ポーカーフェイス
「どうだ、火はいいもんだろう。己の内面を浮き彫りする」
筋肉ダルマが話かけてくる。さっきまで無視してた癖に偉そうに言いやがって、と思ったが顔には出さない。
「ええ、まるで心を見透かされているような気になってしまいます」
適当にそれっぽい事を言ってみる。
ダルマは満足そうな顔をして、うんうん頷いている。どうやら正解のようだ。
「それで何しにここへ来たんだ」
見学だっつてんだろジジイ。
「武器に命を預ける身、さらに良い武器には作り手の魂が宿ると言います。見てみたいと思うのは自然ではないでしょうか」
オブラートに包んで答えてあげる。
筋肉ダルマはご満悦だ。
「俺の名はギムレット。ギムでいい。お前も打ってみるか」とハンマーを見せてくる。
期待していた展開になり、ほくそ笑む。
鉄の棒を炉にいれる。黒色の棒は、やがて真っ赤な姿に変わる。
取り出した真っ赤の棒には無数の精霊フェイが纏い付く。
カン、カン、カンと筋肉ダルマがハンマーで叩くと、精霊フェイは踊り狂い宙を舞う。鉄の棒は伸び、やがてフェイの姿もなくなると、水に浸けられジューという音と湯気をだす。
「やってみろ」
渡されたハンマーを右手に持ち、火箸で挟んだ鉄を炉に入れる。
真っ赤になり無数のフェイを纏う鉄を、ハンマーで叩く……と見せかけて水にジュー。
精霊フェイはカードとなり、ひらひら舞い落ちる。
「やはり私には難しいようだ」
神妙な顔でハンマーを返す。
「今、なんかカードみたいなのが…」
礼を言って逃げるように武器屋を後にする。
理想はサラナンダーだったが十分だ。欲はかき過ぎないほうがいい。
再び街の外の川へ向かう。魚、取れるといいな。
川幅は10メートル程だろうか、中に入っていく勇気はないので、川のほとりから沈めてあった樽をカードに変える。当然カードは流れていくが、消えてポケットに戻る。
広い場所でカードから樽を出す。中を覗くと一杯の水と枯れ草だけ。樽を蹴っ飛ばして中の水をこぼす。
別の場所で同じ事をする。樽は大小合わせて8個。1つのカードにつき1つの樽しか無理だと思っていたが、マトショーシカの様に樽の中に樽を入れていくと1つのカードで複数の樽をカードにする事が出来た。
「これも駄目か、そうそう上手くいかないな」
調べた樽の数は7個、残すは一番大きな樽。餌を食べた魚がいつまでも樽の中に留まっているはずもなく、あわよくば隠れ家にでもしてくれればと思い試してみたが、どうやら徒労に終わりそうだ。
最後の樽をカードにし、平な場所で樽に戻す。半分諦めつつも中を覗く。
いた、目が合った。とぐろを巻いた大きな蛇だ。
「ごわぁ!!」
急いで顔を引っ込めると同時に樽をカードにする。
蛇は飛び掛かろうとしたのだろう、口を開け噛みつこうとした頭を残し、胴体は樽と共に消え、カードになる。
取り残された頭はポーンと頭上を飛び越え地面に転がると、やがて新たなカードに変わった。
危なかった、もう少しで食われるとこだった。
こうして魚ではなくモンスターのカードを手に入れる事に成功したのであった。
うーん…