81、抽選の神獣大会 ~どんだけピンポイントに引いてんだよ!~
大会前日になってしまった訳だが、今まで何をしていたのかと言うと、それは訓練である。訓練とは、勿論『神獣大会』に向けてのものだ。
数日しかないとは言ってもその大会様式等は知っておかなくてはならないので、獣人アギルに色々と教えてもらったのであった。
その中で特に問題だったのが、大前提としてのルールである。
武を競い合う大会だから当然なのかも知れないけれど、この大会では原則として魔法の使用が禁止されているのだそうだ。この制限をつけられてしまえば、俺は基本的に何もできない。
ただ、自分の身体能力のみに関わる魔法なら使用可能らしい。つまりは身体強化である。スピードアップとかパワーアップとか、そういうのは使っても問題ないということだ。
もしそれらも使用禁止だったら完全に俺の手立てがなくなる所だった。
そんな訳で、半ば冗談のように出場することになってしまった俺だが、出場するからにはそれなりに頑張ろうと思う。
ほら、よくいるじゃないですか、何か変にカッコつけて「俺、別に本気じゃないから」みたいな感じのことを言う人。キザっていうの? そういうのは俺の性格に反するんだよね。
やるからにはそれなりに頑張る。これ大事。まあ、本気とまで言い切るには少々自信が足りないけど。
だが、それならそれでいいではないか。今回のこれもまた経験ということで。
そんなに緊張する必要はない。うん、全然ない。
が、現在トーナメントのくじ引きとかいうやつで皆集まっているので、めっちゃ緊張してます。
だって周りにごつい人ばっかりなんだもの。
「はーい、じゃあ順番に引いて行って下さーい」
運営の人が皆にそう伝えた。しばらくこの場で待っていた皆はもう待ちくたびれたというかのようにぞろぞろと動き始める。
数にして、およそ――
うん、分からない。結構いるので、数えられないのだ。
どうやらこの大会が只ならぬものであるのは事実らしい。年に一度の大イベントというのも本当のようだ。加えて、くじ引き会場はここの他にもいくつかあるので実際の人数はこれより多いということになる。じゃあ何でそんな凄い大会に俺が出るんだって話だが。
まあ出ることになってしまったのだから仕方ない。
俺も皆と同様、くじを引きに行く。
くじの箱は八方に置かれていて、どこから取ってもいいということになっているみたいである。これだけ人数がいるのなら予選とかやれよ、と思うけれど、アギル曰く、この大会に出る連中は皆それなりに強いから予選をするのが勿体ない、だそうだ。それに加えて、この大会の売りは様々な者の戦いが見られることにあると言う。そういうコンセプトなら、仕方ないか。
きっとこのくじ制度も公正を期すためのものなのだろう。これだけ人数がいるのだから運営の方で決めてしまっても良い気がするのだけれど。
さて、いつまでも無駄なことを考えていないで、俺もくじを引きに行くかな。
俺は一番近くにあった西側の所へ行った。丁度空いているので早く引けそうである。
くじは木の札のようなものだった。
それが盤の上にいくつも刺さっていて、好きなのを選べ、と言った感じである。
確かに並んで一人ずつ選ぶよりも効率的かも知れないけれど、これはつまり気に入らなかったらささっと戻してしまえばばれないのではないだろうか。……いや、誰と一緒になるかが分かる訳ではないからそれは気にしなくていいのか。
ふむ、どれにしようかな。
鉄板に刺さっている木の札。どれがいい札かなあ。
いい札とは、具体的に言うと強いやつと当たらない札である。うん、そんなの分からないよね。
故に今ここでどの札を取るかを気にしていても意味はないということだ。
えーっと、取り敢えずこの辺の札を――
と札に手を伸ばした時、
「あ、ごめん」
何と偶然、もう一人俺と同じ札に手を伸ばす人がいた。
――な、何、だと?
猫耳。
猫耳じゃないですかぁ!
こほんこほん、取り乱してはいけないな。
俺の横に立っていたのは長身の猫耳少女だった。長身と言っても俺よりは低い。だいたい170センチくらいだろうか。
それにしても、偶々同じものに手が伸びるとか、ラブコメ始まるの?
「ああ、どうぞ」
異世界でラブコメはないだろ、と思ってその札を少女に譲った。あれ、こういう対応の仕方って駄目なんだっけ。
「いえいえ、どうぞ」
うむ、案の定遠慮されてしまった。それであれだろ、何か気まずい雰囲気になってとりとめない話とかし始めちゃうんだろ?
そういう展開は嫌である。
ならばここで俺の取るべき行動は。
「そうか? じゃあ遠慮なく」
さっさと取ってしまうことである。ここでお互いに遠慮し合うとループに陥る可能性があるのだ。別に俺は札なんかどれでも良いし。
取った札を確認してみよう。
R―18
と書いてある。
……どんだけピンポイントに引いてんだよ! 俺!




