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消えたカードの行く先は  作者: ウツロ
第二章 行商編
35/50

驚愕

 声を出す暇もなく打ち上げられたオークは十メートルの飛行の後、地面に打ち付けられゴロゴロと転がる。

 致命傷か? カードに戻れ! ……戻らない。オークは横たわったままピクリとも動かない。

 そうか彼は最後の召喚だったか、カードに戻す事は出来なかった。解放か死か、二つに一つだった。


 彼の悲劇の根源を見上げる。体長四メートル、禿げあがった頭に岩のような筋肉。手に巨大な棍棒を持ち、口から覗かせる牙は唾液の糸を引く。

 木の影から現れた、一際大きなトロルが振るった棍棒がオークの命を奪ったのだろう。

 もしかしたらオークはまだ生きているかも知れない。回復魔法を使えば助かるかも、しかし……。


 水平に振るわれるトロルの棍棒。咄嗟とっさにしゃがんで躱す。

 頭上を通過した巨大な棒は木の幹に当たると、振動と破壊音を響かせる。

 大木の幹は大きくえぐれ、茂った葉っぱがひらひらと舞い落ちる。

 

 あんなもんくらったら死ぬ。かすっても死ぬ。


「ファイヤーボール」


 膝を狙って撃つ。嫌らしく回転を加えた炎の玉が膝蓋骨しつがいこつ(膝の皿)を砕き内部へ侵入、脚を中から燃やす。

 威力が出るかは知らない。なんとなく回転を加えてみた。


 トロルはバランスを崩し倒れるかに見えたが、棍棒を杖にして体を支える。

 足払いで杖を蹴り倒してやりたいが、たぶんビクともしないだろう。

 仕方無いので小馬鹿にして逃げる事にする。膝を指差してニヤっと笑い、ケツをぶりぶり振りながら逃げる。


 すぐに投石していた他のトロルもやって来るはずだ。そいつらは皆に任せ、俺はコイツを……どうしよう、兎に角頑張る。


 こうして命懸けの鬼ごっこが始まった。



 木の間をするするとすり抜け逃げる。トロルはちょこまかと動く獲物を捕らえ切れない。

 左足は膝から大きく抉られ、皮一枚で繋がっている状態だ。いずれ千切れるであろう。


 マキビシをばら撒いてみるも全く気にする素振りもない。足の裏の皮が分厚いのか。

 ならばと樽を召喚、転がしてみる。転んだ所を嬲り殺しにしてくれるわ!


 目の前に転がって来た樽をヒョイと掴み、投げつけるトロル。

 高速で飛んできた樽が耳を掠めて前方の木に衝突、木っ端みじんになる。

 危な! いらん事した。別の手を考えよう。


 右に左に蛇行しながら逃げる。

 トロルは時折下に落ちてる木の枝や、石、果ては土まで掴んで投げつけてくる。

 余計な知恵を与えてしまった。これ以上逃げるのは厳しい。横っ腹も痛い。

 目の前にフォレストスパイダーの糸を束ねて作った足を引っ掛ける為の罠が見えた。

 下を潜りさらに逃げる。そろそろのはずなんだが。

 振り向くと束ねた糸を簡単にブチブチと引き千切るトロルが迫る。


「ふー、ふー」


 もう走れん。ひと際大きな木に背中を預けて肩で息をする。

 近付いてくるトロル。その足元を見る。

 あと二メートル。あと二メートルで……落とし穴だ。

 勝利を確信したのかトロルはこちらを見て、ゆっくりと…………落とし穴を迂回して迫ってきた。


 アホが!! 素早くナイフで木に括り付けていた糸を切る。

 遥か頭上に設置された先の尖った巨大な木の杭が、巻き付けた糸による振り子の原理で、勢いよく飛んできた。

 下ばかり見てるからだ。巨大な杭はトロルに命中。その体を吹き飛ばす。


 やったか? 見て驚愕する。なんとトロルは咄嗟とっさに棍棒を捨て、両手で杭を受け止めていた。なんたる反射神経。


「トロル召喚」


 召喚されたトロルは棍棒を拾うと両手の塞がったトロルに殴り掛かる。

 こちらのトロルの体長は三メートル程、対するは四メートル。体格で劣るも足止めには十分だ。


「フレイムスロワー」


 手から噴き出す連続した炎は三秒ほどでトロルに掛かった油に引火する。

 雄たけびを上げるトロルは左右に手を振り回して暴れる。

 さぞかし熱かろう。

 遠巻きに、油の入った瓶を投げつける。瓶は割れてさらに炎上する。

 トロルはしばらく熱さにのたうち回るも、やがて動かなくなりカードとなって舞い落ちる。



 倒したばかりのトロルを召喚する。これで二匹。味方に攻撃されないように、足に黄色い布をまく。


 残りのトロルは四匹。仲間ズラして近づけば二匹は倒せよう。形勢は逆転した。

 者ども、残党狩りじゃ!! 我に続け~。




 走るトロルに必死で付いていく。歩幅が違い過ぎる。みるみるうちに姿は見えなくなった。


「ぜえ、ぜえ、ぜえ」


 酸素、酸素が足りない。狼ぐらいは残しておくべきだった。クソッ、俺一人か。

 途端に不安になる。壁役のいないスペルキャスター、しかも召喚士、アホとしか言いようがない。


「エムさん」

「ヒッ!」


 びっくりした。変な声が出た。

 大丈夫ですかと声を掛けて来たのはぺぺ。正直助かった。代わり映えしない森の景色に迷子になる所だった。


「皆は無事か? トロル二匹を味方につけた。援護にいくから案内してくれ」

「ハイッ!!」


 おお、いい返事やで。社長としての威厳が出て来たんちゃうのん。


 ぺぺに手を引かれ、森を進んでいく。足がガクガクするも、風になびく髪をクンカクンカしながら気持ちを奮い立たせる。



 仲間達の戦闘現場に着いてみれば、既に戦闘は終わっていた。

 皆逃げに徹し、罠を巧みに使いながら相手の体力と機動力を奪い、そこに仲間ずらして来たトロルにボコボコにされたようだ。

 虫の息のトロル二匹にファイヤーボールでトドメを刺してカードにした。


 だが、残念ながらゴブリン一匹とオークが帰らぬ人となった。

 罠に誘導しようとしたゴブリンが棍棒の一撃でお亡くなりになったそうだ。


 トロルの死体はカードにし、仲間の死体は丁重に埋葬した。

 役目を果たした皆はカードに戻り、残された俺達は仲間の死を悲しみ、旅を続けるべく馬車へと戻る事にした。


 今回ゴブリンとオークを失ったが、トロルを四匹得る事が出来た。かなりの戦力が強化された事であろう。

 喜びと悲しみが入り交じった複雑な思いで野営場所に戻ってみれば、そこには馬車の姿は影も形も無くなっていた。

魔物のカードの推移

 ゴブリン5➡4

 ゴブリン5➡4

 ゴブリン4➡死亡

 ゴブリン3➡2

 ゴブリン3➡2


 オーク 1➡死亡

 ハーピー8➡7

 ハーピー8➡7

 ハーピー6➡5

 チェシャ狼8➡7

 チェシャ狼8➡7

 フォレストスパイダー  5➡4

 ジャイアントスコーピオン6➡5

 トロル9➡8

 トロル9➡8

 トロル9

 トロル9


間違ってる気がする……ややこしい。また見直します。

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ハードボイルドなファンタジー小説も連載しております。よろしければどうぞ 失われた都市ジャンタール
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