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消えたカードの行く先は  作者: ウツロ
第二章 行商編
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旅立ち

 ダーコイズの様なその瞳は深く、遠くを見つめる。

 すらっと伸びる足は余分な脂肪が無く、美しくもありながら力強い。それに連なる臀部は優しいカーブを描き、風に漂う亜麻色あまいろの髪が見るものを拒むかの様に覆い隠す。

 俺は首にそっと手を置き優しく撫でる。

 気持ち良かったのだろう、甘えた声をだす。


「モォェー」


 そう牛だ。

 高かった。幌をかぶせた幌馬車ほろばしゃの荷台とセットで俺の資金の半分以上が持っていかれた。


「エムさん荷物積み終りました」

「終わりました」


 彼らは護衛に雇った冒険者で、荷を馬車に積む手伝いをして貰っている。

 勝気な女の子ペペ、シャイで口下手なテンガの二人だ。


 これから隣町ダルアへ向かう。

 道なりに進んで行けば到着するらしいが、彼ら二人は経験が浅く一度しかダルアへ行った事が無いらしい。勿論俺は一度も無い。

 はっきり言って不安だ。しかしもう金が無い、やるしかないのだ。




 カッポコカッポコと荷馬車を走らせる。御者ぎょしゃつとめるのは俺。

 進む、止まるさえ出来れば何とかなる……はず。無理なら殺してカードにするしかあるまい。

 俺は犬派だ、牛ぐらいイザとなれば……


 馬車の操作は最初は苦労したが、一定の速度で歩かせるぐらいには出来るようになった。

 元々隊商の牛らしく勝手に道なりに進んでくれるので何とかなっている。

 道といっても舗装などされていない、ただ人や馬車が通る事により踏み固められた程度の道だが。


 


 最初に気付いたのはぺぺだった。


 「エムさん何か付いて来ます」


 振り返って見てみるも帆が邪魔でよく見えない。

 隣で前方を警戒していたテンガも後方を確認する。


 「狼だよ、みんながチェシャ狼って呼んでる」


 何だよそれ、強いのか?君ら二人でなんとかなんの?

 二人で掛かれば大丈夫との事。本当かよ。


 「ぺぺ、弓で射れるか?」

 「動いてたら無理。馬車を止めて」


 馬車を止め後方を確認する。居た、確かに狼だ。対象物が無いからよく分からんが、大きそうだ。

 一旦馬車を降りペペの隣で観察する。胸、結構あるな…。


 テンガには周りを警戒してもらい、ぺぺと狼を見据える。

 狼は足を止めこちらをじっと見詰める。

 「ビンッ」ぺぺが弓を射った音が聞こえた。カポッ。

 かなりの距離があったが、狼の手前数メートルの地面に突き刺さる。

 狼は数秒こちらを見た後、体を反転させ走り去っていった。カッポコ。


 「あのエムさん…」


 ああ、分かってる。用心深い奴だ、これで諦めたとは思えない。カッポコカッポコ。


 「エムさん馬車が…」


 何?慌てて後方を振り返る。

 そこには無人のまま遠ざかっていく馬車の姿が…。


 

 クソッ、待ちやがれ。慌てて追いかけるが、馬車は優雅に遠ざかっていく。

 三人で走る。結構全力だ、無一文になっちまう。馬車との距離が次第に縮まる。


 「エムさん後ろ」


 今度はなんだよ。

 後ろを振り返ると狼がまた付いてきていた。それも二頭。

 ふざけんな!


 そっからは必至だった。走る馬車、追いかける俺達、それを追いかける狼。

 ぺぺが弓矢で牽制しつつなんとか馬車の荷台に乗り込む事に成功、一旦馬車を止め荷台後方から弓を射る。俺とテンガもクロスボウで援護。

 狼がちょこっと横に避けるだけで、矢はかすりもしない。

 二頭の狼はこちらを一瞥いちべつすると、また背を向け遠ざかっていく。


 不味いぞ、どうしたらいい?三人でオロオロする。

 とりあえず馬車をそのまま走らせる。周りを見渡しても人っ子一人いやしねぇ、颯爽と現れる騎士とかいねぇのか。


 それからしばらく狼の姿は見なかった。僅かな時間で牛に水と餌をやり、交代で食事をとりつつダルアの街へ馬車を進める。

 これ以上は不味い、次現れたら反転して攻撃に移るか。あまり見せたくないが魔法や切り札のゴブリンなんかを召喚する必要も考える。



 のんびりした時間は長くは続かなかった。


 「エムさん出ました」


 後方を確認すると狼。堂々としたたたずまいをみせる。その数四頭。

 だと思ったよ、倍々ゲームかよ。

 ん?後ろからスライドする様に更に四頭が姿を見せる。合計八頭が猛然と襲い掛かって来た。


 「逃げろ、逃げろ、逃げろ」


 必死で牛に鞭を入れる。だがその速度はゆったりしたものだ。すぐに追いつかれるだろう。


 しょうがねぇ、とっておきだ。


 「テンガ、そこにある樽を落とせ」


 事前に決めた通り、油のたっぷり詰まった樽を御台から蹴落とす。

 樽はゴロゴロと転がり狼の群れに突き進む。


 「今だ!ファイヤーボール」


 指先から出た野球ボール程の炎の塊が真っすぐ飛び、樽の中心へ突き刺さる。

 

 砕け散った樽は大爆発……はせず、辺りに油をまき散らすだけだった。


 「うそ~ん」

元々ベタなネタが多いですが、今回特に冒頭部分がベタな為、他の方の小説と被っている可能性が考えられます。あまりに文章が似通っているようでしたら削除しますので、ご一報下さい。

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ハードボイルドなファンタジー小説も連載しております。よろしければどうぞ 失われた都市ジャンタール
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