表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
消えたカードの行く先は  作者: ウツロ
第二章 行商編
20/50

純粋は美徳

 孫子(いわ )く「敵をあざむくには先ず味方から」

 エム(いわ )く「敵をあざむくどころか自分を見失った」


 そう私は今、危機に瀕している。

 怒り狂った狼達が私の肉をほっして群がって来るのだ。



 「クソ、油って爆発しねぇのかよ」

 高価な油は一瞬でゴミと化した。

 だが音に驚いて足が止まった狼に、矢が突き刺さり出鼻をくじく。

 どっちの矢か知らんがいいぞ。

 魔法は触媒を使った。

 アンに教えて貰った火の魔法の触媒「炎石えんせき欠片かけら」あれ高かったんだぞ。

 だが完全に無駄という訳ではなかったようだ。顔に掛かった油の匂いが不快らしく、胸に擦り付けている個体が邪魔して足並みが乱れている。

 ぺぺとテンガの二人は端により、樽の影から少しでも数を減らそうと、必死で矢を放つ。


 「エムさんこの先に岩場があります。馬車で入口を塞げば少しは持ちます」


 君、一度しか通った事無かったよね。

 ホンマか、ホンマに信じてもエエのんか?


 前方に巨大な岩が見えてきた。なるほど岩が折り重なる様に立ち、浅い洞窟のようになっている。

 隊商の休憩ポイントなのだろう。今は誰もいないが。


 「打つぞ、フレイムなんとか」


 指先から火炎放射器の様な炎が出る。おお!油に引火した。転げ回って火を消そうとする狼でパニック状態だ。

 その隙に岩場へ逃げ込む。牛も必死で走る。彼女も食われたくはなかろう。

 頭から突っ込み荷台で入口を塞ぐ。


 「召喚! 樽、樽、樽」


 水の入った樽を召喚しバリケードとする。


 「ぬおおー来た」


 バリケードなどお構いなしに大きな口で襲い掛かってくる。


 「ファイヤーボール」


 マズイ、クラッと来た。あと二回が限度か。

 炎の玉は狼の口から入り、「バグン」という音と共に頭を破壊、そして炎に包まれる。

 そして狼はカードとなり、ひらひらと舞い落ちる。


 そこへ他の狼が我先にと雪崩れ込み頭を突っ込む。

 大口を開けて、こちらを食わんとひしめき合っている。

 今はお互いの体が邪魔で入れないが時間の問題だろう。


 超怖い。テンガは腰が引けている。ぺぺは涙目。俺はもう腰が抜けている。


 だが「狼、召喚!」


 群がる狼達の後ろに召喚してやった。ケツに咬みついてやれ。



 突如背後から仲間の狼に襲われ、パニック状態になる。

 ここぞとばかりに弓矢で反撃。足元に嫌がらせのスライムを召喚するのも忘れない。

 俺はファイヤーボールを飛ばす。さらに狼がカードとなる。

 すぐさま召喚。さらにパニックが加速する。

 もうひっちゃかめっちゃか、敵味方関係無しで咬みつきあう。

 怖いので遠くからクロスボウで、ちまちま援護。だが俺にもどれが味方か、もはや分からん。

 フレンドリーファイヤーしてたら許してちょ。


 混戦を制したのは我が精鋭の狼君。ケツに刺さった矢は俺のじゃないよね。役目を終えた彼は、カードに戻る。

 残念ながらもう一頭はお亡くなりになっていた。死んだらカードに戻らないのね。


 しかし二人にはカードの召喚をばっちり見られたな。どう誤魔化すか。予想より馬鹿だと助かるのだが…。

 チラッと見るとペペがネッチョリとした目でこちらを見ていた。


 「今の召喚魔法ですか? オイラ初めて見ました」

 「お、おう」


 流石テンガ君純粋ですな。ペペさん、オクラのような粘っこい目で見るのは止めて下さい。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハードボイルドなファンタジー小説も連載しております。よろしければどうぞ 失われた都市ジャンタール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ