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消えたカードの行く先は  作者: ウツロ
第一章 冒険者編
8/50

魔法

 宿屋に戻り夕飯を食べる。宿泊の延長を申し出て、部屋に引きこもる。

 今日の実りを収穫するとしよう。まずは炎の精霊フェイのカード。


 「いでよ精霊フェイ」


 初めての召喚だ、格好つけてカードを投げる。ゴブリン?あれはノーカンだ、プロトタイプ0なのだ。オロオロしてみっともなかったから無かった事にしたいわけでは断じてない。


 薄暗くなった部屋に炎の精霊フェイが姿を現すと、僅かな炎の光が辺りを照らす。


 「ちっちゃいな…」


 数ミリの火花のような人型の精霊フェイはまるで、線香花火の如く儚く瞬き、その姿を消し……


 「まてまてまて、俺と契約しろ」


 危なかった、儚すぎるわ。

 フェイは一瞬強く光ると、姿を消した。おそらく契約出来たはず、なんとなく繋がりを感じる。

 これで魔法が使えるはず。俺は魔術師の一歩を踏み出したのだ。


 早速試してみよう、念のため水が入った樽も桶も用意してある。部屋が燃えるといけないので、窓から外に向かって指を差し念じる。


 「出でよ炎よ業火よ」


 出た、指先からマッチのような火が。

 さらに念じる、もっとだもっと、最大出力。

 青筋を立てて踏ん張ると、火はふわっと揺らめく。

 それは見る者を落ち着かせる、淡く切ないアロマの光。


 「………」


 次だ次、光の精霊を詰めた瓶をだす。

 これまた儚い光を放つ精霊。瓶に入ったその姿は、蛍のようにチカチカと点滅しながら踊る。


 瓶を開け……る前に窓を閉める。出したとたん窓から逃げ出したなんてミスは侵さない。俺は賢いのだ、知能犯なのだ。


 瓶の蓋を開けると光の精霊は部屋を漂い始める。こちらに敵意を持っている感じは無く、フワフワと浮く光はとても幻想的だ。

 とりあえず契約してもらうようにお願いしてみるも反応はなく、こちらにまるで興味を示さない。

 やはり一度カードにしなければならないようだ。


 そっと近づきパチンと両手で挟んでみる。確実に挟んだはずだが、手の平からするりと抜ける。

 何度か試してみるも効果はなく、やがて光の精霊は闇に溶けるように消えていった。

 失敗だ。だがルールが少しづつ分かってくる。

 殺した生き物がカードになるのだろう、では光を殺す方法とは何だろうか?


 とりあえず保留にし、新たに手に入れたカードを考える。

 大きな蛇が描かれたカード、その隅にはクローバーと2が書かれていた。これで1と2のカード計8枚使用可能になったのだろう。

 枚数が増えた事は嬉しいが、数字に何か意味があるのだろうか。召喚して確かめたいのだが、貴重な戦闘要員となるであろうカードを無駄にするのもためらってしまう。


 窓をあけ外を眺める。もう夜だ。月明りが足元を照らす。


 「こちらにも月があるんだ、大きさは倍ぐらいだな。字を読むのは少し辛いか」

 

 ふと自分がアルコールランプを持っていた事に気付く。燃料を気にする事もなかろう。街にいるのだ、明かりの代替品などいくらでもあるだろう。

 別に読む物も無かったが背嚢からランプを出し、ライターで火を灯す。

 

 「!」


 辺りが漆黒の闇に包まれた。

 見えない、何も見えない。ランプの明かりどころか、ライターの火、月明りでさえも。


 「熱っ」


 取り乱したときに自らの手をライターで炙ったのだろう痛みを感じる。火はついている、見えないだけだ。


 ランプがあったであろう場所に息を吹きかける。何度か試すと、月明りにぼんやり照らされた部屋が浮かびあがる。

 なるほど魔法のランプか。使い道は浮かんだが、順番を間違えたな。

 それにしても古美術商の商品は、全部魔道具だったのだろうか。買い占めるのが正解だったか。いや、そもそも立ち寄らなければここに来る事も無かったか。


 

 


 


 

主人公結構アホですね。このままだと野垂れ死にしそうなので、ほんの少し力を与えてみました。

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ハードボイルドなファンタジー小説も連載しております。よろしければどうぞ 失われた都市ジャンタール
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