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消えたカードの行く先は  作者: ウツロ
第一章 冒険者編
14/50

お出かけ

 翌朝待ち合わせ場所へと向かう。例の三人組は既に来ている。軽く挨拶をする。


 「今日はよろしく頼む」とゴディバ。


 え?という顔をする三人。


 そう、ボディーガードとしてゴディバに依頼を出したのだ。

 頼れる男ゴディバ。最初は渋っていたが、ジャックの話をすると了承してくれたのだ。お値段10銀とボッタクられている気もするが、安全には変えられない。

 今回初めて依頼を出したのだが、申請書類の代筆をコーン君に頼んだ。コイル君は何か言う度に「コールです」と口答えしてくる可愛げの無いガキだった。


 準備は万端。念のため樽に水をたっぷり入れてカードにしてある。

 背嚢を背負い、肩にはクロスボウを吊るす。

 背嚢にはほとんど何も入って無い。体力温存のためだ。何とカードの力の偉大な事よ。


 一行は南門を出て道沿いに西へと進んでいく。

 歩く順番は、ビューイ、オニール、アン、俺、ゴディバの順だ。


 遠くにバッファローの群れらしき姿が見える。


 「あいつはスカルバッファ、草食だ。近づかなきゃ襲っては来ない。何かに追われて走ってくる事があるが、進路には絶対立つな。踏まれたら助からねぇ」


 他にも色々ゴディバのレクチャーが入る。さすが頼れる男、尊敬するっス。


 旅のルートとしてはとにかく西に進んだ後、南下し、南の森を抜け、ジャックがいたであろう川沿いポイントへ向かい探索する。

 疑問に思う。地図では街のそばの川が南へと続き、森の中を進む。川はやがて西にカーブし、ジャックポイントへと辿り着く。ならば最初から川沿いを歩けばいいんでないの?と。


 前を歩く三人に聞いてみる。


 「南の森はな、森の民のテリトリーだ。そいつを避けるため出来るだけ西に進むんだ」


 もりのたみ?森の民?………それはもしかしたら…エルフちゃうんか!


 「それにこの辺の道はダルアの街との貿易路だ。月一の隊商たいしょうもここを通る」とゴディバの補足が入る。


 待って待って、森の民について詳しく!

 俺の声はゴディバの声にかき消される。


 「ついこないだ間引きもあったしな、なるべく安全な道を歩く方がいい」


 「あの、森の民の…」

 「だがな、間引きで魔物のテリトリーが変わると危険な奴が入り込んでくる場合がある。注意しろ」


 「森…」

 「そうだしばらくしたら森に入る。危険な生き物が多い、毒蛇なんかを踏まんようにな」


 「……」

 「特に危険なのがフォレストスパイダーだ。糸で罠を張る上、積極的に襲ってきやがる」


 「うるせぇ!このチョコ野郎やろう!!」




 やがて一行は森の中へ足を踏み入れる。

 ゴディバには転移する際持っていた残り少ないチョコをあげた。ご機嫌取りだ。

 チョコ野郎…チョコをやろう……なんてな、ハハ。





 幾つもの木が行く手を遮る。足元に生える草は五十センチ程だろうか。オニールが剣を振るい道を開くもとげの付いた枝や蔓が体に絡みつく。

 先頭のビューイは器用に隙間をスルスルと抜けていき、耳を澄ます。やがて手招きすると皆が後を追う。

 やはり森は魔物の領域なのだろう、警戒した歩みに進む速度が低下する。

 

 ビューイが左手を軽く上げ、皆の歩みを止めると素早くナイフを投擲、木の幹に止まった大きな蛾に突き刺さる。

 蛾の羽模様は、まるで目の様で気持ち悪い。「鱗粉には毒があるから気を付けろ」とゴディバが教えてくれた。

 タオルで口元を押さえたビューイはナイフを回収すると、また歩きだした。


 

 ビューイがまた立ち止まって手を上げるとチョンチョンと右手前方を指差す。

 目を凝らして見て見るも何もない。


 「コイツは多分フォレストスパイダーの糸だな。木の間に張って獲物が触れた時の振動で検知するんだ。触るなよ」


 近付いて確認すると、なるほど細い糸が見える。よくこんなの気付くな。


 ビューイは警戒しつつ進むと、また指差す。少し進みまた指差す。その数がどんどん増えていく。

 やがてビューイは右手を上げ、指を一本立て、そのまま前方を指差す。

 魔物が一匹居るのハンドサインだ。


 何も見えないんだが…。


 オニールが剣を構える。後ろのゴディバは何時の間にか俺の前へと出ている。アンは何やらモゴモゴと言っている。

 ビューイが前方の茂みにナイフを投擲。黒い影が飛び出し木の幹で跳ね、オニールに飛び掛かる。

 剣を振るオニールと交錯すると、両者は弾かれる様に距離を取る。

 蜘蛛だ。一メートルはあろう巨大蜘蛛は足の一本が千切れ、ドロリと青みがかった半透明の体液を流す。

 あの一瞬で切り落としたのか。

 剣を構えるオニールは引っ張られる様に前にでる。追撃?いや、違う。胸に付けられた糸を巨大蜘蛛が前足を使い器用に巻き取っている。


 突如飛んできた白い塊が巨大蜘蛛の側面に当たる。すると、パキパキと音を立てて凍り始める。アンの魔法か。

 駆け込んで来たビューイがオニールに付けられた糸を切り飛ばすと、すぐさま角度を変え蜘蛛に切り掛かる。

 ビューイが足を数本切り飛ばす隙に、素早く間合いを詰めたオニールに体を深々と剣で貫かれた巨大蜘蛛は、その生命活動を停止した。

 

 



 


 


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ハードボイルドなファンタジー小説も連載しております。よろしければどうぞ 失われた都市ジャンタール
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