63、捜索 during ザ・フェスティバル ~少女の想いは届くのか~
ここ五日、何をしていたかというと、それは一言で表すなら「クエストをしていた」ということになるのだろう。
タルタル草という不気味な草を採りに行ったクエストから、俺達八人は様々なクエストを行った。クエストに関しては俺やルテティアは完全に素人であるから、変人五人に色々教えてもらったりしたのだった。
リィサはクエストに関して言えば初心者ではないものの、集団行動においては初心者中の初心者であるため、フォローが大変だった。
が、意外にも皆面倒見がよく(変人ではあるが)最後の方ではリィサも笑顔を見せるようになっていた。
あれ、何だろう。ここは省略しちゃって良い所なのかな。もうちょっと感動を演出するべきだったのかな。
いやいや、そんな。ドラマでもあるまいし。
とにかく、この五日間行ったクエストによって俺達の絆はそこそこ強まったと言って良い。
無論、あの変人五人はいつもつるんでいるのだろうから連携の出来具合が違ったが、それでも俺達を仲間はずれにせず、やはり総じて面倒見の良い連中であった。
俺も人と関わることは得意な方ではないので、そういう所は本当助かる。
例えば、やったクエストを上げると。
チラシ配りとか。
魔獣退治とか。
建築の手伝いとか。
屋台形成の計画とか。
お使いとか。
そんな感じである。
うむ、正直言って雑用系が多かった。流石は祭り時。猫の手も借りたい状態にあるのはどこも同じようだった。
そして、このギルド、『サムトラク』も何か催しものをするらしい。街は一気に祭りムードである。
が、ぶっちゃけると、俺って祭りそんなに好きじゃないんだよね。
人ごみとか本当勘弁だわ。
俺は駅前の祭りで過疎状態に陥ってるデパートのトイレの個室の中でゲームをするのが普通だからさ。どんちゃん騒ぎは苦手なのよ。
まあ、それでも、ここは異世界な訳だし? 可愛い子も沢山いるだろうから、遊んでみる価値はあるかな? ……うわ、何か俺の発言、女たらしみたいだな。嫌だわぁ。
俺は極めて純粋で人と関わりを持たせてもらえない童貞野郎なのに。
だが、現実から目を背けていても何も始まらない。まずは目の前のことを楽しもうじゃないか。(現実世界から異世界に来ている時点で現実逃避と言えるかも知れないが、これは俺の意志じゃなかったから別に良いだろう)
「うっし! 今日は祭りだぜ! 一杯楽しめや!」
ダルドが声を上げると、ギルド内の皆が、おおーっ! と言う声を上げる。そうそう、このテンションね。俺苦手なの。
仕方ない。取り敢えずルテティアを連れてぐるっと一周してくるか――
「キエルさん! お祭りですよ! お祭り! わっしょいわっしょいですよ!」
と、ルテティアが早々に俺の所へ駆け寄ってくる。
おい、それはどこの祭りだ。異世界にわっしょいする祭りがあるのか。
「そうだな。初めはどこに行くんだ?」
「そうですね。まずは食べ歩きです!」
「おお、最初から食べ歩くのか――」
若いから食欲があるのは良いと思う。
「キエル! 何だ、今からどっか行くんだろ? だったらリィサも連れて行ってやってくれ」
またですか、ダルドさん。
まあ、いいけどね。両手に花だからいいですけどね。
「おう、了解だ。……リィサ、最初どこ行きたい?」
「べ、別にどこでも良いわよ……」
こちらを真っ直ぐには見ずにリィサが言う。
「じゃあ食べ歩きで決定ですね!」
こうして祭り一日目は食べ歩きをすることになった。
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不思議な部屋を飛び出した白邪はすぐに先程の女性を追ったが、その姿は確認できなかった。それに部屋がどこにあったのかも不明である。
分からないことだらけではあったが、白邪はあれからすぐに綺慧瑠を探し始めた。
しかし大変不幸なことに、食べ歩いているであろう綺慧瑠の姿を確認することは出来なかった。
祭り二日目
「綺慧瑠君……この街にはいないのかしら……」
まだ探して二日であるが、そんな思いがこみ上げてきた。しかしこの街『カルカディオス』は大きい。まだ全域を探してはいないのだ。だからまだ諦めるには早い。
一息つくのは隅々まで探した後にしようと決意し、白邪は再び走り出す。
祭り五日目
疲労が限界まで溜まっている。流石にもう無茶は良くないと学習しているため、寝ずに捜索するなどということはしていないが、それでも日中は休むことなく探している。
何がここまで白邪を駆り立てるのか。
それはきっと綺慧瑠への執着だけではない。
彼女はきっと不安なのだ。
この世界に降り立ってから、ずっと一人、身近な人にも会わず、クラスメイトにも顔を見せず、ただ一人で生きているのだから。
不安でないはずがない。
彼女の心の中は綺慧瑠を求めるのと同じくらい、安らぎを求めているのだ。
綺慧瑠はそれら二つを白邪に与えることができる。綺慧瑠に自覚が無くとも、白邪は綺慧瑠を必要としているのだ。
無論、綺慧瑠がそれに気づいてあげる義務はない。人の感情とは交錯するものであり、伝えても伝わらない時がある。伝えていないものなら尚更だ。
ならば、伝えたいのに伝えられない白邪はどうなるのか。
綺慧瑠は悪くない。白邪も悪くない。
ならば、悪いのは何だ。
悪いことは必ず悪いことが付随して起きる。
ならば、この場合、白邪が綺慧瑠に会えないのは何が悪いせいなのか。
まさか、運命だとでも?
白邪は思った。
何が悪くてもいいと。例え自分が悪くても、早く綺慧瑠に会いたいと。
そう願った。
ここまでに切なる願いをもつ少女を、誰が責められようか。
誰が、慰められようか。
祭り六日目
気づけばもう、祭りが終わる。無論白邪に祭りを楽しんでいる暇などなかった。
あと一日。明日探しても見つからなかったら、この街を発とう。そう決めて、白邪はその重い足を動かす。
想いは届くのか。
白邪の願いは、形をもって届けられるのか。
祭り七日目
心地よい風が吹いている。何故その風が心地よいと思えたのかは、白邪には分からないが、ただ一人、街の外れに立ち尽くす彼女には黄昏の風であるように感じられた。
「……高台に――行こうかしら……」
ここから見える高台。緑の丘の上にある。ここからでも予想がつく。そこからの景色はさぞかし綺麗なことだろうと。
淋しさで潰されそうな白邪はその体を一生懸命動かして、高台へ向かい始めた。
白い月が出ていた。




