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78、街中の襲撃 ~いやマジで誰だよ!~

 今晩泊まる所を探さなければならない。別に見つけること自体はそれ程難しくはないのだが、選ぶのには少し考えが要る。


 実際俺だけならばどこだっていいのだけれど、女子二人がいるとなると、適当に決められるものではない。


 ……それにしても、もう夜だと言うのにやけに騒がしいな。


 ああ、あれのせいか。


 街中で特に目を引くあの建物。相当広い敷地に、いくつかの建物。中にはあのコロッセオみたいなやつもある。


 つまりは闘技場。何とか大会の会場になっている所なのだろう。


 よし、その情報取得も兼ねて少し聞き込みでもしてみるか――





 偽勇者の空掌眼






「っ!?」


 気配を察知する、というとあまりにも中二過ぎるかも知れないが、今のが正にそれだったと言えよう。


 一般に斜め後ろから忍び寄ってくる者の気配を感じるということは不可能である。そんなのはアニメや漫画の世界の話であるのだ。


 しかし現状、俺は斜め後ろから刃が襲い掛かるのに気付いた。


 しかも、斜め後ろの「上空」からである。


(剣!)


 急なことだったため咄嗟に俺はただの剣を召喚しその刃を弾いた。


「下がってろ!」


 俺は二人にそう指示した。リィサなら下がらなくても十分戦えたかも知れないけれど、連携が上手く取れない以上一人で相手をするより効率が悪くなる可能性がある。


 それに。


「くっ!」


 速い。刃は細く、鋭い。そしてその軌道も同じく、鋭敏である。


 このテンポで斬撃を繰り返されているのでは仲裁に入ろうとする人間は切られてしまう。


「キエルさん!」


「大丈夫だ! 下がってて!」


 街中で急にこんな襲撃があれば民衆が驚くのも当然である。リィサとルテティアが俺から離れるのと同様に、周りの人間も悲鳴を上げながら遠ざかっていく。


 何故だ。陰の薄い俺が何故狙われた?


 俺のことを知っている人物なのか? いや、その可能性は殆どないだろう。そもそも俺を知っている人物など数えるくらいしかいないのだから。ましてや俺は誰かに狙われるようなことをした覚えもない。


「だ、誰だ!?」


 腰を低くして切りかかってくる者は忍者のような格好をしていた。顔が見えない。


「誰だじゃないだろ! 忘れたとは言わせない!」


 俺の問いに答えを返してきた。


 随分高い声である。女か?


 いやいやそうじゃなくて、俺は「忘れたとは言わせない」なんて言われるようなことをこれまでの人生においてした覚えはないのだが。


「いやマジで誰だよ! ――って危ねぇ!」


 この忍者、忍者だけあって体術に優れている。両手に持った短刀だけでなく両足とその小さな体をも使って俺に攻撃してくる。


 そんな体術に優れた忍者に、じゃあなんで俺が対応できているのかって?


 それは俺の才能が――


 と言うのはやめておいて。


 まあ、敢えて言うなら未来眼のお陰か。


 かなりの高速で繰り出される攻撃ではあるものの、よく見ていればそれ程難しい軌道ではない。ふふ、どうやら俺が、家族のいない時にこっそりと庭で経験を積んでいた体術の成果が表れてきたようだな。中二病? まあ、そうだ。


 それに、短刀を持ち素早い攻撃を仕掛けてくる、という戦闘スタイルが、少しばかりルテティアの兄に似ているのである。だから対処がしやすい、とまでは言わないが奇抜な動きをする人間ではないという点においては余裕が持てる。


「はっ!」


 喋るのに疲れたのか、忍者の女(多分)は息を切らしながらも速度を落とすことなく俺に攻撃を仕掛けてくる。


 速いは速いのだが、テンポが良い為逆に読みやすい。


 リズムゲームのような感覚である。


「おお……」


 気づけば何故かギャラリーのようなものが形成されていた。さっきまでビビッていた街の連中も、俺と忍者の攻防を見て感嘆の声を上げている。え、何この街。そんな人が襲撃されてるのに盛り上がっちゃっていいの?


 ――おそらくは何とか大会が原因だろう。多分それに関するサプライズか何かだと思われているのだ。


 結構俺はガチで狙われている気がするんだけど。


 それにこの世界では魔法があり、モンスターがいて、武器が流通していて、ギルドもある。これくらいの襲撃、しかも街中堂々の襲撃ともなればそれ程緊張感がないのも仕方ないのかも知れない。


 と言った所で俺の危機的状況は変わらない訳だが、ルテティアなんかはギャラリーに混ざって「キエルさん、頑張って下さーい!」とか何とか言ってやがる。


 相手の忍者さんは周りのことには目が行ってないのか、ただ単に俺を集中的に攻撃してくる。


 いや、マジで誰?


 と非常に気になるのでどうにかしてマスクを外せないか考えてみる。


 勿論、猛攻を回避しながらである。


 これが案外回避できる。


 結構驚きなのだが、この世界の補正はそれなりに良いのだろうか。ステータスにもスピードの所に「豹にギリギリ負けるくらい」とか前に書いてあったし。今はそれより上がってるだろうから、ひょっとすると俺の素早さは相当高いのではないか?


 いや、だがしかし素早さと言っても色々ある。


 瞬発力や、速力、反射神経や、回避速度。その他諸々。


 あのステータスがそれらを総合したものだとするなら――


 うん、やっぱりあのステータスは役に立たないな。


 ゲームじゃないんだから数個のデータで人の戦闘能力を計ろうなんざ無理な話なのである。


 さて、そろそろこの猛攻を止めなくてはならないな。


 って言うか彗星眼使えばこの子の正体分かるんじゃない?


 よし、やってみよう。







 偽勇者の彗星眼 対象 忍者の少女

 名前  サキ・ノーアルス

 LV  76

 年齢  17歳

 身長――――――






 し、知らねえ。


 知らない人ですよこの子。


 俺の全く知らない方でありますよ。





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