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消えたカードの行く先は  作者: ウツロ
第二章 行商編
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依頼の品とは

 朝から腹の調子が悪い。水に当たったか、はたまたストレスか。

 サラセイルからの依頼の品の受け取りは二日後だ。

 取引場所の確認はしてある。しかしもう一度しっかり下見しておきたいが……行きたくねえ。

 というかトイレから離れたくない。



 バタバタと足音が聞こえ、ガチャっとドアが開く。


「エムさんこれちょっと見て下さい」


 勢いよくドアを開け、話しかけてきたのはテンガだ。君、そのドアはトイレのドアですよ。

 もう少しプライバシーを尊重してくれませんか。


 彼の手には羊皮紙。なにやら絵が描かれている。手配書だ。

 手配書は酒場やギルドに掲示されていて、罪人もいれば、ただの尋ね人だったり、人ですらなく物だったりもする。


 羊皮紙を受け取り見てみると、棍棒を持った髪の毛の無い裸のオッサンが描かれている。何ですかこれ。


「トロルです。トロルの集団が街道に現れたようです」


 トロル? トロールの事? トロールといえば妖精で、森に住んでたまに人に悪戯いたずらしたりするイメージなんだが……この禿の露出狂がトロル?


 体長三メートルはあり、怪力で好戦的。デッサ、ダルア間の街道に居座ってるとの事。

 まじか、荷を受け取ったらデッサに帰らねばならんのだが。

 さてはグランカー、この事を知ってやがったな。だから大した交渉もなく取引が纏まったのか。


 まあ暫くすれば勇敢な冒険者に打ち取られるだろ。もしくは領主が軍をだすかもしれん。依頼の期限は荷を受け取って十日後、まだ余裕はある。

 



 夕方になり腹痛も収まった頃、取引場所に下見に向かう。

 商業地区の一角にある倉庫で、見張りがいるため余り近づけない。

 兵を潜ませる事が出来そうな場所を探るも多すぎる。なんせ周りは建物だらけだ。

 万が一の為の逃走経路を考えておく。受け取りの際は大丈夫だと思うのだが。



――――――



 二日たち荷物の受け取りの日になった。

 早朝から馬車を引いて指定の場所へと向かう。

 敷地の出入り口を守る護衛に名前を告げ焼き印の入った割符を見せると、すんなりと中に入る事が出来た。


 このまま進むと倉庫に向かうが馬車から降りて手で綱を引き、ゆっくりとした速度で向かう。

 綱を引くのはテンガ。俺は倉庫の周囲を探りつつゴブリン達を召喚して、フード付きのローブを着せて忍ばせる。近くの建物には既に数匹召喚して調査させている。

 姿を見られて騒ぎになったら、さっさとカードに戻してしまえば絶対に見つからん。これ暗殺者とかやったら誰にも防げないんじゃないか。


 倉庫周辺には不自然なほど人影がなく、ゆっくりと中に入ると木箱に腰掛けた男が立ち上がり、寝むそうな目でこちらを見るのであった。



 割符を見せてくれるかいと笑顔を見せる男に、「君さっきまで寝てたよね」とは言わずこちらも笑顔で応じる。

 この緊張感の無い男がフランツと言うらしい。

 お互いの割符を合わせると、一つの紋章になる。オニアス家の紋章だろう。


「じゃ、さっさと仕事しちまおうか」


 フランツがそう言って指をパチンと鳴らすが何も起こらない。

 「あれっ?」っと言ったあと大声で「おーい」と呼ぶと、暫くして大八車(リヤカー)を引いた男と後ろから押す男二人がやって来た。


「こいつをあんたの馬車に積む。それで俺の仕事は終わりさ」


 大八車に積まれていたのは木箱で、数は二十。紋章の焼き印が施されており、紐で十字に縛られ蝋で封じてある。

 これでは中に何があるか見る事は出来ない。しかも蝋が割れないように慎重に運ばねばならないだろう。

 所有権の問題でカードにする事は出来ない。単に荷物を預かっただけだからだ。


 男二人の手によってすぐに馬車に木箱が運ばれると、フランツは「俺だって何も知んねえんだ。聞いてくれるなよ」。そう言って、お互いの割符を交換すると去っていった。


 割符を交換する事により、取引が済んだ証明となる。後は何があってもお互い知った事ではないって訳だ。

 割符を依頼人に見せれば任務完了なのだろう。


 そのまま何事もなく宿屋に帰って来た。

 何だったんだ? えらく簡単に荷の受け取りが済んでしまった。

 ゴブリンまで召喚して警戒していたのに……。やはり何かあるとすればこの後だろう。街を出たあたりが一番怪しいんだが。


 しかし困った。今後は荷物の番をして、盗難を警戒せねばならない。宿の中とて安心は出来ないのだ。

 むしろ街の外で召喚した魔物に守らせた方が安全なのかもしれない。

 だが問題はトロル共だ。あいつらまだ居座っているらしい。召喚回数に限りがあるため、悠長に構えるわけにもいかない。



 荷物を宿屋の部屋まで運び、盗難に神経をすり減らしながら三日ほど待ってみたが、トロルは野放しのままだった。

 仕方なく、四日目の朝にデッサの街に向けて出発する事にした。

 不安だらけの旅路が始まったのであった。

 

魔物のカードの推移

 ゴブリン6➡ゴブリン5

 ゴブリン6➡ゴブリン5

 ゴブリン5➡ゴブリン4

 ゴブリン5➡ゴブリン4

 ゴブリン4➡ゴブリン3


 オーク 1―― 一枚

 ハーピー8―― 二枚

 ハーピー6―― 一枚

 チェシャ狼8―― 二枚

 フォレストスパイダー  5―― 一枚

 ジャイアントスコーピオン6―― 一枚

 

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ハードボイルドなファンタジー小説も連載しております。よろしければどうぞ 失われた都市ジャンタール
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