表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
消えたカードの行く先は  作者: ウツロ
第二章 行商編
47/50

行軍 

 目の前に対峙するは牛の頭を持ち、身の丈三メートルを超す怪物ミノタウロスだ。

 両刃の巨大な斧を構え、こちらに迫りくる。


「ファイヤーボール」


 巨大な炎の玉が一直線に飛ぶ。振りぬかれた巨大な斧と衝突、炎の玉は二つに割れ消滅する。

 マジックウェポンか。


 ミノタウロスはさらに斧を振り回しながら突進してくるも、俺を乗せたチェシャ狼は森の木々を縫って、攻撃を躱す。


 素早い動きについてこれなくなったミノタウロスに手をかざすと、その足元から無数の黒い点がせり上がって体に纏いついていく。

 蟻だ、体長二センチ程の獰猛な蟻の大群が巨大な肉の体を登り、あらゆる所に噛みついたのだ。

 群がる蟻を必死に手で払いのけるも、次第に動きは鈍りやがて体を黒い点で埋め尽くされる。そして弱弱しい声で鳴くと地面に崩れ落ちるのだった。

 蟻の毒だ、この蟻は毒をもっており、弱い毒なれど数千、数万と噛まれると筋肉が痙攣を起こし呼吸困難、視力低下などの症状に至る。

 巨大な獲物を襲った小さなハンター共は、周囲に広がり黒い水たまりを形成する。捕らえた獲物を守るべく辺りを警戒しているのだろうか。

 あの中に足を踏み入れようものならどころに次の獲物となりミノタウロスと同じ結末を迎えるであろう。



 俺が乗る狼がゆっくりと近づく。すると地面を這う蟻の大群が割れ、道を作る。この蟻は我が支配下にあるのだ。

 カードにして何時でも召喚できる手札の一つ。そう一枚の手札。数万、数十万の蟻でカード一枚、この集団を一つの生命体として捉えるからだ。

 これが正しい考え方かどうかは関係無い。俺が考え、その思いにカードが答えた結果だ。


 痙攣するミノタウロスを見下ろし、その脳に剣を突き刺す。これで我が軍団に更に魔物が一匹加わったのだ。

 歓声が沸き起こる。振り返るとゴブリン、オークが十数匹がこちらを見て喜びの声を上げている。

 彼らは俺に付き従う魔物達。カードにし、召喚した俺の兵士達だ。

 彼らのカードは全てK(13)、だが数字などもはや関係ない。


 俺には今まで目的が無かった、ただ生き残る事、日々の生活のために生きてきただけだ。商売を始めたのもそうだ、それ以外に生き残る術を見いだせなかっただけだ。

 今は違う、俺は人間の敵となった、平和な生活など望むべくもないだろう。

 だが俺には力がある、カードの力だ。生きとし生けるもの全てカードにしてしまえば良いのだ。

 そう、争いなど無い平和な世界の実現、これが俺の力によってのみ可能となるのだ。

 俺は配下の者にこう言えばいい、理想の世界の実現に向けてそのいしずえとなれと、我が導きに従いその身を捧げよと。




 今は西、すなわちデッサの街に向かって行軍中だ。

 そして……何やらゴブリンが騒いでいる、獲物を見つけたか。

 やがて傷ついた人間、馬? いやその中間といった所だろうか、縄で拘束し、数人がかりで引きずってこちらに来る。

 息は荒く血を流しかなりの抵抗をしたであろう彼らは、下半身が馬で上半身が人間、ケンタウロスだ。獲物は三人、いや三頭か?

 それが目の前に並べられ、これから起こるであろう儀式を皆が心待ちにする。


 私は剣を持った右手を掲げ、剣先を下に向けると両手で柄をしっかりと握り、足元のケンタウロスを見下ろすのだ。

 こちらを見詰める彼らの目には恐怖の色が有り有りとかんでいる。大丈夫だ、恐怖などすぐに消え去る、お前達は新たに生まれ変わるのだ。


 突き下ろされる剣、そして響く断末魔の叫び、だがこれもすぐに歓喜の声へと塗り替えられていくであろう。


 こうして徐々に数を増やしていき、デッサの街に着く頃には百程の軍団となっていた。



 遠くからデッサの街を見る。以前と変わらぬ佇まいとは言い難く、門の周りに兵士が並び張り詰めた空気を感じさせる。

 街に出入りする者はおらず、いたとしても物々しい警戒の中何事も無く通過出来るとは思えず、激しい取り調べを受ける事を想像せざるを得ない。


 これでは何食わぬ顔で通り過ぎる事も、荷物に紛れて入り込む事も出来ない。ましてや正面から突破しようなどと思えば要らぬ犠牲を出すどころか、包囲殲滅される可能性の方が大きい。

 目立つ必要は無い、じわじわと侵食していけばいいのだ。その為には私以外の人間の協力者がいる。

 そういえばぺぺとテンガはどうなったであろう? 無事にルクセリオまで辿り着いたであろうか。


 ここはデッサの街を迂回して、ルクセリオまで戦力を増強しつつ向かうのが賢明である。森の中に身を隠し、魔物の領域を徐々に我が支配下としていくのだ。



――――――



 森の中は野生動物の宝庫だ、食べ物が豊富で身を隠しやすい。だが、それは魔物とて同じ事。ゆえに危険とも隣り合わせであり、気を抜けば即、死に繋がる。

 私は悠然と森の中を歩く。ゴブリンの斥候が危険を察知し、ミノタウロスが無力化あるいは排除し、我が身をリザードマンやオーク共が守る。そして時折運ばれる瀕死の魔物達。それにトドメを刺し我が軍団の作り出す円陣は、さらに大きさを増していく。


 既にゴブリンの集落を二つほど飲み込み、ハーピー共を駆逐し、軍団の数は五百を超えた。

 今はさらに増やすべく、マンティコアが住むという洞窟に向かっている。

 ライオンの体に老人の顔、蝙蝠こうもりの羽、そして尻尾には蠍の毒針を持つ伝説上の怪物だ。

 森の奥の洞窟を根城ねじろとし、野生動物、ゴブリン、さらにはトロルなどの巨大な生き物すら襲い、洞窟へと引きずり込んでしまう。つまり森の動物の全てが捕食対象という事だ。


 危険な相手ではあるが個体数が少なく、戦力増強の為には犠牲を覚悟で狙うべき魔物であると考える。



 やがて空気が変わったと感じる場所にでる。木の幹に大きな爪痕が目につくようになり、これは明らかに自分のテリトリーを示すマーキングである事がうかがえる。

 マンティコアの縄張りに侵入したのだ。


 周囲の警戒をしながら洞窟を目指す。マンティコアの個体数はハッキリしていないが、十頭に満たない数だと考える。洞窟に住むため夜行性である可能性が高く、日中の今は巣穴に潜って体を休めていると思われるが。


 やがてゴブリンの案内により、ある洞穴ほらあなに到着する。マンティコアが住みつくという洞窟だ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハードボイルドなファンタジー小説も連載しております。よろしければどうぞ 失われた都市ジャンタール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ