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時、蝶、花。そして別れ。

少し歩くと黒ねずみが胸にさしている花売りの娘から貰った花と同じ花が沢山咲いている美しいお花畑に出ました。よく見ると淡い青色の光の粒が沢山降り注いでいます。

 「扉はこの先だよ」

 淡い青色のお花畑には道がありません。

 黒ねずみの少年はクラゲの少女と共にお花畑をかき分けます。すると、お花の間から無数の淡い青色の蝶がヒラヒラと飛び立ちます。

 「わぁ、蝶々だ! 綺麗だね」

 黒ねずみの少年は高く高く飛んで行く無数の美しい蝶に目を奪われます。

 「『時刻蝶』だよ」

 クラゲの少女は目をキラキラと輝かせる黒ねずみの少年を眩しそうに見つめたあと空を舞う蝶に目をむけます。

 「じこくちょう……。じこくちょう」

 黒ねずみの少年はクラゲの少女から聞いた蝶の名前を口からこぼれ落とす様に繰り返します。

 (じこくちょう、何処かで聞いた事があるような……)

 黒ねずみの少年がぼんやり考えていると、どこからか鈴が転がるような、楽しげで可愛らしい声が聞こえてきました。

 「時刻蝶は時を刻む蝶♪」

 それと同時に甘い香りが漂います。そこにいたのは花売りの娘でした。黒ねずみの少年達に気が付いていないのか楽しげに歌っています。

 「時刻蝶は時を刻む蝶♪ 時を伝える蝶♪ 時を届ける蝶♪ その身に宿す儚い時を命を運ぶ蝶♪ 憐れな蝶に冥福を♪ 新たな命に祝福を♪」

 お花畑の真ん中でクルクルと踊り続けているため花売りの娘の足元のお前はぐちゃぐちゃになり、フワリと広がるスケートの裾や広げた手のひらに当たったお花は花びらをちらし茎がポキリと折れます。

 「あっ、お花をくれた子だ!」

 「花売りの娘さんだね」

 黒ねずみの少年とくらげの少女が声をかけると花売りの娘は動きを止めます。

 「あら♪ 迷子のねずみさん、クラゲさんと会えたのね♪」

 「うん! さっきはお花をありがとう!」

 「うふふ♪ 良いのよ♪ まだまだこれから増えるから♪」

 そう言うと花売りの娘は少し移動してからふたたびクルクルと踊り始めました。

 「黒ねずみくん、行こう?」

 「うん!」

 黒ねずみの少年は花売りの娘と別れて歩きはじめます。お花畑はとても広く、どこまでも続いていますが、どれだけ歩いても足が疲れることはありませんでした。途中、空からヒラヒラと蝶が落ちて来ました。黒ねずみの少年が手のひらで受け止めると、蝶は何度か羽を動かしてやがて動かなくなりました。

 「死んじゃったね」

 くらげの少女が呟くと、蝶が青白く光ります。

 「わぁ、光ってるよ!」

 「そうだね」

 その青白い光は段々と明るくなり蝶の姿を隠したかと思うとフワリと何処かへ飛んで行きました。黒ねずみの少年の手のひらには美しい蝶ではなく一輪のお花が乗っていました。

 「お花になってる……」

 「そうだよ。 時計の国で死んだら体は歯車になって、魂はお花になるんだ。 悲しいよね」

 そう教えてくれるくらげの少女の顔は本当に悲しそうでした。黒ねずみの少年は手のひらのお花をそっとくらげの少女の黒色のマントにつけました。くらげの少女は少し驚いていましたが、黒ねずみの少年は何故かそうしたいと思ったからです。

 やがてお花畑にも終わりが見えて来ました。そこにはとても大きな扉がありました。

 「黒ねずみくん、ここが4時の扉がだよ」

 くらげの少女が教えてくれます。

 「すごく大きいね。 見上げたら首か取れちゃいそうだよ」

 「黒ねずみくんや渡しましたからみたら大きいよね。だけど時計の国の外にはこの扉くらい大きな生き物がいるんでしょう?」

 「うん、犬や猫も大きいけど、この大きさだったらニンゲンとかクルマとかかな? すごく怖いよ?」

 「そう、そういった大きな生き物もここから帰るのよ。そして、時刻蝶も」

 くらげの少女が見上げる先では群れをなした蝶が次々と扉をくぐりぬけ消えては行きます。

 「さぁ、黒ねずみくん。 ここをくぐると元の世界に帰られるよ。 少しの間だったけど黒ねずみくんといるの楽しかったよ。 ありがとう」

 「僕もくらげさんとお話できて楽しかった! 元気でね!」

 くらげの少女は小さく白い手を振ります。黒ねずみの少年は大きく手を振ります。扉の向こうに行くのは少し怖いですが、黒ねずみの少年はおもいきって走り抜けました。

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