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消えたカードの行く先は  作者: ウツロ
第二章 行商編
28/50

総力戦―前篇

魔物のカードの推移

 ゴブリン7➡ゴブリン7

 ゴブリン7➡ゴブリン7

 ゴブリン7➡ゴブリン6

 ゴブリン7➡ゴブリン6

 ゴブリン6➡ゴブリン5

 オーク 2➡オーク 2

 フォレストスパイダー6➡フォレストスパイダー6

 ジャイアントスコーピオン7←NEW


 ますます酷い事になってしまった。どうしたもんか

 木に衝突したゴブリンに回復魔法をかけているとカードに戻っていった。

 ここで考える。そういえば殺した相手がカードになって生き返るんだよな、だったらカードに戻った時点で怪我が治るのでは?

 召喚した時剣や吹き矢を所持しているため、あらかじめ武装させておけばそのまま引き継がれるのでは。



 夜明けと共に再びダルアに向かう旅を続ける。

 朝の空気は冷たく、少し湿り気を帯びている。気温も低く肌寒い。

 やがて太陽は頭上へと進み、乾いた空気が喉の渇きを促す。革の水筒に口をつけ喉を潤すと、真っ直ぐ続く道に沿って馬車を走らせる。時折風に乗って流れてくる血生臭さが、鼻を刺激する。


 「後ろに吊るしてる生肉は何なの?」

 「いや、狼でも匂いに釣られて出て来ないかなと」


 馬車の後方には血を滴らせる肉が吊るされ、馬車の振動と共にブランブランと左右に揺れ動く。

 ぺぺは少し呆れた目でこちらを見た後、すぐに周囲の警戒に戻る。

 だって怖いじゃない、もっと戦力を強化しとかないと。最低限俺と君達の命は守る必要はあるし。

 テンガもそうだが二人はあまりこちらを詮索して来ない。割り切ってるのか何か目的があるのか分からないが、助かっているのは事実だ。裏切られない限りはある程度信頼していきたい。

 折角せっかく異世界に来たんだ、過去の自分をリセットしたくもなるじゃない。



 バンという音と共に少し馬車が揺れる。何だ、何かが当たった? 

 見ると頭上の帆が破れており、足元に何か転がっている。

 石? 上から落ちて来たのか?


「キュエー」


 突如響く甲高い鳴き声。上を見上げると巨大な鳥が頭上を旋回している。

 大きなかぎ爪に羽、それに連なるのは人の体。そして顎まで裂けた巨大な口を持った人の頭部。


「ハーピーよ」


 成程、次は空からですか。忙しいこって。

 ぺぺの弓も俺とテンガのクロスボウの矢もハーピーにはかすりもしない。

 向こうも動いてるし、こちらも動いている。当たる訳がない。


「キュエー」


 さらに聞こえる鳴き声を合図に、森の方からわらわらと集まってくる黒い影。

 ハーピーの群れだ。そのかぎ爪には石が握られている。


 マズイ。あんな大量に食らったらただじゃ済まない。盾だ、盾を用意しろ。

 三人が頭上に盾を構えた直後、バガガガという音と衝撃が襲う。帆は穴だらけ。荷台部分にも損傷が見られる。備えあれば患いなし、積んでいた武器が役に立ったか。


「ブモ~」


 突如蛇行しながら激しく走る馬車。なんだどうした。

 振り落とされぬよう掴まりながら、前をみると血を流し興奮しながら暴走する牛の姿がある。

 しまった、石が当たったんだ。自分の身を守るのに必死でそこまで気が回らなかった。

 牛は口から血の泡を吹いている。このままだと長くは持たない、いずれ馬車は横転するだろう。


「テンガ、肉を吊ってる縄を切れ。

 おい何やってんだ、そっちじゃない。空中を切るな、縄を切れ」


 揺れる馬車の振動のため手元が定まらないテンガは二人羽織りの様におかしな動きをした後、なんとか切断に成功。

 コロコロと転がる肉を確認してから馬車の操縦に意識を傾ける。


「止まれ、止まれ、大丈夫だ。ちゃんと傷を治してやるから。落ち着け」


 牛に話し掛けるも興奮状態で余裕が無いのか、そもそも通じないのか一向に止まる気配はない。

 牛までの距離はおよそ二メートル。回復魔法は届かないか。いや手綱は繋がっている。これは長い手だ。イメージしろ、細長い手で牛に触れているんだ。治れー。


 駄目か、効果無しだった。

 いきなりそんな都合良くいく訳ないか。仕方あるまい、牛さん御免よ。


 ファイヤーボールで牛をローストビーフにしようと手をかざした時、馬車の速度は落ちやがて停止した。

 おお、俺の気持ちが通じたか。牛との間に友情が芽生え……ないよな、やっぱり。


 前方を見ると、ズラッと並ぶ巨大な狼。チェシャ狼の群れだ。

 後方には肉に群がるハーピー。上空にも新鮮な肉を狙うハーピー。

 どうすんだよコレ。




 馬車を西から南に向け走らす。森に逃げ込むのだ。遮る森の木々が狼には効果は薄いがハーピーには有効だろう。何ならこちらを無視して潰しあってくれればいい。

 突然の獲物の方向転換に、狼とハーピーはしばし睨みあう形になるも、互いに適度な距離を保ちつつこちらに群がって来た。

 くそ、あっさり共闘しやがって。無駄に知能が高ぇ。


 森に向かって逃げる馬車を襲わんとする魔物を、ワンパターンのフレイムスロワーやマキビシ、弓、荷台に乗ってる堅そうな物などで牽制する。

 はやりというか、最も狙われたのは牛、まず機動力を奪おうというのだろう。ねちっこい攻撃に嫌気がさす。


 ハーピーが牛に覆いかぶさり爪を立てんとするその瞬間、目にも止まらない速さで荷台から糸が伸びハーピーを絡めとると引き寄せる。フォレストスパイダーの糸だ。荷台にこっそり召喚していたのだ。

 蜘蛛さん俺達を助けてと、曖昧な命令を出しておく。一匹倒した所でカードに戻られたらたまらん。フワッとした依頼で達成条件を曖昧にしておくのだ。これが長く召喚してられる秘訣だ……たぶん。


 勢いよく顔の横を通り過ぎたハーピーは数本の脚で抑えられ、ガッツガッツと頭から丸かじりにされている。いや~、グロい、グロ過ぎる。変な咀嚼音と断末魔の叫びも聞こえるし。


 今楽にしてあげるよ、ナイフを心臓の辺りにグサッと一突き。ハーピーはカードになった。

 獲物を奪われた複眼がこちらを睨む。いやゴメンて、まさかトドメを刺せるとは思わなんだんや。怖いから、こっち見ないで。



 そうこうしてる内に森に逃げ込む事に成功。木の根で横転せぬうちに馬車を止め、荷台を中心に防衛拠点を構築する。

 ゴブリン五、オーク、ジャイアントスコーピオン、ハーピーを召喚。総力戦となる。


 


魔物のカードの推移

 ゴブリン7➡ゴブリン6

 ゴブリン7➡ゴブリン6

 ゴブリン6➡ゴブリン5

 ゴブリン6➡ゴブリン5

 ゴブリン5➡ゴブリン4

 オーク 2➡オーク 1

 フォレストスパイダー  6➡フォレストスパイダー  5

 ジャイアントスコーピオン7➡ジャイアントスコーピオン6

 ハーピー7➡ハーピー6

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ハードボイルドなファンタジー小説も連載しております。よろしければどうぞ 失われた都市ジャンタール
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