から作った紙で、それに体の一部を擦り付けることで、体が能力スキルに気づき、紙にみなさんの能力スキルとステータスが浮かび上がります。では、どうぞ。」

 生唾を飲み込む音が聞こえた。別に緊張するようなことでもないだろうと思っていたが……案外怖いものだ。恐る恐る腕に擦り付ける。どうやら俺が皮切りになったようで、みんなも各々好きな場所に擦り付けた。さて……先にステータスから……

 パワー C

 スピード C

 ガード C

 スキルパワー C

 スキルガード C


「…………………………低い……」

 軽く絶望的だ。例えるなら大抵の人物より力が弱く、足が遅く、耐えられず、能力スキルは基本的に阻まれ、相手の能力スキルは通じる。雑魚だ。こんなことでは……いや、絶望するのはまだ早い!能力スキルが残ってる!えっと……



  能力スキル

  主人公補正ヒーローズ・オリジン



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