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消えたカードの行く先は  作者: ウツロ
第一章 冒険者編
4/50

発見

 肩で息をする。無我夢中だったため自然と体が動いた。殺すことに全く躊躇しなかった。


 剣を拾い、もう一度突き刺し、確実に死んでる事を確認すると地面にへたり込んでしまった。


 ここは地球ではないのはもう受け入れている。途中で見つけた男はゴブリンに殺されたんだろう。

 男の仲間は?ゴブリンの仲間は?一人で行動していた可能性は低い。

 男は怪物退治を仕事にしていたのだろうか?討伐部位に角やら牙か耳なんてものが金にかわるのだろうか。

 体の中に魔石なんて物があるのならば、解体する?それは嫌だ。担いでいくなんてのはもっと嫌だ。


 ゴブリンの足をツンツンつつきながら考えてると、ふっとゴブリンの体が消え去る。

 すると同時に一枚のカードがひらひらと落ちる。

 カードをよく見る。すぐには拾わない。

 ゴブリンだ。有能さをアピールするような澄ました顔をしている。ゴブリンの描かれたトランプのカードはハートのエース。

 驚きとイラつきが混じった気持ちでカードを拾う。

 これは捨てたカードだ。戻ってきたのか?ポケットをまさぐる。3枚のカードが見つかる。捨てたはずのカードだ。

 3枚のカードをヒュッと投げてみる。しばらく飛んで、ふっと消えた。

 またポケットを探る。やはり3枚のカードが見つかる。



 川で手と顔を洗い、剣を拾う。

 背負い袋は『重いな、これもカードになんねぇの』って思ったら、背負い袋が描かれたカードになった。

 出てこいと念じ、背負い袋が描かれたカードを投げると、背負い袋が出てきた。中身も無事だ。これは便利。


 次にゴブリンのカードを投げる。直立したゴブリンが出てくる。キョロキョロと周りを見渡すゴブリン。目と目が合う。


 生きている!!


 びっくりする。ゴブリンもびっくりしている。

 見つめ合う二人。ハッと我に返り剣を構える。

 ゴブリンも我に返り戦闘態勢をとるも、やがて首をかしげ困った顔になる。

 なんとなく考えている事がわかる。どうやらこちらに危害を加える事が出来ないようだ。

 どうする、もう一度殺すか?と考えた瞬間、ゴブリンがギョッっとした顔になり、背中を向けると一目散に逃げ出していった。

 だが、10メートルほど進んだ所で立ち止まるとまた、首をかしげながら帰ってくる。

 逃げられないのだろう。

 こちらの指示に従う意思が感じられる。

 言葉は通じないが、人間の集まっている所まで案内してほしい事を伝えると、しぶしぶといった感じでうなづくのだった。


 ゴブリンを先頭にして進む。川沿いから木々の生い茂った森へと変わり、足場の悪い中を必死で付いていく。

 剣を支えにしたり、木につかまりつつ歩くも、前をいくゴブリンは辺りを警戒しつつ、スイスイと進んでいく。まっすぐ進まず腰を落とし迂回したり、足場を選びながら歩いている。しかも足音があまりしない。

 関心しつつ、なるべく同じ場所を踏んで歩く事にする。

 やがて木々もまばらになり、開けた場所に出るとゴブリンは一点を指さす。

 はるか先に、城とそれを大きく囲む塀が見える。城下町だろうか。

 ゴブリンは「じゃあな、俺はここまでだ」といった顔をして森へ引き返していった。


 なるほど、依頼を達成すると解放されるのか。まあ、いろいろ助かった。ありがとう名も知らぬゴブリン、君の事は忘れないよ。


 

 街を目指して歩くと、人によって踏み固められたのだろうか、草の生えてない道にでる。

 前を横切るようなその道は、大きくカーブを描きながら街へと続いているようだった。

 

 街に近づくにつれ、ぱらぱらと人影が見えるも、数は少ない。

 外套を羽織り、背負い袋を担ぎ、門らしき所へ向かっていく。


 前を進むのは行商人の一行だろうか、馬車ならぬ牛車が2台荷物を乗せ、その周りを武装した護衛らしき人が数人取り囲み歩く。

 護衛の1人がこちらに鋭い目をむけるも、すぐに目線を切った。

 他の護衛も、見ずともこちらを警戒している事を察すると、近づきすぎず一定の距離を保ちつつ後に続く。

 あまりキョロキョロしないように歩いていくと、特に声を掛けられる事無く街の中へ入る事が出来た。



 改めて街の中を観察してみる。塀は2メートルほどの高さで、石を積み上げて出来ており、門は木製に鉄だろうか金属で補強され、門を守る兵士は革の鎧を着て剣を腰に下げているものや、弦を外した弓を肩に引っ掛けているものもいる。

 今歩く道はメインストリートだろうか、10メートルほどの幅があり轍のあとが目立つ。両脇には石と木材を上手く組み合わせた店舗らしき建物が軒を連ねる。

 道のはるか前方には、更に高い塀があり閉じられた門を二人の兵士が守っていて、その少し手前を先ほどの牛車が右に曲がっていくのがみえた。



 メインストリートに並ぶ高そうな店を尻目に、街の奥へと足を進める。

 道を歩く人々は子供もいれば、ゴリラのような厳つい男や、大小様々な店舗で買い物をする妙齢の女性の姿もみられた。

 皆、麻でできた簡易な服を着ており、靴を履いてる者も履いてない者もどちらもいた。

 

 人々の会話に耳を傾けてみると、「もう少し安くならないか」 「あのバカ何処をほっつき歩いてんだ」などと聞こえ、言葉が理解できる事に安堵する。


 野菜や果物を売っている店でリンゴらしき食べ物を指さし、値段を聞いてみると「1銅だよ」と教えてくれた。

 ポケットから取り出した茶色のコインを恐る恐る渡してみると。リンゴを一つ手渡される。

 ついでに近くで安く安全な宿を聞いてみた。


 「あんたこの辺の人じゃないのかい? 何処も安全だよ。ただし荷物には気をつけるんだね。目を離すとすぐ無くなるよ」


そういって数件となりの店を指さす。



 

 宿屋らしき建物は木造2階建てで、一階はテーブルと椅子が置かれ、肉体労働者と思われる者達が多数おり、食事をしながら木で出来たジョッキで酒を飲んで談笑する姿がみられる。

 正面のカウンターへ近づき店員らしき女性に宿泊料金を尋ねてみる。


 「泊まりが50銅、食事が10銅、風呂に入りたきゃ更に10銅だね」


頷いて銀色のコインを1枚だす。


 「銀貨かい、お釣りなんてないよ」

 「なら3日分でいくらになる?」


 恰幅のいい店員は足先から顔まで舐める様にこちらを見る。


 「2銀で3泊、食事は朝、夕の2回だ。風呂は好きなだけ入りな」


 銀貨をもう1枚取り出し、渡す。


 「夕食は4つから6つの鐘までに食べな、朝もおんなじだ。エールはついてる。追加は1杯1銅だ。メシんときはこいつを見せな」


 そう言って、木で出来た割り符を手渡される。


 2階へ上がり、割り符に書かれたマークと同じ扉を見つけると、中に入り背負い袋の中から、おそらく男の着替えであったであろう麻の服に着替えると夕食を食べにいく事にした。



 カウンターでトレイに乗った食事と、追加で払ったエールを3つ持ちテーブルに向かう。

 目指すはエールを飲み、談笑する2人の男。

 

 「ここ空いてますか?」


 3杯のエールを少し持ち上げて尋ねる。


 「いいとも、座りな。学者さんかい?」




 部屋のベッドで考える。酒の力も借りて、いろいろ話が聞けた。

 1、仕事を探すなら商業地区にあるギルドにいけばいい

 2、学者とは何かを研究していたり魔法を使ったりする頭のいい人を表現した言葉

 3、中央北に領主の城があり、その周りに貴族の住む特別区。壁を隔てて一般区、この宿がある商業区。あまり近づかない方がいいという貧民区がある

 4、街の南門は出入り自由だが、特別区とその先にある北門は許可なく入れない

 5、武器の所持はいいが、街の中では剣は鞘に納めるか布をまき、弓は弦を外しておかないと、棒を持ってうろつく衛兵に頭をカチ割られる

 などだ。


 ちなみに風呂は水風呂だった。


 目をつぶるとすぐに深い眠りに落ちていった。

 


 


 














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ハードボイルドなファンタジー小説も連載しております。よろしければどうぞ 失われた都市ジャンタール
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