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消えたカードの行く先は  作者: ウツロ
第二章 行商編
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戦力

 三人で手分けしてオニール達を探す。酒場、商業区、一般区などで立ち寄りそうな所を巡るも見つからない。

 ギルドでの聞き込みの結果、オニール達はルクセリオに急遽旅立ったとの事。逃げられたか。

 ゴディバは情報すら無く、何処にいるのか分からない。

 荷物の受け取りは十日後。あまり猶予はないだろう。



 翌日、二人を連れて狩りに出かける事にした。

 扱えるカードは現在6まで。オークのカードは4だが、ゴブリンに至っては1、どちらも一枚ずつ。圧倒的に戦力が足りない。

 少しでもカードを充実させるべく、森へ足を運ぶ事にする。

 

 途中草原でスカルバッファを見かけたが、遠くの方にゴマ粒程度の大きさで、砂糖に群がる蟻のごとく大量にいる。

 体高二メートル、ヘラジカ程の大きさで体重は優に一トンを超えるだろう。使い方次第ではいい手駒になるんだが……群れの動きに注目しつつ進む。


 森に足を踏み入れてから程なく、三メートルほどの深さの窪地を発見した。

 事前に用意していた長い木の板を並べ、簡易の落とし穴とする。真ん中に新鮮な肉を置いて、それを取ろうとした大物が落っこちるって寸法だ。

 周りを落ち葉でカモフラージュし、木に目印を付けてから森の探索をまた開始する。


 ぺぺとテンガは若いとはいえ、冒険者なだけあって人の手の入らない森の中を上手く先導してくれる。

 途中引っかかる蜘蛛の巣が鬱陶しいが、剣を鉈代わりに森の奥へと突き進む。



 異変は突然やって来た。

 前を歩くテンガの外套がポンと上に飛んで行ったのだ。

 凄くシュールな光景だった。コントで破れやすい服を紐で引っ張って裸になるみたいな……。


「テンガ避けて! 上よ!」


 ぺぺの声に反応したテンガは後ろに飛び退き槍を構える。

 上? 視点を上に向けると、木の枝に隠れる様にデカい蜘蛛が、ガリガリと外套をかじっていた。

 おお、相変わらず気持ち悪い。八本の脚が別々の動きをし、無機質な複眼がこちらを見据える。


「オーク召喚」


 オークの巨体が木を揺らす。相撲取りよろしく木に体当たりを掛けたのだ。

 フォレストスパイダーは落とされない様蜘蛛の巣に掴まるためか、動きが止まる。

 いいぞ。すかさずクロスボウを発射するも矢は当たらず、森の奥へと飛び去っていく。


 更に木を揺するオーク。その隙に矢を装填しようとした矢先、木を揺する振動の反動を利用したフォレストスパイダーは大きくジャンプして目の前に降りて来た。


 四本の後ろ脚で体を起こし、残りの脚でこちらを捕らえんとガサガサと動かす。その奥には鋭い牙のある口が獲物の肉にかじり付かんと大口を開ける。

 ギャー、悲鳴を上げながら逃げ惑う。振り返るとぺぺは弓で、テンガは果敢にも槍で牽制。

 丸腰の豚さんには両手斧をポイっと投げ渡す。

 それを華麗に片手でキャッチしたオークは、ブモーと雄たけびを上げながら突進。

 齧られながらも斧の一撃を叩きこんだ。


 勿論トドメはファイヤーボール。四人から袋叩きにあったフォレストスパイダーはカードとなって、ひらひらと舞い落ちるのだった。



 俺達は意気揚々と探索を続ける。勿論蜘蛛の巣を巻き巻きして、糸巻き棒を作るのも忘れない。

 その後、特に何も出会わず、軽食をすませた後探索を切り上げる。



 帰路の途中テンガが何かを発見した。

 皆に静かにする様うながし、彼が指差した先に居たものは、切り株に腰かけコックリコックリと居眠りするゴブリンの姿だった。


 これは千載一遇のチャンス。一撃で仕留めるべく、ゆっくりと間合いを詰める。

 ここは角度が悪い。この木を迂回して影から狙…………。


 突如足元にあった木の板が跳ね上がり、先端についた突起物が足に突き刺さる。


 ぐあぁ、と呻き声を上げながらよろめいた瞬間、「ズボッ」と片足が穴にはまる。

 落とし穴だ。小さいがご丁寧に杭が上に向かって設置されており、分厚いブーツを貫通して足の裏に突き刺さる。


 痛みを押し殺し慌てて顔を上げる。するとそこには、こちらを見てニヤっと醜悪な顔で笑うゴブリンの姿があった。



「オーク召喚」


 こちらの召喚と時を同じくして、がさがさと繁みから湧き出すゴブリン。その数五。


「逃げろ!!」


 俺はオークに抱えてもらい、テンガとぺぺも一目散に逃げる。

 吹き矢を構えるゴブリンには、フレイムスロワーで牽制。樽を召喚したり、マキビシをばらまいたり嫌がらせに徹する。


「ゴブリン召喚」


 タイムラグを付けて追うゴブリンの後ろに上手く召喚する事に成功。ステルスアタックで数を減らしてもらう事を期待。



 息が切れはじめ、牽制も限界に達した時、前方に目印を発見する。


「エムさん!」

「左右に分かれろ」


 俺とオークは左、テンガ達は右に目印を迂回して走る。


「バガン」と音を立てて木が割れる音がする。

 俺達を捉えようと最短コースを走ったゴブリンが四匹、木の板を突き破って穴に落ちていった。


 一匹は踏みとどまったが、召喚したゴブリンに後ろから蹴落とされて穴へと消えていく。



「フハハハ、一網打尽じゃわい。食らえフレイムスロワー」


 指先からほとばしる火炎の嵐は、無慈悲にゴブリンを焼き尽くしていく。

 業火に焼かれたゴブリン達は、7と6の五枚のカードとなって我が手駒となった。

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ハードボイルドなファンタジー小説も連載しております。よろしければどうぞ 失われた都市ジャンタール
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