第六話
幼馴染の声が聞こえ、気づいた時にはガルムから解放され後ろを向いた時にはすでに華奈がガルムを倒していた。
突然襲われたため胴を真っ二つにされ電撃によるためか周囲に焦げ臭いような匂いが漂っている。
「ありがとう。助かったよ。」
「ううん、仲間のピンチを助けるのは当たり前だよ。」
「そうか、そうだな。」
「うん、だから渚もあまり気にしないの。命ある今は過去を気にするより、同じミスを起こさないようにすればいいんだから。」
と、そこで不意に視線を感じ視線を動かすとこちらをニヤニヤみているバカと暖かい目でこちらを見守る仲間の姿があった。
「な、なんだよ。」
「いや、なに。俺らの方のガルムが片付いたんでこっちに手伝いしようと思って来てみりゃちょうど華奈が助け出したところだろ?」
「しかも大丈夫?的なセリフ言う前に二人だけの空気作ってるわけだから。」
「見守るしかないよね?」
「うん。見守るしか....なかった。」
と、各々の感想を口にする四人。その言葉にさすがの二人も顔を赤くして反論する。
「いや、さっきのはそういうんじゃなくてだな。」
「そう、さっきのは反省!賛成してる?ていった感じのやり取りなのだから皆が思ってるようなことじゃなくて!」
「必死になってるあたり....怪しい。」
「これは裏がありそうね。」
二人の反論も全く効果がなく逆に怪しまれるだけだった。
「あーもう、この話はやめだ!それでケガしたやつはいるのか?」
この悪循環を止めるため渚は話を強引に逸らすことにした。
しかし
「あの、私さっきガルムに攻撃受けて軽い切り傷が。」
おずおずと手を挙げたのは華奈だけであり他のものは誰一人たりとも手を挙げていなかった。
するとそこに雅彦と那津美が絡みだす。
「おいおい渚。稲美さんが怪我したってよ。」
「やっぱ彼氏さん的にはここは優しく介抱してあげなきゃいけないよね?」
「華奈....俺が傷の手当てしてやろうか?」
「これくらい一人でできますわ。」
「わからない奴だな。俺が華奈の手当てをしてやりたいんだ。」
「渚....それなら手当てしてもらおうかしら。」
「なら、皆がいないこっちで手当てをしてあげよう。」
「そして二人は誰もいない物陰で心身ともに癒しましたってね?」
「ムッツリか貴様らは!!」
「そうです!何を急に言い出すんですか!そういうのはちゃんと段階を踏んでから!」
「段階踏んだらありなんだ。」
「どうしよう、旅の途中で華奈に....赤ちゃんできたら。」
「そんなことしないですから!」
なんだか話が変な方向に進みだしそこに雅彦と那津美がかき回す。それに渚と華奈がさらに話がおかしくなりそこに巌と珠美が冷静に突っ込みを入れる。そんなやりとりを交わしようやく落ち着いてきたところで再び渚が先と同じ質問を交わす。
「それで今度こそ真面目に聞くが怪我してる人は華奈だけなんだな?」
「おう、俺は特に怪我なしだ。」
「私も特にないかな?」
「僕もないよ。」
「私もない。あえていうなら.....疲れた。」
「そうか、特に大事ないようでよかった。」
「そうだよね。私たちの中に回復できる能力持った人いないもんね。」
そのことに皆頷く。そうこのメンバーには回復系のことができる能力を持った人がいないのだ。珠美は出来そうなのだが本人いわく回復向けの能力ではないらしい。そのため、重傷の人が出るとその人は暫くの間戦闘不能と考えてもいいくらいであるので大きな怪我はしないよう皆心がけながら戦っている。
今回は華奈が切り傷を負ったぐらいで済んだが最悪渚が死んでいた可能性もあるのである。死んでいなくても重傷は確実であり養生するため暫く前線には出れなかったであろう。
「今回は本能で行動している魔獣だったからいいが理性ある魔獣の場合はもっと慎重に行動しよう。」
「そうね。今回の戦いで楽観視できる状況じゃないってことを改めて知ることができたからいい勉強になったかな。」
「さて怪我の確認はここまでにして先に進むとするか。」
渚の言葉に全員頷き先に進むのであった。