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消えたカードの行く先は  作者: ウツロ
第二章 行商編
25/50

紋章

 五日かけてデッサまでたどり着く。街の門をくぐり、まずはギルドへ向かう。

 倒した魔物を売却し、山分けする。殆どオニール達が倒したが気にしない。

 

 次に受付カウンターに向かう。テンガ達が受けていた依頼の完了報告だ。

 オニール達とエールを飲みながら待っているとギルド職員がツカツカと歩いてくる。


「おい、新人。名札を掛けろと言っただろ」


 やだよ面倒臭い。


 さらにギルド職員は荷物運搬の指名依頼があると言う。

 まさに取って付けた様な依頼で、いかにも胡散臭い。


「ダルアの街まで荷物を取りに行ってもらう」


 えー、今そこから帰って来たとこなんですけど。無駄すぎ。

 とんだ二度手間、損した感じで嫌だよ。


「ぶはは、風呂上りにウンコしたくなったみたいなもんか」


 全然違ぇよ。オニールは余計な口を挟むんじゃねぇよ。


「風呂上りにウンコするみたいで嫌だ」と、きっぱり言ってやる。


 目を三角に釣り上げたギルド職員は貴族のオニアス様からの依頼だから断れないなどと、虎の威を借りてくる。

 そもそも誰だよ。貴族に知り合いなんていねぇよなんて考えてると、周りがザワザワし出したのに気づく。

 先程まで笑っていたオニールも「用事があるから」などと言って、露骨に逃げ出す。

 トラブルの可能性が濃厚だ。何とか断らなければ……。



 無理だった。

 仕方あるまい権力には逆らえん。

 ダルアの街で仕入れた品を売りにいく事にした。結果は以下の通りだ。

 1、岩塩――――――――――――100銀➡100銀

 2、鉄鉱石―――――――――――100銀➡160銀

 3、干し肉―――――――――――100銀➡114銀

 4、陶磁器―――――――――――100銀➡130銀

 5、残ったリンゴ―――――――― 腐った


 会計――――――――――――――400銀➡504銀


 おお、黒字だ。チマチマ依頼をこなすのが馬鹿らしくなるな。

 まあ冒険者としては殆ど活動していないが。



 次は……貴族の依頼とやらか、憂鬱だ。詳細は邸宅の方で聞いて来いなんて言われたが、それギルドの仕事じゃないの? 仲介業者としてピンハネしてるだけじゃねぇか。

 ぶつくさと文句を言いながら邸宅のある特別区に向かうと、門番と呼ぶべき二人の兵士に足止めされる。


「何者だ」


 エムです。依頼でオニアス様に呼ばれまして。


「貴族もしくはそれに連なる者、紋章付きの証書を持つ者以外は通ること、まかりならん」


 まかりならん言われましても……来いと言うから来たのにこの仕打ち。

 これはあれですか、このはし渡るべからずみたいなトンチで切り抜けろって事ですか。よし、ガツンとかますか。

 えっと、ん~と……


「帰れ!」


 はい……。トボトボと引き返す。

 以前利用していた宿屋へと向かう。ぺぺがベッドを確保してくれているはずだ。

 そこで皆と相談してみるつもりだが、最悪トンズラする事も考慮せねばならないだろう。


「あ、帰ってきました」 


 テーブルを挟んでペペ達の向かいに座る男は声に反応して振り向く。

 彼はほんの一瞬鋭い眼つきになったが、すぐに笑顔になり立ち上がってこちらへ歩み寄る。

 年の頃は29、30ぐらいだろうか、体の線は細いがしっかりと鍛えられているのが服の上からでも見て取れる。

 

「始めまして、エムさんですね。サラセイルと申します、依頼を受けて頂いてありがとうございます」

「…………どうも」


 差し出された手を握る。力強い手、日頃から剣を握る男の手だ。いや農作業用のくわかも知らんが……違いなんぞ分からんし。

 何か不気味というか、得体の知れない雰囲気がただよう男だ。


 「じゃあおいら達は部屋の方へ」などと言って逃げようとする二人を阻止し、席に着かせる。

 逃がさんよ。というか俺を守れよ。


 男の話によると、ダルアの街でフランツという者から荷物を受け取り、デッサの街の所定の場所まで運ぶ仕事だと言うが……。

 木の札を手渡される。何やら紋章を焼き付け、半分に割った片側だ。受け取りの際に相手と合わせて一致するか確認するための物のようだ。


 「オニアス邸の方から来た、と言って受け取るだけです。簡単でしょ?」などと言う男。

 コイツ……。



 サラセイルは何度か邸宅の方へ来るよう誘ってきたが断った。

 マズイ事になった、嫌な予感がする。何か手を打たねば……。

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ハードボイルドなファンタジー小説も連載しております。よろしければどうぞ 失われた都市ジャンタール
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