5年の時間
バトルは難しいものです。
ましてや今回深夜テンションで色々な事を作品に入れ込んでしまったので文章がぐちゃぐちゃです。
バトル初心者なのでお手柔らかに……
私ワールドをお楽しみ下さい!
あれほど綺麗に浮かんでいた月は、5年前のあの日、鬼が世界を支配した日、赤く染まった。
あの日、人口の約7割が死んだ。そう鬼に殺されたのだ。多くの人間は生きる事を諦めた。戻ってこない家族の為に意味の無い涙を流した。
鬼を撲滅する為に結成された【鬼滅団】も多くの犠牲兵を出した。前線に出ていた兵士の大半は鬼の餌となった。生き残ったのはたった5人だけ。実力はあるものの兵士になりたての5人だった。
私はその中の1人だった。
ただ見ていることしか出来なかった。先輩兵は次々と食われた、殺された。時には私たち5人を庇って散っていく兵士たちもいた。
しかし最前線には人類最強の男がいた。だから人々も心の何処かで安心していた。彼が居るなら勝てると誰もが思っていた。
しかしその予感は当たらなかった。
前線から兵士たちが帰還した時、彼はそこに居なかった。
1人の兵士が大声で言う。
「…鬼の制圧作戦は失敗に終わりました……!!」
それは人間が敗北したことを表すと共に彼の死を意味した。
__人類は最強の男を失い、
__私はたった1人の家族を失った。
『…旧新宿区にて3体鬼を確認。全て最高ランク"S"だと思われます。第1部隊、出動可能でしょうか。』
「第1部隊隊長、工藤優羽菜。出動可能です。」
『了解致しました。ではこちら司令塔より現場へ誘導させて頂きます。』
「了解。誘導宜しく。」
無線からは指示が聞こえる。第1部隊5人はそれに合わせ現場へ移動した。
私たちは焦っている。というか不安と恐怖に包まれている。
鬼は私たち人間の5倍の戦闘能力を持っている。それに加え、鬼の中でも【王族】と言われるSランクの鬼はその2倍…つまり人間の10倍の戦闘能力を持っている事になる。単純計算でいけばSランクの鬼1体を消滅させるには10人の兵士が必要となる。だが私たちは5人。ましてや相手は3体だ。
もし私たちが鬼3体を消滅させたとしよう。その時私たちは重症を負わずにすむだろうか。いや、絶対に無理だ。最悪の場合を考えれば私たち5人も共倒れだ。
つまり今、勝算のない賭けに出ていることになる。
「優羽菜、勝ち目はあるのかよ。」
「いや、1割もない。というか絶対勝てない。」
「おい…マジかよ。」
『第1部隊の皆さん、対象鬼まであと直進100mです。』
「了解!」
5人の声が揃うと共に空気がピリつく。今から死ぬかもしれない戦いをするんだ。
「対象発見。各自、武器の発動を。」
鬼滅団に所属をしている兵士はゴーストを宿した武器を使い鬼と戦う。ゴーストは自分自身の感情で生まれる。喜び、悲しみ、愛、嫉妬……感情は様々だ。感情やゴーストによって武器も変わる。私たち5人もそれぞれ武器は違う。ゴーストは自分の思い入れの深いものに宿る。その物自体が武器に変形する仕組みだ。
「…リーベ!!」
副隊長 心海 瑠郁 武器 斧 ゴースト "リーベ"
「アイファズフト。」
隊員 若草 奏 武器 弓矢 ゴースト "アイファズフト"
「トラオアー!」
隊員 藍座 美結 武器 鎌 ゴースト "トラオアー"
「フロイデ!」
隊員 御坂 謙心 武器 薙刀 ゴースト "フロイデ"
「……ロイエ。」
第1部隊隊長 工藤 優羽菜 武器 日本刀 ゴースト "ロイエ"
瑠郁は時計から、奏は万年筆から、美結はヘアピンから、謙心はピアスから、私は指輪からそれぞれ光が漏れだす。光が消えると武器に変形していた。
「奏と美結は右の鬼を、瑠郁と謙心は左の鬼を頼む!」
「お前はどうすんだよ…!」
「1人で何とかしてみせる。」
「無理に決まってんだろ!」
瑠郁が声をあげる。確かにSランクの鬼に1人無理だろう。そう。普通の人間なら。
「私なら何とかできる。だから信じてよ。」
「…分かった。優羽菜、本当に信じていいんだな。」
「大丈夫だよ。謙心、私を信じて。」
ほかの3人は何処か不安そうな顔をしている。でも私はこの作戦が1番勝算があるとみている。私1人が死んだとしても4人は助かるはずだからだ。
「……絶対5人で生きて帰るよ。」
「分かってる。」
5年前のあの日たった5人だけ前線に出て生き残った私たち。5人の心の中にはあの景色と死んだ兵士たちの思いが詰まっている。だから負けられない。
私たちは生きて帰らなければいけないんだ。
「各自対象に向かい戦え!5人で生きて帰る為に!」
「了解!」
4人の声が重なり合ったその時、私たちは鬼に向け別れた。
力いっぱい刀を振り翳す。鬼の弱点である頭ぴったりに刀が刺さるはずだった。
「こんな綺麗なお嬢さんが物騒な物持ってちゃダメでしょ〜。」
「……は?」
私の目の前に居る本来だったらもう死んでいるはずの鬼は日本刀の刃を片手で抑えている。掌も切れている様子はない。
「うん!驚いている顔も可愛い。…でも君、僕の敵でしょ?可愛いけど敵は倒さないといけないからね。」
声のトーンが低くなった事に恐怖を覚えた。何も出来ずに固まっていると50m先にあったビルの壁に叩きつけられた。
「ぐはっ!!」
「僕ね。可愛い子も人間も大好きだけど、僕の敵になる子は嫌いかな。」
首を掴まれ持ち上げられる。自分の体重と鬼が首を閉めているせいで少しでも気を抜けば意識が飛んでしまいそうだ。鬼を睨む。鬼はまた気味悪い笑顔を向けた。
「髪が赤いのも気になっていたけれど目もルビーみたいに真っ赤なんだね。…もしかして君が"ユウキ"の妹の人間と王妃のハーフ?」
「……何、言ってるか、ぐっ…意味わかんないんだけど。」
「しょうがない。可愛い子を痛めつけるのも僕の症には合わないしね。今から君に有益な情報をあげるよ。」
急に首から手を離されたせいで上手くバランスが取れず、地面にしゃがみこんでしまう。酸素が身体中を巡り頭がクラクラした。鬼は耳を顔を近づけ余りにも信じ難い事を呟いた。
「……は?どういう事……。」
「そのままの意味だよ。今は信じられないかもしれないけどねえ。君はいつかお兄さんに逢うことになるよ。」
頭の中がぐちゃぐちゃだ。もし今言った事が真実だとしよう。だとしたらまだ兄は生きているという事か。いや兄は確実に死んでいる。私はこの目で兵士として遺体を見たからだ。
「今日はこのくらいにしとこうかな〜♪今日の役目も終わったし、"ユウキ"にも怒られないでしょ。あっちなみに僕はアキって言うんだ。よろしくね!」
そう言ってアキと名乗る鬼は仲間を連れ消えていった。
私はまだ、収集がつかない頭のせいで地面にしゃがみこんでいる。4人が私へと近づいてくる。
「おい!優羽菜大丈夫かよ!?」
「…特に目立った傷もないみたいだね。」
「あぁぁぁぁ助かったァァァァァ、Sランク強すぎ私の鎌素手で止めたんだけど。」
「新宿まで鬼が来てるってことはそろそろ東京もやばいんじゃねえかな。三大都市1個潰されるのはキツいぞ。」
安堵の声、心配や危機の声。4人が話している事は右から左へと流れていた。今はただ頭を抱えることしか出来なかった。
「…い、おい!優羽菜!聞いてんのか!?本部に戻るぞ。」
「ご、ごめん……戻ろうか。」
アイツ……アキが私の耳元で言った言葉が頭を駆け巡る。
お兄ちゃんにもう一度逢える?嘘に決まってる。お兄ちゃんは私の目の前で死んだ。
お兄ちゃんが敵になる?そんな訳ない。お兄ちゃんはいつでも私の味方で、私を守ってくれた。
__『君のお兄ちゃんはSランクの鬼として鬼のトップ【国王】になってるよ。"ユウキ"は君の敵だ。』__
お兄ちゃんが本当の鬼になっているなんて信じれるわけがなかった。
いかがでしたでしょうか。
気が向いたら投稿するくらいなので次は2日後かもしれないし、2年後かも知れません。
またお会いできますように……