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9、従順家来 ~あくまでも真摯に接します~

「みんな。陛下にかけあってみたら、オッケーだってさ。今すぐ装備と資金を用意するって」


 海王が嬉しそうに皆の所に戻ってきた。


「おお! マジ!? やったぜ!」


 いち早く西治が喜ぶ。


「面白そうじゃん」


 続いて友理も乗り気になった。


「何か陛下も乗り気で聞いてくれてさ。遠征の計画とか複数のプランを考えさせるとかなんとか言ってたから、あと数日すれば準備が整うって。それまでは城下町を探検してくるといいって言ってくれたよ」


「やっほー! それじゃ、言ってみよーぜ!」


「西治、はしゃぎすぎだ」


「ははは」


 皆が微笑を浮かべ、緊張感の無い感じで駄弁りながら王宮の外へ向かった。


 本当、最近の若者の適応力って素晴らしい。






          ――――――――――★――――――――――






 恥ずかしい。


 ああああああああ! めっちゃ恥ずかしい!


 演技に自信があるとかそういうんじゃなくて、もうとにかく恥ずかしい!


 何だよ、あのキャラ。どこのどいつだよ。


 堂々と城を脱出した俺(とメイドさん)は現在城下町にいる。


 レノクターン王国城下町『ムーンセティア』。


 随分と広い場所である。


「ええっと、ミネルさん?」


「は、はい……」


「その、さっきは少々強引に、申し訳ない」


「い、いえ! そんなことないです! その、助けて下さって……」


 恥ずかしさが止まらないのでミネルに声をかけてみたのだが、更に恥ずかしくなってしまった。


 恥ずかしいと言えば、ミネルの格好も相当恥ずかしいのではないだろうか。何せメイドである。メイド服である。


 街中でメイド服はどう考えても恥ずかしいのでは、と思ったが、案外周りの人間もファンタジー風の服を着ていた。


 この世界はどうもファンタジー風であるようなので、そう考えればメイド服も大丈夫か。


「さて。これで晴れて君は自由の身になった訳だ。そりゃ見つかればまた捕まっちゃうだろうけど、どこか遠くへ行けば安全なんじゃないかな。君の実家……は無理か。まあ、生きる手段っていうのは意外とあるものだから」


 とか言っておきながら昨晩も考えた通り、この年代の少女が一人で生き抜くのは少々辛いだろう。

 さて、どうしたものか。反応をうかがってみる。


「え、あの、私……」


 困ってますね。そりゃそうだ。いきなり家から連れ出されて城に連れて来られ、今度はその城からも逃げ出したのだ。もう居場所はない。脱出させた本人が言うのも何ですが。


「あの、勇者様は……お戻りに、なられない、のですか……?」


「ああ、昨日も言ったでしょう。俺は本物の勇者じゃない。だからあの場所にいればいつかばれる。そうなる前にさっさと自分で生きる糧を見つけようと思ってな」


 ん? 待てよ? 今まで逃げ出すことで精一杯だったから気づかなかったけれど、ここで俺がメイドさんを誘えばこれはもうフラグ立ちまくりなのではないだろうか。


 ……とか策略を立てている時点でなんか変態っぽいからやめておこう。


 これが本気でメイドさんに惚れているのだったら計画的に惚れさせるのは恋の勝負の一つとしてありだと思うが、何せ俺の抱いている感情はただの下心である。


 これで万が一好きにでもなられたら俺はどうしたらいいのか分からなくなってしまう。何? ラブコメ突入するの?


 となってしまうため、俺から誘うのはやっぱり道徳的にNGである。


 だが……


「えっと、その……」


 どう考えても行く当てのない少女をこのまま放置するのは良心が痛む。あくまでも良心が。


「……その、何だ。何か、取り敢えず落ち着くまで俺についてきます?」


 どうも彼女相手だと口調が統一されない。


「あ……はい!」


 ちょっ、そんな嬉しそうな目で見ないで!


「う、うん、そっか分かった。じゃあ、改めてよろしく。俺の名前は煌々川綺慧瑠。キエルと呼んでくれ」


「は、はい! 私はミネル・トリアスタと申します。よ、よろしくお願いします!」


 うわっ、何この生き物。超可愛い。


「そ、そうだなぁ。せっかくこんな世界に来られたんだから、色々と観光してみたいんだけど、それより先に――」


 自分の力を知りたい。


 これは極々普通のことである。


 何せ勇者として呼ばれたのだ。例え偽物だとしても、勇者な訳だし、その実力を知りたいと考えるのは当然のことだと思うのである。ほら、よく偽物の方が強いとか言うじゃん。


 まあそれを考慮に入れずとも、ぽいっと放り出された異世界で自分がちゃんと生きていけるのか、それを知っておく必要はある。


「街中探索も面白そうだけど、ちょっと外れの方に行ってみようか」


 見れば遠くには草原が広がり、またその奥には川や森といった自然が溢れている。自然には恵まれているようだ。


「はい! お供します!」


 本当に貴族の娘だったのだろうかと疑う程、ミネルは家来的ポジションを全うしていた。使用人を見て学んだのか、それとも元々適応能力が高いのか。


 ふう。


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