表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
消えたカードの行く先は  作者: ウツロ
第二章 行商編
50/50

エピローグ

 太陽は昇りそして沈む、世界が変わってもそれは変わる事は無い。

 街を行き交う人々は、見知らぬ人の命が消え去ろうともその日常は何ら変わる事は無い。

 母は店の軒先で今日の夕食の食材を買い、家に帰れば子供のために食事を作る。

 子供は暗くなるまで外で遊び、日が暮れると腹を空かせて家路につくのだ。


 そんな変わらぬ街の風景の中で二人の少年が何やら遊びに熱中している。


「次、ケンちゃんの番だよ」

「わかってらい」


 年の頃は十歳ほどだろうか、お互い手になにやらカードを持ち地面を見詰める。

 その地面には複数のカードが並べられており、ケンちゃんと呼ばれた少年は腕を組みムムムと唸っている。


「もう負けだよ、そっから逆転なんて出来っこないよ」


 負けを宣告された少年は不愉快そうな表情を浮かべるも、すぐにニヤリと悪巧みを思い付いたような笑顔を見せる。


「ワハハ、コイツでどうだ」


 そう言うとケンは一枚のカードを地面に叩きつける。


「何だよそれ、トランプのカードじゃねえか。しかも変なオッサンが描かれてるよ」

「ん? あれ本当だ。おかしいな、拾った時はピエロが描かれたジョーカーだったのに」


 少年は首をかしげながら投げたカードを見詰める。


「まあいいや、ジョーカーのオッサン召喚~ 戦闘力は無限大だー」

「ゲハハハ、ズリーよケンちゃん。インチキおじさん無しー」


 カードが光に包まれる、その光はやがて人の形になり、光が消えた時にはカードに描かれた男がその場に立ち尽くしていた。



――――――



 私は暗闇の中にいた。何処で選択を間違っていたのだろう。もしかしたら最初から間違っていたのかも知れない。

 私の心は徐々に変わっていき、憎しみ、絶望そして全能感に塗りつぶされていったのだ。


 心さえ操る巨大な力、何故それを魔女は私に与えたのだろうか? いや与えたのでは無く捨てたかっただけかも知れない。誰でも良かったのだろう、たまたま私が受け取ってしまっただけなのだ。


 光が見える、その光に誘われゆらゆらと近づく。声が聞こえる、それは私を呼ぶ声だ。行かなければならない光の向こう側へ。


 

 体を包む浮遊感は消え、地面にしっかりと足がつく。周りを見渡すと見慣れた風景が目に飛び込んでくる。

 少し開けた場所に僅かな木々、人を乗せ前後に揺れる木の板。階段を上った先に下り坂が続く金属製の遊具。木で出来た横長の椅子。

 公園? 周りには何の変哲もない家が立ち並ぶ、木造二階建てや鉄筋コンクリートの低階層ビル。


 ここは地球だ、それも日本。帰ってきたのか。

 目の前には少年が二人、こちらを見てポカンと口を開けている。


「ななな何だお前、どっから出て来た」

「魔法だ、魔法のカードだ」


 興奮状態の二人の子供に自分は魔法使いで、カードの中に閉じ込められていた。助けて貰ったお礼に何かあげたいと告げると、最初は警戒、戸惑っていたものの、すぐに何が欲しいか相談しだした。


 飛行機! 宇宙船! などという無理難題を誤魔化し、なだめすかしてアイスで妥協してもらった。

 使えない魔法使いだなーなどと言うさげすみの言葉を背中に浴びながらもアイスを買うべくコンビニへと向かう。

「逃げんじゃねーぞ」などと言う追い打ちを食らいながらも、子供達には公園で待っていてもらい無事にアイスの買い出しという依頼をこなす事ができた。


 アイスにかぶりつく少年達を余所目よそめにこれから先を考える。

 本来のいるべき場所地球で暮らすか、もう一度異世界にいくか。

 カードの力は失われていない、沢山のカードを残してきたのだ。今なら向こうの世界にいく事も出来る気がする。


 俺は首を左右に振って「じゃあな少年達」と既にこちらに興味を無くしてゲームに夢中の彼らに別れを告げ、公園を去っていった。


 結局カードの力とは何だったのか? 異世界の神が作り出した物だったのだろうか? 

 そしてこの力を捨てるべきか否か。誰かになすり付ける事は出来るだろう、だが危険すぎる力だ。

 俺のように生き物全てを支配しようと考えるかも知れない。地球でそんな事をされてはたまったものでは無い。


 ならば支配するのが異世界だったらいいのか、などという矛盾に眉をひそめながらも自分の家に帰るべく駅に向かって歩を進める。


 ……あれ? 何だ、これ以上進めない。

 首を傾げる、道は続いている。障害物など何もない、だが進めないのだ。

 横に曲がる、ある程度進めるもやがて不思議な力で足止めされる。

 どうも公園を中心に一定の距離までしか移動出来ないようだ。


 まさか……。

 カードのルールを思いだす。描かれた数字の数だけ依頼をこなし、ゼロになれば解放されるはずだ。


 俺のカードは……ジョーカー。

 数字など無い。一体何度依頼をこなせば解放されるんだ?









エピローグで出て来たケンちゃんとはプロローグで主人公と一緒のバスに乗っていた子供です。

主人公が消えた後、残されたカードを彼が拾いました。


さて題名にもなっている消えたカードの行く先なんですが、消えたカードがジョーカーなら地球です。それ以外のカードであるなら異世界ですね。

全ては主人公の考え方次第であります。


そして最後の結末なのですが、納得いかない方も多くおられるのではないでしょうか?

ですが異世界の住人からすれば、別の世界から来た男が巨大な力を使い我が物顔で歩き回る、これまで築き上げてきた秩序、常識などお構いなしです。排除して然るべきではないでしょうか。

見る方向が変わればこの様な結末も十分あり得ると考えました。

最後までお付き合いありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハードボイルドなファンタジー小説も連載しております。よろしければどうぞ 失われた都市ジャンタール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ